43 拷問のお返しは快楽地獄
「おい、昨日の『海神の試練』の中継……あっ!? お前もシオマネキのファンクラブに入ったのかよ!?」
「そりゃそうだろ! あんな姿を見せられて、入らねぇヤツはいねぇよ!」
「俺も入ろうとしたんだけど、事務所に人が殺到してて、全然ムリだったんだよなぁ……」
「なんか国じゅうのヤツらが集まってて、パニックになってたもんな。そこらじゅうで新しいファンクラブが出来てたから、俺はそっちに入ったよ」
「昨日のシオマネキの戦い、すごかったもんなぁ……男の俺ですらシビレちゃったよ」
「普通だったらあんな虎、睨まれただけでチビって動けないよ……」
「しかも治してやって、助けてやって……あれが本当の男気ってヤツだよなぁ……あの虎じゃなくても惚れるよ……! 俺もあんなふうになりたいぜ……!」
「でもよ、聞いたか? 摂政のほうはあの中継はヤラセだって発表してるんだって」
「ああ、知ってる。中継所のヤツらが怒って、摂政の言うとおりにテロップを流してやったのに、裏切られたって怒ってるみたいだな」
「ええっ!? どうりで、最近の中継のテロップはシオマネキに好意的だと思ったら……そういうことだったのかよ!?」
「ああ、最初のうちは摂政からの依頼で、シオマネキの印象が悪くなるテロップを流していたらしい」
「おいおい、それってマズいんじゃないのか? 中継所は中立のはずじゃなかったのかよ!?」
「ああ、それが摂政の手が入ってるのが本当だとしたら……とんだスキャンダルだよな!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
檻から解放された俺は、族長であるマリリンと広場で対峙していた。
「……タラッティアの国王にすら服従しなかった、ナミルを服従させるとは……。もはやこの村で、貴様の敵は私しかおらん。さぁ、好きにするがいい」
ママリンはそう言うなり、腰から下げている刀を外しながら正座をする。
まるで切腹の介錯を頼むかのように、覚悟を決めた表情で俺を見上げていた。
「なんだ、俺と戦うんじゃねぇのかよ? いまならチャンスだぞ、俺はもう立ってるのもやっとなんだからな」
「……まわりを見てみろ。いまの貴様を斬ったら、私はこの村の女どもを全員斬ることになる」
そう言われて、見回してみると……あたりを囲む村の女たちは、誰もが武器を手にしていた。
なかにはホウキやら、ふとんたたきやら、武器とは思えないものまであるが……どうやら俺の味方をしてくれてるようだ。
「私が作りあげたこの女だけの村は、私にとっての理想郷……滅ぼすのは本懐ではない。だとしたら私が死ぬしかなかろう」
「……なんでそんな思考になるのかわかんねぇけど……まぁ、好きにしていいんだな? だったら好きにさせてもらうぜ」
俺はマリリンの背後に回り込むと、肩を突き飛ばしてうつぶせに倒した。
その腰によっこらしょと跨る。
「くっ……!? 貴様……! 皆が見ている前で陵辱するつもりか……! 死なせる前に、受けた拷問の仕返しとして、最大限の屈辱を与えるために……!」
「まぁ、ある意味生かしてやるし、ある意味死なせてやるよ。屈辱かどうかは、お前次第だがな」
俺は指の骨をポキポキ鳴らしたあと、まずは肩を掴む。
「んはぁっ!?」と息を漏らすマリリン。
「ああ……やっぱり、メチャクチャ凝ってやがるなぁ……そんないかつい表情にもなるってもんだ」
「なっ……なにをっ!?」
「いーから、じっとしてな」
身体をよじって抵抗しようとするマリリンを、俺はぐっと押さえ込む。
「なっ……なぜだっ……!? ちっ……力が……入らないっ……!?」
力ずくでマウントをひっくり返そうとしているのか、マリリンは歯を食いしばっている。
「俺が身体に触れたら、もう何をしてもムダだ。すでに俺のてのひらの上で、あとは転がされるのみ……。お前が行くのは天国か地獄か、決めるのは俺だ。俺の気が変わって、地獄にイカされたくなきゃ……大人しくしてるんだな」
「う……ううっ!? ああんっ!?」
首筋をぐっと押してやると、マリリンは悲鳴を絞り出した。
まわりで見ていた女に「わっ、マリリン様って、あんな声も出すんだ……!」と言われ、マリリンの顔がカァーッと赤熱する。
「ナミルと同じで、こんな声を出すのも久しぶりだろ、どうだ、気持ちいいか?」
