表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
59/101

40 シオマネキvsケルベロス

「おい、『海神(わだつみ)の試練』の中継見たか!? やっぱり『シオマネキ』はウソなんじゃねぇーか!?」



「お前もそう思ったか? 部族の女たちを、触っただけで治してたよな!」



「なにが、触られるだけで地獄が見える、だよ……!」



「むしろ女の子たち、気持ち良さそうにしてたよね!」



「ああ、なんか、地獄っていうより、天国を見せられてるみたいだった……!」



「でもさ、触っただけでケガや病気を治すだなんて、なんなんだろうな? 魔法にしか見えないけど、詠唱はしてないようだし、魔法反応もないし……」



「もう、なんでもいいじゃない! あぁん、私もシオマネキ様に触られたーい!」



「あっ、お前……なに首から下げてんだよ!?」



「へへーっ、これ? シオマネキ様のファンクラブの会員証だよ!」



「し……シオマネキのヤツに、ファンクラブまであんのかよ……!?」



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 海の向こうでファンクラブが結成されているとも知らず、俺は檻の中にいた。


 いつもの狭い鳥カゴじゃなくて、サーカスとかにありそうなデカい鳥カゴ。

 村のはずれにあるこの巨大鳥カゴに入れられ、俺は『男気』を示すことになった。


 木の幹を歪めて作った柵の向こうには、村じゅうの女たちが詰めかけている。

 誰もが「無茶しないで!」とか「今なら間に合うから、やめて!」なんて俺を止めようとしている。


 遥か遠くには、イスに縛りつけられているマーメイズ。



「旦那様、やめてぇ! ボクたちのことはもういいからっ! その気持だけでじゅうぶんだから、もう逃げてぇ!」



 声をかぎりに叫ぶミューティ。



「バカバカバカっ! 旦那様の大バカ野郎っ! トラと戦うだなんて、バカなことするんじゃねぇーよっ! イキがるのもいい加減にしろっ!」



 辛辣な言葉を並べ立てて怒鳴るフォティア。



「旦那様、あのトラ超ヤバい! 戦うなんてムリムリ! ネズミみたいにひと飲みにされちゃうって! 一緒にゴメンしてあげるから、マジやめときなって!」



 ひたすら説き伏せようとするアネモス。



「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーんっ! 旦那様っ! 旦那さまぁっ!」



 ひたすらイヤイヤと涙を撒き散らし、泣き叫び続けるセリリム。


 マーメイズの隣には、不敵な笑みを浮かべるマリリン。

 そしてその手元には、誘拐される子供みたいに口を塞がれているスリリス。


 スリリスが拘束されているのは、トラの『ナミル』の戦意を削がせないためだろう。

 ナミルは彼女の言うことをよく聞くようだから、その気になれば手加減させることも可能なんだ。


 まぁ、手心なんて最初から期待してなかったが……今まさに目の前で、仕切りが開くのを待っている巨大トラを見ていると、ちょっとは加減してくれねぇかなぁ……なんて思っちまった。


 俺の対戦相手であるナミルは、普通のトラの何倍もある。象みてぇなデカさだ。

 軍用兵器だったという過去も納得できる。


 いくつもの戦場をかけぬけ、敵兵士の攻撃をくぐりぬけてきたのか体中が傷だらけ。

 片目には大きな傷が走っており、隻眼の老兵といった風格。


 何百人もの兵士を食い殺してきたんだろう。こびりついて落ちなくなった血で、口のまわりが赤黒く染まっている。

 爪はひとつひとつが鎌みたいな大きさで、かすっただけでも命を刈り取られちまいそうだ。


 猫科の動物が獲物を捕らえるとき特有の、瞳孔の開ききった目で俺を見据えている。

 ひさしぶりのごちそうだ、さっさ食わせろとばかりに、俺に向かってゴウゴウと吠えたてている。


 ……うーん、こんな動物に、素手で戦って勝てるヤツはいるんだろうか。

 大砲でもなきゃムリなんじゃねぇか?


 それによく考えたら、俺って人間とはさんざん戦ってきたんだが、動物と戦うのは久しぶりなんだよな……。


 いわばぶっつけ本番みたいなもんだ。

 しかも、殺すわけにはいかねぇんだよな。


 スリリスの友達であるナミルの命を、同じスリリスの友達である俺が奪うわけにはいかない。

 まぁ……スリリスどころか、この場にいる誰もがナミルの心配はしてねぇようだけど……。


 なんにしても殺すわけにはいかねぇし、殺されるわけにはもっといかねぇ。

 でも、どっちかが死なねぇと終わりそうもねぇし……。


 さぁて、どうすっかな……と考えていると、



「……皆の者、静まれいっ!!!」



 マリリンの一喝が、集落じゅうに轟いた。

 こだまのような残響を残し、あたり一帯が静まりかえる。


 さすがコワモテのリーダー、たった一言で女どもを黙らせやがった。

 しかも女どころか、ナミルまでお座りしてやがる。



「『穢れし生き物』よ……!! これより貴様のいう『男気』とやらを見せてもらうことになるが……最後に選択を与えようっ!!」



 この期に及んで、選ぶことなんて何かあるのか……?

