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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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41 タクミの男気

 邂逅一番、グオゥ! と真横に薙ぎ払われる巨大な爪。

 頭ごと持っていかれそうなソレを、俺は上半身をスウェーさせてかわす。



「おいおい、せっかく一緒の檻になれたのに、焦るんじゃねぇよ。朝飯食い忘れたのか?」



 ……ゴオウッ!


 ナミルは返事のかわりにトラバサミのように食いついてくる。

 骨ごと食いちぎっていきそうなソレを、俺は横っ飛びしてかわす。



「俺は朝飯じゃねぇよ、友達だ。スリリスの友達なら、俺も友達だろ?」



 ……ガアアアオゥ!! と吠えかえされちまった。

 どうやらフレンド申請は却下されちまったようだ。



「……しょうがねぇなぁ、お近づきの印をやるから、考え直してくれよ」



 俺は指の骨をポキポキ鳴らして、ツボ押しの準備をはじめる。

 すでに『バレットタイム』のツボは刺激してあるので、ヤツが動きだした瞬間、毛先が揺れる様までバッチリ見えた。


 ……ゴオオオッ!!


 地鳴りの様な唸りが、突風となって俺の身体を吹き抜ける。


 ヤツの爪による刺突は、ポセイドンの三叉の矛が迫ってくるようだった。

 わずかに顔をずらすと……ヤツのやわらかい腕毛が、俺の頬を撫でていく。



「……ゴワゴワかと思ったら、思ったよりモフモフだな」



 そうささやきながら、カウンター気味にヤツの脇腹のあたりに触れる。

 さらに返しの一撃がきたので、同じようにかわして反対側の脇腹にもタッチした。



「これでよし、これでもっと思いっきり腕が振れるようになっただろ」



 ……シュバッ!!


 ソニックブームのように、空気を切り裂く一閃が、俺の鼻先をかすめる。

 危ねぇ危ねぇ。『バレットタイム』がなけりゃ、俺の鼻がまるごと削ぎ落とされてたところだ。


 ヤツの腕は目覚ましいほどに回復している。

 それは、まわりで見ていた女どももわかったようだ。



「あ……あれ? ナミルってあんなに手が上がったっけ?」



「ううん、肩から上に手があがらないって、スリリスが言ってたけど……」



「それになんだかナミルの攻撃、いつもよりずっと鋭くなってない?」



「タクミくんも、なんとか避けてるみたいだけど……このままじゃやられちゃうよ!」



 鋭いと評された爪攻撃のあとには、牙攻撃が続く。

 爪攻撃でダメージを与えて動きを止め、牙攻撃で食らいついてトドメをさす……その二段がまえの攻撃が、ナミルの必勝パターンらしい。


 パイルバンカーみたいなぶっとい牙と、ノコギリみたいにびっしり並んだ歯が、カキン! カキン! と打ち鳴らされ、空を切る。



「なんだ、顎も開かなくなってるじゃねぇか……自慢の牙もそれじゃ、手紙の封を切るくらいにしか使えねぇだろ」



 俺は迫ってくる虎顔を挟みこむようにして、指で両顎を押してやった。

 噛みつかれる直前で、しゃがんで逃げる。


 身体を翻して追いかけてくる虎口は、ペーパーナイフからギロチンへと変わっていた。

 ズギャン! ズギャン! と火花が散るほどの勢いで、俺に食らいつこうとする。


 檻の外のざわめきが、大きくなっていく。



「あ……あれ? やっぱり変だよ!? ナミルの口って、あんなに開かなかったのに……!」



「うん、私、エサをあげてたことがあるからわかる! 普段はあの半分くらいしか開かないはずなのに……!」



「そうなの!? 今のナミルの口って、タクミさんをひと飲みにしちゃいそうだよ!?」



 たしかに、今のナミルの噛みつき攻撃をくらっちまったら、俺は上半身がなくなっちまうだろう。

 だが、くらわない……その理由もすでにわかっている。



「足腰も悪くしてるみてぇだな……だから噛みつきの伸びもイマイチなんだよ」



 こんな狭い檻で、戦わされてる理由も少しわかった気がした。



「お前、軍隊虎だったんだろ? だったらもっとのびのび戦いてぇよなぁ?」



 ……グオオオオオッ!!