「んあっ!? ……や、やめろっ! き、気持ちいいわけが……ない……あはぁんっ!」
さらに肩を揉み込んでやると、マリリンは逆エビにのけぞった。
「お前、さっきこの村を作ったって言ったよな。女だけの部族だなんて、いろいろ大変だったんだろう。好きだったショートケーキも我慢して、がんばってきたんだろう?」
「なっ!? なぜそれを……!? なぜ私が、ショートケーキが好物だと……! ハッ!?」
マリリンは慌てて口をつぐんだが、もはや手遅れ。
観衆は、鬼の涙を目撃してしまったかのようにざわめきはじめる。
「えっ? マリリン様って、ショートケーキがお好きだったの!?」
「意外……! でも女の子みたいでかわいい……!」
「もしかして、イチゴを最後まで残して食べたりするのかな?」
「マリリン様も、やっぱり女の子だったのね……!」
「でも、この村にはショートケーキなんてないから……きっとお辛かったでしょうに……!」
「ずっと、干しイカがお好きだとおっしゃってて……甘いものなんて見るのも嫌だと怒鳴られてたのに……!」
俺は観衆の疑問に答えてやる。
「干しイカが好きだってのはウソだな。コイツの身体は根っからの甘党のつくりをしてる。でも甘いものを食べたらショートケーキが食いたくなっちまうから、わざと遠ざけてたんだろ」
「やっぱり……タクミさんって、触っただけでその人のことがわかっちゃうんだ……!」
いつの間にか、女たちに混ざっているスリリスがいた。
「おっ、スリリス。そうだ、俺はこうしてマッサージしてやると、ソイツの事が手に取るにようにわかるんだ。例えば……」
俺はマリリンの肩から、脇に手を滑らせて揉み込む。
マリリンは声をこらえているのか、「んひいっ!?」と、いななく馬のような変な喘ぎ声を漏らす。
「我慢すると、余計に恥ずかしいだけだぞ……うん、普段はワキのニオイを気にしてるようだな。ワキの風通しを良くするために普段から腕を持ち上げてるんだろう。だからこんなに固くなるんだよ」
「ち……違っ……! そんなことは、断じてないっ……!」
と懸命に否定するマリリン。
でもその顔は耳まで赤く染まっているので、周囲への説得力は皆無だ。
「マリリン様も、ワキのニオイを気にしてるんだね……」
「なんだ……そんな細かいことなんて、まったく気にされないお方だと思ってたのに……」
「ショートケーキといい、やっぱり私たちと同じ女の子なんだ……!」
俺はさらに手を滑らせて、脇腹のあたりを揉む。
「んひいっ!? ひいいっ! ひいっ! ひいいーーんっ!!」
マリリンは暴れ馬のようにいななく。
「横っ腹のお肉が気になってるんだな。運動不足だから当たり前だ。いくらダイエットしても、いくら洗濯バサミで摘んでみても、肉はなくならねぇぞ」
「ひいいいん! ひいん! んひいいいいーっ!!」
イヤイヤと頭を振り乱し、俺の言葉を否定しようとするマリリン。
「ええっ!?」と意外そうにしている女たち。
「マリリン様が、ダイエットしてるだなんて……!?」
「イメージが全然違うよね……!?」
「しかも、お腹のお肉を洗濯バサミで摘んでただなんて……!」
「あんなに立派なお方でも、普段やってることは私たちとぜんぜん違わないんだ……!」
女たちは親しみを覚えたような、ほっこりした笑みを浮かべている。
でもそれをバカにされていると勘違いしたのか、マリリンは恥辱に耐えるように顔を伏せていた。
「くっ……こ……殺せっ……! ひと思いに……!」
「なんだ、リクエストか? なら答えないわけにはいかないな」
俺は身体を反転させて、太ももにとりかかる。
引き締まった大腿部を、指でキューッと押してやると、
「あひいっ!? あっあっあっあっ!? あぁあぁあっ!? あぁあーーーんっ!!」
マリリンはオオカミの遠吠えのように身体をのけぞらせ、嬌声を村じゅうに響かせた。
「ここは効くだろ? お前は脚を痛めてるから、なおさら気持ちいいはずだ」
「やっやっやっやっ!? やあっ!? なにこれっ!? なにこれぇっ!? いやああああんっ!? 死ぬっ!? 死んじゃうっ!!」
地面にガリガリと爪立てて、与えられる刺激から逃れようとするマリリン。
「死なせてほしいんじゃなかったのかよ、たっぷり死なせてやるから覚悟しろ……!」
女たちはマリリンの痴態に、何度もを唾を飲み込んでいた。
「す……すごい……!」
「あのマリリン様が……タラッティア王国の将軍までつとめられたマリリン様が……!」
