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エリカと名もなき偽刀VS帯電する右刀

 エリカと名もなき(ガル・ヘルティスト・)偽刀(シーザー)が案内された先にいたのは、数十体の竜人(ドラグニル)の部隊。

 どの竜人(ドラグニル)も精鋭揃いなようで、到着した時には既に天使達は倒されてしまっていた。

 最悪な状況・・・というよりもエリカにとっては逆に好都合。

 何故なら周囲を気にせず魔法を扱うことができるからだ。

 エリカの魔法はこの世界の理から外れた力・・・

 炎なのにも関わらずに延焼することはなく、そして対象者を燃やし尽くすまで止まらない純黒の炎。

 水をかけようが、風で吹き飛ばそうが決して消えることない純黒の炎は、はっきり言って取り扱い厳禁。

 流石にエリカも故意に天使達を攻撃してしまうことはないが、万が一という危険性もある。

 自分だけで事足りると案内した天使に伝え、天使は仲間の増援の為に飛んで行くのであった。


『増援?それにしてもあの見た目・・・』


 エリカの変わった見た目・・・片方の翼は天使と同じような純白の翼。

 もう片方の翼は世界全てを怨んでいる存在・・・疫病の狂天使を彷彿とさせる翼をしている。

 まぁ・・・第三の侍女竜である帯電する(ウェルニル・)右刀(エルディカ)は実際には疫病の狂天使という者を見たことがないので、言い伝え程度の知識しかないが、それでも目の前にいる異形の姿をしたエリカは十分脅威だと認識する。


『あんたのお仲間は全員もういないよ?』


 あどけなく、クスクス笑いエリカとガルを挑発するウェルニル。

 しかしながらその笑顔のからは殺意が感じられている。


『・・・そうですね。ですが仕方ないです』


 ウェルニルの反応を確かめるように一拍置き・・・エリカは悲しそうに告げる。

『自らを守ることができない者は倒されて当然』っだと。


『そう・・・意外に辛辣なんだね』


(増援として駆けつけたのにも関わらずに、なんで仕掛けないの?)


