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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第3章 クラスメイトをxxxします!
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20 巨大ガニvsシオマネキ

 俺、シャラール、クリエルの三人は、公園の遊具のような穴ぐらの中にいた。

 不法に居座るホームレスのように、シケた面を突き合わせる。


 背後からは、強制立ち退きを迫るようなガーディアン・クリスタル・クラブの掘削が止まらない。



「……アイツの弱点は知ってるか?」



 俺は、シャラールとクリエルの顔を交互に見ながら尋ねる。

 答えてくれたのは、強気にツインテールをかきあげるお嬢様だった。



「フン、アンタ、そんなことも知らないの? アタシはもちろん知ってるわよ」



「そうか、なら教えてくれよ」



「なんでライバル校……いや、格下校のアンタなんかに教えなきゃいけないのよ」



「今はそんなこと言ってる場合じゃねぇだろ、ここは協力して戦うんだ」



「んまぁ、『協力』!? 素敵な言葉ですわ! 胸がときめきますわね!」



 目を輝かせるクリエル。

 しかしシャラールのほうは、苦い薬を飲んだような表情になっていた。



「うげぇ、アンタらの場合は『協力』じゃなくて『寄生』でしょ? 宿主になるのはまっぴらゴメンよ」



「まぁまぁ、シャラールお姉さま、そう言わずに……わたくしは、シャラールお姉さまといっしょに戦いたいのですわ。ぜひ、あの蟹さんの弱点をお教えいただけませんこと?」



 星が瞬いていそうなほどのキラキラした瞳を受け、シャラールは言葉を濁す。



「う……うぅん……ま、まぁ……クリエル、アンタにだけは教えてあげるわ。耳を貸しなさい」



 シャラールはクリエルの耳元に顔を近づけ、手で覆い隠しながらモショモショと囁きかけた。

 聞き終えたシャラールは、手をポンと打ち鳴らすと、



「……なるほど、わかりましたわ! 甲羅にある目が弱点なのですね!」



「ちょ、バラすんじゃないわよっ!?」



「あっ、うっかりですわ。つい感情がたかぶってしまいましたわ」



 ふたりのかけあいを見ていた俺は、呆気に取られていた。


 クリエルは、あの強情が服を着て歩いているようなシャラールから情報を引き出し、天然を装って俺に伝えてきたんだ。


 ……もしかして、クリエルって何も考えてないようなフリして……実はものすごい策士なんじゃなかろうか?