 頭突きのように飛びかかってくるのを見計らい、俺はヤツの真下を滑り込んで背後に回り込む。

 ムチみたいにしなる尻尾をかわしながら、腿のあたりに触れる。


 直後、前足にも負けない勢いを取り戻した砂蹴りが飛んでくる。

 俺は首の皮一枚でのけぞって、なんとか回避した。


 「きゃあっ!?」と悲鳴が沸き起こる。



「あ……あぶないっ! ギリギリだったよ!?」



「やっぱりおかしい! おかしいよ! ナミルって脚を引きずってたのに……!?」



「うん! いつも檻の中じゃ、ひょこひょこ歩いてたよね!?」



 じょじょに壮健になっていくナミル。

 脚まで動くようになったので、観客たちの違和感が決定的になったようだ。



「も……もしかして……タクミくんが治してるの?」



「そういえば、よけながらナミルの身体に触れてるような……?」



「ええっ!? なんでそんなことするのっ!? ナミルはタクミさんを殺そうとしてるんだよっ!?」



「わ、わかんない……わかんないけど……ナミルがあんなに元気になってるのは……タクミくんの『しあつ』以外に考えられないよ!」



 ……指圧はなにも、人間だけのものじゃねぇ。動物にだってツボはあるんだ。


 ナミルは幾多の戦場に駆り出された結果、身体がボロボロになっちまったんだろう。

 触診するまでもなく、ひと目みただけでわかった。


 それでもヤツは持ち前の闘争心で、この村の平和を守ってきたんだろう。

 それを元通りにしてやるのが、俺なりの『お近づきの印』……!


 俺はナミルの攻撃をかわしながら、チラリとマリリンのほうを見る。

 マリリンは俺がなおも無傷なので、悪夢にでも苛まれているような表情をしていた。



「な……なぜだ……! なぜアイツは軍隊虎を相手に、平気でいられる……!? どんな強者でも、ナミル相手には十秒すら持ったことがないのに……! それになぜ、ナミルを治している……!? どんどん自分が不利になっているではないか……!?」



 ……驚くのは早ぇよ。なんたって、次はお前の番なんだからな。

 お前もナミルと変わらねぇくらい、あちこち身体がイカれてるんだろ……?


 ……ゴアアアアッ!!


 ちょっとよそ見していたスキに、ナミルは象が前足でストンピングをするみたいに立ちあがっていた。

 まるで波みてぇな巨体が、俺を覆いつくそうしている。



「……や……やめろっ!!」



 俺の制止もむなしく、吊り天井のような身体が降ってきた。



 ……ドオオオンッ!!



 鳥かごを中心にした、地雷震のような衝撃波が広がる。



「キャアアアアアーーーーーーーーーッ!?!?」



 黄色い悲鳴が波となって、引き潮のように寄せ返す。



「た……タクミくんが……タクミくんがナミルに潰されちゃったぁ……!!」



「なんで、なんでナミルを治しちゃったの!? それで自分がやらちゃったら、元も子もないじゃないっ!!」



「わあああっ! タクミくんっ! タクミくぅぅぅんっ!!」



「うわあああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!」



 サイレンのような女たちの号泣が、村じゅうに鳴りわたる。



「ハッ……ハハッ!! ハーッハッハッハッハッ!! ば……バカなヤツよ!! 自らの手でナミルを立てるようにしておきながら、それで殺されるとは……!! 常軌を逸した罪深さよ……!! やはり『穢し生き物』は、どこまでも愚かなりっ……!! ハーァーッハッハッハッハッハッハーッ!!!」



 祝砲のようなマリリンの高笑いが、悲しみのムードを蹴散らしていく。


 しかし、その悲しみも喜びも……鳥かごの中で起こったさらなる異変の前に、ピタリと静まりかえった。



「あ……あれ? ナミルが……ナミルが起き上がってる……?」



「ううん、ナミルは寝そべったままだよ。下から持ち上げられてるんだ……!」



「ええっ!? ナミルって、象と同じくらい重いんだよ!? それを持ち上げるなんて、ムリだよっ!?」



「で、でも……どんどん持ち上がっていってるよ!?」



「あっ、ありあない……ありえないよっ!?」



「い……いったい、ナミルの下で、何がおこってるの……!?」



 そして……ナミルの下から現れた俺の姿を認めるなり、蘇った死者を目撃したような驚きが炸裂する。



「えっ……ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?!?!?」

次回、タクミが動物王に…!?


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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