 先ほどから動こうとしないエリカとガル。

 増援に駆けつけて来たのにも関わらずに、一向に攻撃を仕掛けてくる様子がないことを不思議に思っているウェルニルであったが・・・逆にウェルニルの方が先に動いた。

 帯電する右刀という名の通りウェルニルの動きは速く、動くと同時にエリカとの距離をゼロにする。


『速い!?』

『そうだよ・・・ウェルニルは最速なの』


 可愛らしい笑顔と共にその手には刀が握られ・・・エリカが斬られる。

 よりも速く、エリカが咄嗟に後方へと引いたことによって間一髪でかわす。


『危ない!?』


 攻撃をかわしたエリカは即座に純黒の炎を放つ。


『炎!?』


 エリカの放った純黒の炎なのだが、ウェルニルに当たることはなく、かわされてしまった。


『なんという速さだ・・・』


 ウェルニルの速さに呆気に取られてしまったガル。

 雷の速さ・・・ほどではないが相当な速さを持っているウェルニル。

 その速さは最速の竜人(ドラグニル)であるルーシャには及ばないが、それでも常識外れの速さを誇っている。

 速さではかなわないと理解したガルはエリカと合流しようと動くが・・・時既に遅かった。


『速さは強さ・・・雷鳴と共に散れ!』


 雷鳴が轟くと同時にガルの後ろに移動したウェルニルは、自らの放つことができる最速の一撃を繰り出す。

 あまりの速さに反応することができなかったガルはそのままウェルニルの一撃を喰らってしまい・・・中央浮遊都市に叩きつけられる。


『あれ!?なんで吹き飛んだの?』


 ウェルニルの攻撃は刀での攻撃。

 当然斬撃なのだが・・・何故かガルがその場で斬られることはなく、吹き飛んでしまったのだ。

 そして斬った感触というよりも、何か・・・硬質な物にぶつかったような感覚に疑問を抱くウェルニル。


『・・・人間ってあんなに硬いの?天使達は普通に切れたのに?』


 先ほど倒した天使達の思い出すウェルニル。

 数名、数十名の天使をその手で斬り倒したが・・・ガルに攻撃を繰り出した時とは感触が違っていた。

 何故ガルを斬った時の感触が違うのか疑問に思っていたウェルニルであったが、純黒の炎が襲い掛かる。

 火炎放射のようにウェルニル目掛けて飛んでくる純黒の炎。


『まぁ・・・あの人間についてはいいや、今は彼奴を倒さないとね』


 そう言い終えると即座にかわすウェルニル。

 またしても純黒の炎をかわされてしまったエリカなのだが、今度は冷静に周囲の状況を確認する。

 ウェルニルが次に何をしてくるのかを見極める為に・・・


『あんたのその黒い炎・・・いったいなんなのか気になるんだけど?』


 またしても一瞬にして姿を眩ましたウェルニル。

 そしてエリカの後ろに現れると同時に両腕を掴み、竜力を流し込む。


『なぁ・・・あぁぁぁ・・・』


 ウェルニルに腕を捕まれると同時にウェルニルの竜力である電気が流れ込んできたのだ。

 それにより感電してしまったエリカ。


(な・・・に・・・が・・・身体が・・・動かない・・・)


 幸いなことに意識は飛ばなかったが、身体の自由を失い、力なく倒れそうになる。


『おっと・・・力が入らないのかな?』


 倒れそうになるエリカを支えるウェルニル。

 しかしながら支えるというよりも腕を掴み、吊るしているという感じだ。


『いろいろと試したいことはあるけど・・・』


 そう言い終えるとウェルニルは片腕に竜力を集中させ・・・雷鳴と閃光が迸る。

 まるで雷を具現化させたようなウェルニルの竜法。


『貴女が竜人(ドラグニル)なら良かったんだけどね?』


 エリカを哀れむような雰囲気のウェルニルであったが・・・言葉とは裏腹にエリカの胸元を抉る。

 よりも速く、エリカは小さな、小さな・・・純黒の炎を発動させる。

 小石程度の小さな純黒の炎。

 エリカとウェルニルとの距離はほぼゼロ。

 密着していると言っても過言ではない距離のから放たれる純黒の炎を、かわすことが出来なかったウェルニルはそのまま直撃してしまった。


『なに!?まだ動け・・・きゃぁぁぁあぁぁぁぁ!?』


 エリカがまだ動けたことに驚くウェルニル。

 しかしながら純黒の炎が触れた瞬間に驚きは悲鳴へと変わり、思わずエリカを握っている手を放してしまった。

 支えを失ったことによって、重力に抗うことが出来ないエリカは急速に落下し、地面に激突する。


『ほ、炎が消え・・・』


 純黒の炎を振り払おうと必死のウェルニルであったが・・・純黒の炎が消えることはなく、その熱量に徐々に焼かれてゆく。

 このままでは危険だと判断したウェルニルは、近くにある貯水槽に向かって突撃し、破壊すると同時に中に貯蔵してある水で消火しようとするが・・・残念ながらエリカの純黒の炎はこの世界の理を超越した存在。

 水を掛けようが、風で吹き飛ばそうが消えることはないのだ。


『な!?なんで!?なんでなんで!?』


 予想外の出来事にパニックになってしまったウェルニル。

 それもそのはずだ。

 炎というのは水で消火できる。

 それは世界の常識であり、ウェルニルもまたそうだと思っていたからだ。


『し、仕方ない・・・』


 純黒の炎を消すことが出来ないと判断したウェルニルは身に纏っているメイド服を引き千切る。

 すると純黒の炎は、そのまま引き千切られたメイド服と共に空中へと霧散してしまった。

 半裸状態になってしまったウェルニルは、火傷した箇所を擦りながら周囲の家屋へと逃げ込む。

 額に大粒の汗を浮かばせながら、ウェルニルは気持ちを落ち着かせる。


『くそ・・・ウェルニルのメイド服が』


 ボロボロになってしまったメイド服を見ながらエリカに殺意を抱くウェルニル。

 ウェルニルやオロといったオールの懐刀である、侍女竜の着ている服は特注品であり、もし一般の竜人(ドラグニル)が同じように買おうとすると家一軒と同等の金額になっている。