 ナミルが猫になってくれるとか……?



「いさぎよく『男気』などないことを認め、この集落を去るのであれば……命だけは助けてやろう!!」



 なんだよ、またその話かよ……。



「女たちの手前、引き返せなくなったのであろう? だが、今回は拷問ではなく、命のやりとり……!! そこに待つのは、紛うことなき死……!! 貴様にそこまでの覚悟はないことは、この私にはお見通しだっ!!」



 いや、死ぬ覚悟なんてこれっぽっちもしてねぇけど……。



「だが……ここまで意地を張ったことだけは認めてやる!! 『穢れし生き物』にも、少しは骨のあるやつがいるものだと……!! そして特別に、マーメイズの三人……ミューティ以外のメンバーを解放してやろう!!」



 「えええっ!?」とマリリンを見上げるマーメイズ。

 そしてすぐさま叫びだす。



「あ、ありがとう! そうするそうする! 旦那様とみんなは、今すぐここから……!」



 顔を輝かせ、勝手に承諾するミューティ。

 しかし他のメンバーは賛同するどころか、烈火の勢いで反対していた。



「それだけは絶対ねえっ! ミューティを置いて逃げるなんて、できるかよっ!」



「マジありえなくない!? マーメイズが離れ離れになるなんて、いままでなかったんだよ!? これからもありえないって!」



「セリリムたちを助けてくれたミューティちゃんを、見捨てるなんて……絶対イヤですっ!」



 わぁわぁぎゃあぎゃあと、1対3で言い合いを始めるマーメイズ。



「……姫君たち、少し静かにしていただこう!! 決めるのは『穢れし生き物』だ……!!」



 マリリンは部下に指示を出し、マーメイズに猿ぐつわを噛ませる。

 口を塞がれても彼女らはあきらめず、ムグームグー! と俺に向かってなにかを叫んでいた。


 祈るように俺を見つめる、四人の嫁。


 ミューティはきっと、俺に降伏してほしいと訴えている瞳だ。

 フォティアとアネモスは、俺に降伏してほしくないと訴えている瞳。


 セリリムはというと……俺に降伏してほしくないようだが、それだと俺の命があぶない……と迷っているような瞳だった。


 マーメイズだけではない、この村じゅうの女たちが、固唾を飲んで俺の決断を待っている。

 まわりの緊張をよそに、俺は後ろ頭をボリボリ掻いていた。



「うーん……。『究極の選択』みたいな雰囲気にしてもらってるとこ悪ぃが……俺の気持ちはずっと変わってねぇ。俺はマーメイズの四人と一緒じゃなきゃ、この島を出るつもりはねぇよ……さらさらな……!」



 はふぅ……! と桃色の吐息が俺を包む。

 マーメイズと、村じゅうの女たちが、なぜかうっとりした溜息をついていたからだ。


 そして、それまで余裕たっぷりだったマリリンは、額に青筋が立つくらいに怒りに顔を歪めていた。



「……貴様あっ……!! なぜ、そこまで……!! なぜそこまでして、マーメイズを守ろうとする……!?」



「また、その質問かよ……俺の嫁を守るのに、理由なんていらねぇだろ」



 俺の答えを受け、信じられない様子でワナワナと震えだすマリリン。

 逆に俺は、なぜそこまでして俺にマーメイズを裏切らせようとしているのか、そっちが気になってしょうがなかった。



「……ありえぬ……!! ありえぬのだっ……!! 『穢れし生き物』が、ここまで強い意志で女を守ることなど……あってはならんのだっ!! これは……何かの間違い……!! 間違いであるならば、訂正せねばならぬ……!!」



 マリリンは力いっぱい握りしめていた拳を、兵士に命令を下す指揮官のようにバッとかざす。



「ゆけいっ、ナミル!! この世の(ことわり)を歪める、『穢れし生き物』を、抹消するのだっ……!! 女を見捨てぬ『男』など、いてはならぬのだぁっ……!!」



 ここに来て初めて、アマゾネスの長は俺のことを性別で呼んだ。

 『女』と対になる、『男』として……!


 そして地獄の入り口が破られる。


 シオマネキのように片手をかざし、飛んでくる木片を防ぐ俺。

 ケルベロスのような巨大な四ツ足の影が、ぬうと覆った。

次回、タクミの男気が炸裂!


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります! ⇒ 小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