「まるでナミルみたいに、タクミくんに手玉にとられてるだなんて……!」
「それに、すっごく気持ちよさそう……! あんな色っぽいお顔のマリリン様、初めて見た……!」
「やっ……やめてっ! やめてっ! やめてっ、やめて! お願い、見ないで、見ないでぇぇぇっ!」
荒い吐息をハッハッと上げながら、周囲に懇願するマリリン。
俺をさんざん痛めつけてきた、強気な女が乱れている様に……俺の意地悪スイッチが入っちまった。
「何言ってんだ。俺が拷問で苦痛に喘いでいる様を、お前は村中の女に向けて晒し者にしただろうが。だったらお前も、俺のマッサージで快感に喘いでる様を、みんなに見てもらうのが筋ってもんだろ」
「らっ、らめぇ! 気持ちよすぎて、自分でも知らない顔になっちゃうの! 人前でしちゃいけない顔になっちゃうのぉ! いやっ、いやっ、いやあ!」
脚が指圧ですっかり良くなったマリリンは、両脚をこれでもかとバタつかせて最後の悪あがきをしている。
その様に嗜虐心を刺激された俺は、もうちょっとだけ意地悪してやることにした。
「……じゃ、最後の仕上げといくか。その前に、こっちを治しとかなきゃな」
俺はアヘ顔寸前のマリリンの頭をガッと掴んで、こめかみのあたりを刺激する。
「ああっ……!? う……ウソ……!? 目、目が……目が見える……!?」
マリリンは本当に我が目を疑う様子で両手を見つめたり、顔をあげてまわりの女たちをキョロキョロと見回している。
そして驚いていたのは、マリリンだけではなかった。
「えっ……マリリン様って……目を悪くされてたの!?」
「そんな素振りがなかったから、全然気がつかなかった……!」
「身体じゅう傷だらけで、目も悪いだなんて……ナミルとおんなじじゃない……!」
女たちの驚愕をよそに、マリリンはトカゲのように身体と首を限界まで捻って俺を見つめていた。
その瞳には焦点があっており、まるで太陽でも見るかように眩しそうにしている。
「これが……た……タクミ……!」
俺は、大きく頷き返す。
「ああ、やっと名前で呼んでくれたな」
「どうして……どうして私の目が悪いって、わかったの……!?」
「お前、ロクに俺の顔を見なかったよな。最初は高慢さから来てるのかと思ったんだが……俺が挑発したときに、ちょっとズレた所を睨み返してただろ。全く見えないわけじゃないみたいだが、相当視力が低下してるのはすぐにわかったよ」
「……何もかも、お見通しだったのね……でも……どうして治してくれたの? あなたをあんなに酷い目にあわせた、私を……!」
「最初はナミルと同じで、目はいちばん最後に治してやろうと思ったんだが……気が変わったんだ」
「えっ……? 気が変わった、って……ど、どうして……?」
族長、そして将軍ともあろう女が、面白いほどにうろたえている。
俺は自分の頬が嫌らしく歪むのを、禁じ得ることができなかった。
「そりゃ、ボンヤリとした視界より……ハッキリとした視界のほうが、まわりから見られてるとわかって……より恥ずかしいだろ?」
ニヤリとする俺の顔を見て、ハッと息を飲むマリリン。
「ええっ!? ま、まだするの!? お願い、やめっ……!」
泣きそうな顔ですがってきたが、俺は赤子の手をひねるように軽くあしらう。
「そうはいくか。お前の身体にはまだまだ悪いところがタップリあるんだ。みんなが見てる前で、しっかり治してやるよ……!」
「いやあああああーーーーーーーーーーーーっ!! ゆっ、許してっ、許ひてぇ!! おかしくなっちゃうから……本当におかしくなっちゃうからぁ……!! お願いですっ……せめて、誰もいないところで……!! やめっ……やめぇぇぇぇぇんっ!! タクミしゃま……タクミしゃまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!!」
マリリンは施術中、ずっとまな板の上の鯉のように激しく暴れていたが……やがてトドメを刺されたかのように、ビクンビクンと痙攣するばかりになった。
次回、真実が明らかに…!
それと新作小説を掲載いたしました。
本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。
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