 何故これ程までに高額なのかと言うと・・・使用している生地もさることながら、メイド服の装飾には金属の糸も使用している。

 さらにウェルニル達侍女竜の身を守る為に多数の竜法陣や、ルーンが刻まれていて・・・メイド服なのにも関わらずに生半可な刀では立ち斬ることが出来ないほどの強度。

 そして斬撃だけではなく、刺殺攻撃や、打撃攻撃だけではなく、多少の魔法、竜法も防げるという非常に優れた品物となっている。

 流石に強化された盾よりは硬くはないが・・・機能性としては十分な性能を持っているメイド服なのだ。

 そんなウェルニルのメイド服なのだが・・・今はボロボロ。

 直すにしても時間はかなりかかり・・・今は戦争中なので更に時間はかかるはずだ。

 つまりこのウェルニルのメイド服を修復することは不可能。

 気持ちを落ち着かせ冷静になったウェルニルは、周辺の棚から手頃な服を手に取りそして着替える。


『・・・ボロボロだけど性能は落ちていないのかな?』


 ボロボロになってしまったメイド服を引っ張るウェルニル。

 普通の衣服では容易に引き裂いてしまうほどの力を加えたのだが・・・メイド服が破れることはなかった。


『強度としては問題ない。見た目は・・・』


 そう言い終えるとウェルニルはメイド服を再び着る。

 ボロボロではあるが、幸いなことに行動を阻害するように壊れてはいなかった。


『まぁ・・・問題ないかな?』


 ボロボロのメイド服を触りながらウェルニルは手に持っている竜導石を起動させる。

 この竜導石はウェルニルの竜力・・・ではなく、ウォルニルの力を終結させた竜導石。

 ウェルニルとウォルニルは二体一対の存在であり・・・特殊な竜力を互いに帯びている。

 その為他の竜人(ドラグニル)や天使、魔導師達ができる竜力、魔力の譲渡をすることが出来ない・・・これはウェルニルを含めた侍女竜全員に言えることであり、竜力をストックするには特殊な方法を使って竜導石にしなければならない。

 当然ウェルニルも持っているが・・・この竜導石は違う。

 ウェルニルと対をなすウォルニルの竜導石は起動すると同時にウェルニルの片方の・・・小さくなっている翼と角に付与される。

 すると小さかった翼と角は、まるで光輝く雷を帯びたように変化する。

 そして元々大きかった片翼、片角と同じ大きさになる。


『まさかウォルニルの力を使うことになるなんてねぇ・・・』


 先ほどとは違うウェルニル。

 しかしながらまだ終わりではなかった・・・

 準備が整うと同時に天高く飛び立つと、そのまま近くある雲へと突撃する。

 そしてウェルニルが雲にしてから数分後・・・世界に轟くような雷鳴が響き渡り強化されたウェルニルが爆誕する。


『何処に隠れているのかは知らないけど・・・』


 ウェルニルは竜力を一点に集中させ・・・巨大な雷弾を作り出す。

 見るからに危険は雰囲気である雷弾は、膨大な量の電流と共に超高温のプラズマとなり・・・雷鳴が轟く。


『天雷電落・竜輝!』


 ウェルニルは一点に集中させた雷弾を解放する・・・と同時に雷鳴が響き渡り、雨のように雷が中央浮遊都市に降り注ぐ。

 天から降り注ぐ裁きの光。

 それほどまでにウェルニルの攻撃は凄まじく、そして美しかった。


『・・・流石に死んだのかな?』


 天雷電落・竜輝を放ったウェルニルは、変わり果てた中央浮遊都市を見渡す。

 視界に入る全ての建物は軒並み破壊され、焼け焦げてしまっている物や、元がなんなのかわからないほど破壊されてしまっている物もある。

 最早人の住まう場所ではなくなってしまった中央浮遊都市。

 しかしながらエリカとガルは間一髪でウェルニルの攻撃を避けていた。

 ウェルニルの竜法、天雷電落・竜輝が前に異変を察知したエリカとガルは、即座に金庫のような堅牢な場所に逃げ込むことによってなんとか堪え忍ぶことができたのだ。


『間一髪って感じかな・・・』

『信じられませんね・・・周辺が様変わりしてしまっていますよ』

『確かに・・・それにしても、さっきはありがとう』

『お礼は別にいいですよ・・・どう考えても協力しなければあの竜人(ドラグニル)は倒せませんから』


 ウェルニルの攻撃を最初に喰らい、そして吹き飛ばされてしまったガルなのだが、攻撃が当たる直前に刀を発動させることによって直撃は間逃れたが・・・それでも攻撃自体を受け止めることは出来ずに地面に激突してしまった。

 意識がまだあったガルは治療液(ポーション)を飲むことで回復。

 ガルどうすれば良いのかを考えていると・・・エリカとウェルニルとの戦闘が始まり、そしてエリカが敗北してしまった。

 エリカとウェルニルとの戦いに介入しても良かったのだが、思いの外決着は速く、エリカを救助することに専念し、なんとか合流と治療液(ポーション)で回復し終え今に至る。

 気力、体力ともに回復したエリカとガルは一つとなり・・・ウェルニルと決着をつける為に動き出す。


『動いた!?』


 周辺を確認していたウェルニルが、何かが動く気配を感じ取り即座に振り向く。

 するとそこにはガルと一つになったエリカがそこにいた。

 対して姿形に変化はないが・・・ウェルニルは目の前にいるエリカの雰囲気が違うことに気がつく。


『・・・何か違う』


 エリカの雰囲気が何故違うのか疑問に思ったウェルニルは、接近戦ではなく、遠距離から攻撃を仕掛ける。

 竜法陣が展開し・・・無数の雷弾がエリカに向かって放たれる。


『雷の弾丸!?』


(速いですよ!?)

