29 最終決戦
『……さあっ! 今年のタワークエストもいよいよクライマックス! しかし、例年にない事態を迎えております!
優勝候補ナンバーワンである「リンドール学園」に……最下位だった「生命の泉学園」と「イポモニ純真女学院」の同盟校が、決闘を申し込んだことが事のはじまりです!
決闘を受けて立ったリンドール学園! どちらが勝つかは、誰の目から見ても明らかだったのですが……。ここでとんでもない事態が起こります!
生命の泉学園と、イポモニ純真女学院は次々と他の学校を取り込んで、同盟を大きくしていったのです!
マルヴァチタ義賊学校、精鋭高専、ダリス・バンディ鉄鋼高校……!
あまり大きな声では言えませんが、いわゆる、落ちこぼれ……ワルどもの巣窟をいわれる学校を吸収していったのです!
これは学校関係者にも大きな驚きをもたらしました!
いままで反目してあっていた不良高校どうしを……教師ですら手を焼いていた生徒たちを……たったひとりの男がまとめあげたのです!
その名は……壺仮面!
タワークエストの参加者の中で、最低中の最低ランク……F- - -の参加者ですっ!
最強の落ちこぼれは、最強の男でもあったようです!
壺仮面のリーダーシップは、最悪のワルと呼ばれた男たちをひとつにまとめあげました!
落ちこぼれどうし、なにか通じるものでもあったのでしょうか!?
巨大化していく同盟に、慌てたのがリンドール学園……!
決闘に負けては元も子もないと、リンドール学園も同盟の採用に踏み切ったのです!
リンドール学園はシャラール選手を筆頭に、上位学校のスカウトをはじめました!
壺仮面選手とは対照的に、エリート……いわゆる優等生の学校だけを集めた同盟を組みはじめたのです!
それは図らずとも、優等生vs落ちこぼれの図式を作り上げてしまうこととなったのです!
ふたつの同盟は最大限にまで膨れ上がり……ついにはすべての学校がいずれかの陣営に加入する事態へと発展しました!
これはタワークエストでも前例のないことです!
複数の参加校で争われる大会が、たったふたつの同盟の争いになってしまったのです!
そしてついに……決闘の時を迎えました!
『天空族の塔』、10階にある広大なスペースに……すべての学校が集結したのです……!
最後の決着を、つけるために……!』
戦場に相応しい、だだっ広いフロア内に……アナウンスが轟きわたる。
『……おおっ!? 両陣営の中からリーダーが出てきました! まずは決闘の挑戦者側……「壺仮面同盟」のリーダー、壺仮面っ!』
俺は居並ぶ仲間たちを背に、戦場の中央へと歩みよっていく。
『壺仮面同盟は、男だらけの同盟です! 唯一の女性は、イポモニ純真女学院の生徒たち……! 白きローブをまとう彼女らは、多くの男たちを従える聖女のようです! よくわからないのですが、なぜか男も女も、壺仮面のアップリケがついたハーフマスクをしています!』
俺は心の中で言い訳をする。
それはクリエルのヤツが勘違いしちまったんだよ……と。
俺はアライアンスカウンターで同盟の手続きをしたあと、すぐに落ちこぼれどもの獲得に動いた。
その時、俺がしている壺仮面のマスクと同じものを作るようにと、クリエルに指示したんだ。
理由は簡単。急造の同盟で乱戦となった場合、敵味方の区別がつかなくなる可能性があるから目印にしたかったんだ。
あと全員でマスクをかぶってりゃ、誰が誰だかわかんなくなって、敵の狙い撃ちからキーマンを守れるからな。
特にシャラールの狙撃はヤバいから、顔がわからなくなるマスクは有効だと思ったんだ。
俺は頭全体を覆うフルフェイスのマスクを発注したつもりだったんだが……クリエルはなにを勘違いしたのか、風邪のときにするような口だけを覆うハーフマスクを作りやがった。
イポモニ純真女学院の生徒たちが、夜なべをして作ってくれた大量のハーフマスク……。
使わないのもアレだったので、しかたなく同盟の証として使うことにした。
これじゃ顔を隠してるというよりも、壺仮面のグッズを身に着けてるファンみたいだ。
まぁ、着けてるヤツらはみんな満更でもなさそうなので、別にいいんだけどな。
相手側のリーダー、シャラールがこっちに近づいてくる。
背後にいる優等生どもが一斉に動いたかと思うと、なにかお面のようなものを顔に被せていた。
どうやら、考えていることは同じらしい……!