「アイツの甲羅の眼っていうと、たくさんあるが……どれでもいいのか?」



 俺が聞くと、シャラールは諦めたような溜息をついた。



「ハァ……どれでもいいっていうか、全部ね。全部潰さなきゃ死なないの。それもひとつやふたつ潰したところですぐに元通りになっちゃうから、いちどに潰さなきゃダメなの」



「そういえばアナウンスでは、大砲か大魔法がないと仕留められないって言ってたから……それは目に向けてブッ放せってことか」



「それもあるんだけど……その前にアイツは水晶の殻で目を守ってるから、殻をブッ壊すためにも必要なのよ」



「そういうことか……でも大魔法ならあるから大丈夫だな。頼んだぞ、クリエル」



 すると、クリエルは目をぱちくりさせた。



「わたくしですか? なにをですの?」



「お前の大魔法を、アイツの甲羅めがけてブッ放してやるんだよ」



「……大魔法?」



 なおも目を瞬かせるクリエル。

 天然か計算かわからないトボけ方に、俺は焦れた。



「お前、レイアンを助けるときにレーザーみたいな魔法を放っただろ、それをもう一度やれって言ってるんだ」



「ああ、『白鷺(しらさぎ)嘴角(かくがく)』のことですわね。それでしたら、使えませんことよ」



「えっ、なんでだよ?」



「『白鷺(しらさぎ)嘴角(かくがく)』は、一日に一回しか使えないのですわ」



「一日に、たった一回だとぉ……!?」



 俺の頭にまた、痛みが蘇ってくる。

 うなだれる俺をよそに、シャラールが尋ねた。



「クリエル、アンタそのシラサギのナントカって魔法以外に、攻撃魔法は使えないの?」



「はい、シャラールお姉さま。わたくしが使える攻撃魔法は『白鷺の嘴角』だけなのですわ。オンリーワンなのですわ」



 なぜか得意気に胸を反らすクリエル。



「……うーん、ってことは……水晶の殻を破る方法はないってことね」



 シャラールはいつの間にか、俺たちの味方になかったかのように悩んでいる。


 俺は、大魔法に期待してクリエルを連れてきたつもりだったんだが……まぁ、無いモノはしょうがねぇか……と気を取り直した。



「よし、殻は俺が破るとしよう。だが目を潰すのは無理そうだから……シャラール、お前がやってくれ。狙撃の次に得意な束ね射ちをやれば一発だろ?」



 すると、シャラールは眉をひそめる。



「……なんでアンタがそんなこと知ってんのよ? 『タワークエスト』で狙撃は何度もやったけど、束ね射ちはやってない……とっておきにしてたのに」



「え、えーっと……な、なに、カマをかけただけだ。俺が殻をブッ壊すから、あとは頼んだぞ」



「それはいいけど……アンタ、どうやって殻を壊すつもりよ? 見たところ、武器はなにも持ってないじゃない。……もしかしてアンタも大魔法が使えんの?」



 シャラールは疑るように、俺の頭のてっぺんから足のつま先までジロジロと睨めていたので……人差し指を突きつけてやった。



「俺の武器は、コイツだけだ」



「指が武器って……アンタ格闘家? 拳なんかであの殻が破れるわけないでしょ」



「さぁて、それはどうかな? まぁ、見てろって……!」



 俺はそれだけ言って、穴を飛び出した。


 ふくらはぎを押して、本日二度目の『ストライダー』発動……!


 出迎えのように襲い来る爪の下をくぐり、地を蹴る。

 勢いをつけたスライディングで、蟹野郎の下をくぐり抜けた。


 お前の目は、前にも後ろにもあって、なかなか便利のようだな……!

 だが……背中にはたくさんあるってのに、懐にはひとつもない……!


 完全なる、死角……!


 ヤツはきっと、泡を食っているに違いない。

 消えた……!? と……!


 股下を通り過ぎ、甲羅のある背面側に俺が現れた瞬間……数え切れないほどの目が、ギョロリと見開いた。


 ようやく、見つけたようだな……!

 でもいまさら気づいても、もう遅い……!


 俺の技は、大魔法とも、大砲とも違う……!

 長ったらしい詠唱も、大砲のような面倒くせぇ装填も、必要ない……!


 だが……お前が閉じこもっている殻くらいなら、簡単にブチ破ってみせるっ……!!



 ……ビッ!



 水晶の壁に突き立てられる、俺のひとさし指。



 ……ビシイィィッ……!


 弾痕のような穴が開いたあと、蜘蛛の巣のような亀裂が四方八方に走っていく。



 ……ガッ、シャァァァァァァァァーーーーーーーーンッ!!



 そして粉々に砕き……ヤツの裸眼を白日の元に引きずり出した。


 目は、口ほどにモノを言う。

 百以上あるならば、それは雄弁に語る……!


 弱点を丸裸にされたヤツは、恐怖を……そして怒りを感じている……!

 そしてそれこそが、俺の狙いでもあった。


 ぐわっ、と突風を起こすような勢いで身体を回転させる、クリスタルを失ったガーディアン・クラブ。


 茹でられたように赤く染まった身体で、猛然と爪を繰り出してくる。

 俺はその怒りの一撃を、またしても片手で受け止めた。



「……あーあ、とうとう茹で蟹になっちまったか……。言ったろう? 怒りは判断力を狂わせるって……! もう、気づいているだろう……? 俺の作戦にまんまとハマったのを……! そしてもう、見えてるんだろう……? お前の背後にいる俺の仲間が、今まさに弓引いているのを……!」



 蟹野郎の身体が、血の気が引くように真っ青に変色する。



「まったく、赤くなったり青くなったり、忙しいヤツだ。おっと、そう慌てずに……ゆっくりしてけよ」



 再び身体を回転させようとしていた蟹野郎の爪を、俺はぐっと握りしめて引き止めた。

 力任せに振りほどこうとする蟹野郎。が、びくともしない。


 単純な力比べでは、俺にとっては重機を相手にするようなもの……だが、蟹にだってツボはある。

 ツボがあるなら、コイツは俺にとってはただのサワガニだ。



「……そうだ、思い出した。俺もよく考えたらお前さんのお仲間だったんだ。たしか……『死を招き(シオマネキ)』だったかな……?」



 ……ブバッ!



 口から泡が吐き出され、俺の身体に降り注いだかと思うと……蟹脚をガツガツと地面に打ち込みながら暴れだす。

 そして、



「ブグッ……グブブッ……グブブブッ……! グワッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」



 あたりに消化器のような泡を噴出させながら、天を仰いだ後……ズズン、とうつ伏せになった。


 虹色のシャボン玉が、あたり一面に舞っている。

 幻想的な空間に変わったボス部屋の真ん中には、針玉のように矢を突き立てられた甲羅が横たわっていた。

次回、副会長と書記はトップ到達できるか!?


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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★新作小説
ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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