(だ、大丈夫ですよ・・・迎え撃てます!)


 飛んでくる雷の弾丸に対して純黒の炎で迎え撃つエリカ。

 エリカが放ったのは純黒の炎の弾丸であり・・・ウェルニルの雷の弾丸と激突すると同時に雷鳴と爆音が周囲に響き渡る。

 そしてぶつかり合った双方の弾丸は雷を降らせ、純黒の炎を舞い上がらせ周囲に飛び散る。


『・・・互角?』

『速さは脅威的ですけど、威力はそれほどでもないですね』

『冗談・・・まだウェルニルは本気じゃないんだけど』


 ウェルニルが放った雷の弾丸を相殺することに成功したエリカは、ウェルニルを挑発する。

 先ほどは油断していただけだと、真っ向からの勝負であればこちらに分があると・・・


『言ってくれるねぇ・・・ウェルニルの方が弱いって?』

『不意打ちにさえ気を付ければ大丈夫ですよ・・・まぁ、その不意打ちにも反応できるけどね』


 更にウェルニルを煽るエリカは、純黒の炎を放つ。

 先ほどとは違い今度は広範囲攻撃に主軸をおいた攻撃だ。


『広範囲攻撃・・・こんな攻撃にウェルニルが対応できないとでも!』


 更に殺意が強くなるウェルニルは、エリカの広範囲攻撃に対抗するように、ウェルニルもまた竜法を発動させる。

 まるで雷が波のように変化し、迫りくる純黒の炎と激突し・・・エリカの純黒の炎が雷の波を呑み込む。


『やっぱり私の魔法の方が上手なようなですね!』


 高らかに勝利宣言をするエリカ。

 しかしながらエリカの勝利宣言した瞬間、ウェルニルは雷鳴と共にエリカに急接近し・・・そして攻撃を繰り出す。

 瞬きする合間に、一瞬にしてエリカとの距離を縮めたウェルニル。

 先ほど放った攻撃は囮であり、本命は速度を生かした接近戦だったのだ。


『終わり!』


 ウェルニルの一撃がエリカを一刀両断・・・するよりも速くエリカは名もなき(ガル・ヘルティスト・)偽刀(シーザー)の能力を発動させる。

 何もない、予備動作も無くいきなり噴水の如く溢れだす無数の偽刀。

 突然の出来事に反応出来なかったウェルニルは、そのまま偽刀に刀ごと呑み込まれてしまう。


『くっ・・・そ・・・』


 深手・・・とまではいかないながらも不意打ちを喰らわされてしまったウェルニル。

 それと同時にエリカから純黒の光が溢れ出す・・・


『ひかり・・・』


 瞬く間に純黒の光に呑み込まれてしまったウェルニル。

 回避することも、防御することも出来なかったウェルニルはあまりの眩さに瞳を閉じ・・・そして痛みと共に吹き飛ばされてしまう。


(くそ・・・このまま畳み掛けるつもりか!?)


 先ほどとは違う痛みを感じたウェルニルは両腕を振り下ろす。

 するとウェルニルを中心に雷の爆発が発生する。

 未だ目が見えていないウェルニルだが、周囲を広範囲に攻撃することによって次の追撃をさせない算段であり・・・実際エリカもまた追撃することはなかった。

 そして即座に翼を羽ばたかせ離脱するウェルニル。


『やっと目が慣れ・・・何処此処!?』


 目が慣れ、周囲の状況を確認できるようになったウェルニル。

 しかしながら視界に映るのは先ほどまでいた中央浮遊都市ではなく・・・平原。

 何処までも続いていいそうな平原が広がっており・・・何処から徒もなく心地よい風が吹いている。


『平原・・・おかしい・・・ありえない』


 更に速度を上げ、周囲を見渡しながら一直線に突き進むウェルニル。

 しかしながら平原は何処までも続き・・・終わりは一向に見えてこない。


『何がどうなって?』


 出口の見えない迷宮へと閉じ込められてしまったウェルニル。

 一向に変わる気配がないと理解したウェルニルは、そのまま平原へと降り立つ。


『地面の感触がある・・・これはいったい!?』


 何がどうなっているのか理解できないウェルニル。

 自分だけがこの空間に来てしまったのかと思ったウェルニルなのだが・・・自分が攻撃されたことを思い出す。

 つまりウェルニル以外の誰かがいるということには確実なのだ。


『まぁ・・・十中八九誰かは予想できるだけどね』


 そう言いながら自身の来た方向をに見るウェルニル。

 遠すぎて小さくなっているが見える人影・・・エリカがいると。


『一騎討ちをしたいんだ・・・受けて立つよ!』


 エリカを倒すしかないと理解したウェルニルは反転し、エリカの元に飛び立つ。


(エリカ来たよ)

(そうですね・・・決着をつけましょうか!)