だが、そのお面のデザインが、問題だった……!
『対するは、シャラール選手が率いる……「タクミ同盟」っ!? タクミというのは誰かの名前でしょうか!? なにやら男性の顔のお面を被っておりますが、モチーフになった人物が「タクミ」なのでしょうか!?』
俺は怖気がした。
だって……俺のマスクの下にあるのと同じ顔が、おびただしい数で現れたからだ……!
それに……『タクミ同盟』だと!?
人の名前、勝手に使ってんじゃねぇーよっ!?
俺はこっちの世界に来て、少々のことではビビらない自信があった。
だが……俺そっくりの無数の顔を前にした途端、おぞましさのあまり思わず後ずさっちまった。
「……すっかり怖気づいたようね」
俺の顔をしたシャラールが、俺に迫りながら言う。
シャラールの被るお面の額には『バカタクミ』と落書きがしてあった。
俺は悪性の風邪に見舞われたように額を押さえながら、マスクの上から冷や汗を拭う。
「……こんなに寒気がしたのは初めてかもしれねぇ」
「でしょうね、おぞましい顔だもの」
「そのお面はなんなんだよ」
「これはね……タクミって言って、とんでもなくバカなヤツなの」
「なんでそんなバカなヤツを……仮面にしようと思ったんだ?」
「アタシも最初は反対したんだけどね。同盟の名前を考えることになったときに、みんなが真っ先にバカの名前を挙げたの。バカ過ぎてタワークエストに来れなかったバカのために、せめてもの手向けにしよう、って」
「みんな、そのバカのことが好きなんだな」
俺の言葉にシャラールはため息を返しながら、肩をすくめた。
「ハァ、まったくよくわかんないわ。こんなバカのどこがいいんだか」
「そう言ってる割に、ソイツのお面はかぶるんだな」
「みんなを納得させるために、仕方なく、ね。まったく……側にいない時までアタシに迷惑かけるだなんて、ホント、どこまでもダメなヤツよね」
「……ソイツがいないのに、お前らは勝てるのか? 数ならこっちのほうが倍以上いるんだぞ」
「ハァ? 何言ってんのアンタ。数だけの落ちこぼれどもに、負けるわけないでしょ……。ってアタシは思ってるんだけどねぇ」
なんか含みのある言い方をしながら、シャラールは背中に剣のように差していた羊皮紙を取り出す。
「……他のみんなが納得してくれなくて……だからこっちは、切り札を出すことにしたの」
まるめたポスターのようなそれを、ブツクサ言いながら足元に広げていた。
四つん這いになって、んしょ、んしょ、と四隅を押し伸ばす姿を見下ろしながら、俺は尋ねる。
「……切り札?」
「そう。転送魔法ってやつね。アタシたちの修学旅行って、ちょっとした事情で転送魔法を使ってたんだけど……それをタワークエストで使うことになるとは思わなかったわ」
「なんだ、モンスターでも転送するつもりか?」
「似たようなモンかしら。でもモンスターなんかよりずっとずっとダメなヤツで、ずっとずっと強いヤツ。学園に来たテロリストを、たったひとりでやっつけちゃうような……ね」
止まっていたはずの冷や汗が、タラリと俺の背筋を伝っていくのを感じた。
次回、切り札発動…!?
それと新作小説を掲載いたしました。
本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。
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