 この世界に来たときに攻撃したエリカであったが・・・ウェルニルの反撃を喰らってしまい、追撃することは出来なかった。

 しかしながらエリカの予想通り、ウェルニルはこちらに戻って来ている。


『お前を倒せば終わり!』

『貴女に倒せるならね!』


 目視できる距離まで近づいてきたウェルニルに対して、純黒の炎で作られた剣を出現させるエリカ。

 数にして十三の純黒の炎で作り上げられた剣は空中に漂いエリカを守るように動き始める。


『燃やし尽くす!』


 更に攻撃を繰り出すエリカ。

 純黒の炎を火炎放射のように放つ。


『全て・・・消し飛ばす!帯雷竜の鳴哮!』


 大きく息を吸い込み、放たれる咆哮。

 ウェルニルの放った咆哮はまるで横に走る雷。

 不規則な軌道を描きエリカの火炎放射を避けるように動き・・・そしてエリカへと向かってくる。


『剣よ防げ!』


 エリカの指示に従い周囲を漂っている剣が雷の直線上に動き・・・そして直撃する。

 雷鳴と共に周囲に拡散する雷の爆発と純黒の炎。

 距離が近かったからか思わず後ろに後退りしてしまうエリカ。

 そしてエリカが後退りしてしまう間にもウェルニルは距離を詰め・・・自身の間合いにエリカをとらえる。


(間合いを・・・くる!)


 ウェルニルが刀で攻撃してくるのを目にしたエリカは偽刀を発動させ・・・ウェルニルの攻撃を受け流す。


『さっきと違う!?』


 先ほどとは違う出方をした偽刀に驚くウェルニル。

 更に追撃をするようにエリカは攻撃を繰り出す。

 ただの拳・・・ではなく、一瞬にして現れ出る偽刀。

 二の腕から前腕にかけて出てきた偽刀の刀のサイズはバラバラだが・・・それでも拳で殴るよりはリーチが長くなりウェルニルに襲い掛かる。


『これで終わり!』

『それはどうかな?』


 勝利を確信したエリカであったが、ウェルニルは自身の尻尾を器用に使い攻撃しようとしていたエリカの肩を貫く。


『ぐっ・・・あぁぁ・・・』


 肩を貫かれてしまったことによって苦痛の表情と共に思わず呻き声を上げてしまったエリカ。

 更に追撃するようにウェルニルは自身の竜力を使い突き刺さった尻尾から電撃を浴びせる。


『形勢逆転・・・死んで』


 ウェルニルの雷撃を喰らい動きが鈍くなってエリカに対して止めを刺しにかかる。

 だがしかし・・・ウェルニルの攻撃は受け止められてしまった。

 エリカではなく、ガルに・・・


『お、お前は!?』

『残念ながら・・・私はまだ動けますよ!』


 ウェルニルの攻撃を受け止めたのはエリカと融合したガルであり、まさかウォルニルも目の前の敵からもう一人出てくるとは全く予想していなく、不意打ちを喰らいエリカと離されてしまった。


『苦肉の策だね・・・邪魔だ!』


 ガルから繰り出される変幻自在の攻撃を何とか耐え忍ぶウェルニル。

 間合いを取ろうとしても即座に縮め、繰り出される斬撃。

 剣で受け流そうにも触れようとした瞬間には無くなり、空振りしてしまうこともある。

 だがしかしそんな状況の中でもウェルニルは竜力を溜め・・・隙を窺う。


『そこだ!』


 ガルの連撃の隙を突き攻撃を弾くウェルニル。


『帯電六波!』


 攻撃を弾いたウェルニルは溜めた竜力を周囲に拡散させる。


『しまっ・・・』

『これで・・・もう終わり!』

『さ、させない!』


 ウェルニルの攻撃によって帯電してしまったガル。

 止めをさそうと攻撃を仕掛けるウェルニルに、止めようと動くエリカ。

 まだ満足に身体を動かすことはできないが、それでもガルを守ろうとするが・・・その前に何処から徒もなく光が溢れだし世界を包み込んでしまった。



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