34 アイドルたちとの一夜
無限に続きそうだったキス会を、俺は腹も減ったので途中で打ち切った。
それから火おこしをして、森の入り口あたりを探して採った木の実やら果物やらをマーメイズに食わせてやる。
ちなみにこういったサバイバルで一番問題なのは水の確保なんだが、それは問題なかった。
マーメイズは海棲族で、口からスポーツドリンクみたいな水を出せる体質なんだ。
それを口移しで飲ませてもらった。
この口移しで水を飲ませるというやり方は、海棲族の掟では配偶者か自分の子供にしかやってはいけない決まりがあるそうだ。
それだけ貴重で、愛情を示すものだそうなんだが……俺を配偶者にする気満々のマーメイズたちは、喜んで水を分けてくれた。
しかし……それ以外の点については、マーメイズは役立たずだった。
いつも何事も魔法で解決しているらしく、理由はわからないがその魔法が使えない今、彼女たちは自分の食べるものすら満足に取ることができなかった。
それはまぁ、俺がなんとかしてやればいいだけの事なんだが……この状況なのに危機感がなくてのほほんとしているので、先が思いやられる。
そしてその日は結局、浜辺で寝るハメになった。
できれば寝床くらいは確保しておきたかったんだが……その時間はキスで費やしちまった。
日も沈んで森の中に入るのは危険だと判断し、焚き火のそばで寝ることにしたんだ。
それもまぁ別に、よかったんだが……、
「……なぁ、なんでミューティとアネモスが、俺の上に乗ってるんだ?」
浜辺に寝ころんでいる俺の身体の上には、うつ伏せに寝ているミューティとアネモス。
なので俺の目の前には、ふたりの美少女の顔があるんだ。
さらに俺の両隣には、フォティアとセリリムが寄り添っている。
右を見ても左を見ても、美少女の顔がある。
彼女らのステージ衣装は薄手なので、こんな風に吐息が感じられるほどにピッタリと密着されると……丸みを帯びた身体のラインがはっきりとわかる。
しかも好き勝手に頬ずりしたり、唇を寄せたりしている。まるで猫が甘えてるみたいに。
いわばこれは、猫布団ならぬアイドル布団。
どこにも逃げ場がないので、アイドルの檻といってもいいかもしれない。
「なぁ、なんでミューティとアネモスが、俺の上に乗ってるんだ?」
俺はもう一度尋ねる。
すると俺の上で、俺の鼻を舐めていたミューティが、
「ジャンケンして決めたんだ。明日はフォティアちゃんとセリリムちゃんが上になるよ」
見当違いの答えが返ってきた。
俺は、どうやって決めたかじゃなくて……なんで乗ってるかの理由を尋ねたつもりだったんだが……。
「へへー、こうやって四人だけで、旦那様とイチャラブするのが夢だったんだよねー!」
そう言うアネモスはアネモスで、俺のアゴをペロペロしている。
「そうそう。旦那様の家だと、邪魔が多くてできなかったからな!」
俺の耳たぶを、はむっと甘噛みするフォティア。
くすぐったくて避けようとしたんだが、反対側の耳もすでにセリリムに狙われていたので、逃げようがなかった。
「本当に夢みたいです、旦那様……食べちゃってもいいですか……?」
返答を待たずに、俺の耳を餃子みたいにあむっと口に含むセリリム。
「おおっ、セリリムってばチョー大胆!」とからかうアネモス。
「そうだ、大胆といえば……アレやろうよ! みんなで練習したアレ!」
ミューティがなにかを思い出したようだ。
「アレ」がなんだかよくわからねぇが、メンバーにはそれで通じたようだ。
すると、示し合わせたように両側のフォティアとセリリムが、俺の腕にしがみついてきた。
そして太ももで俺の脚をはさみこむ。
どうやら、俺を動けなくしているつもりのようだ。
続けざまに、ピンクのナメクジのような物体がどアップで迫ってくる。
「……なっ、なんだ?」
一瞬何かと思い、目を閉じようとしたが、ミューティとアネモスから指をあてがわれ、瞼をグッと開かされてしまった。
「旦那様……じっとしてなきゃダメっしょ……」
アネモスの吐息が眼球にかかり、視界が曇ったような気がした。
どうやらピンクのナメクジは、ミューティとアネモスの舌のようだ。
……ぴちゃ。
眼球に、温かくて濡れていてヌメヌメしたものが這う。
俺の視界はふたつの舌によって、完全に塞がれてしまった。
俺の目玉は高級なソフトクリームにでもなってしまったのか、美少女の舌の腹がやさしくあてがわれ、ぴちゃり、ぴちゃりと味わわれている。
いまだかつてない、ゾクゾクする感触……俺は背筋を震わせていると、
「うふふ、気持ちいいですか……? こうやってお目々を舐めるのは、海棲族の愛情表現のひとつなんです……」
いたずらっぽいミューティの声が、どこか遠くで響いていた。
声がぼんやりと聞えるのには、理由があった。
……ちゅぷ。
憶えのある感触が、俺の耳の穴にも入り込んでいたからだ。
フォティアとセリリムの舌が、俺の耳穴を舐めほじっていた。
くちゅくちゅという水音が、大音量となって俺の脳を揺らす。
ゾクゾクはさらに激しく、止まらなくなり……俺はまるで甘美な電流を流されてるみたいにビクビク痙攣してしまった。
思わず身体をよじろうとするが、ホールドされているのでうまくいかない。
「このお耳の穴を舐めるのも、海棲族の愛情表現です……。旦那様、気持ちよさそう……」
「そりゃそうだろ、普通は一箇所しかできないのを、四箇所まとめてやられてるんだぞ、すげー気持ちいいだろ」
「王様だって、こんなに気持のいいこと、知らないはずです……」
「でも、タクミはハーレム王だぞ、アタイら四人をこんなにメロメロにしたんだから、王様より特別な存在なんだ……だからこそ、お返しをしてやんなきゃな」
妖艶な四色の声が、まるで水の中にいるようにくぐもって聞こえる。
俺は、人魚たちの歌声に引き寄せられ……海の中に引きずり込まれている間抜けな男のような気分に浸っていた。
ただひたすらに甘い快感が、さざ波のように絶え間なく続き……抗えない。
俺は直腸検査を受けているかのような、自分でも恥ずかしくなるような声を、いつの間にか絞り出していた。
その声に官能を刺激されたのか、マーメイズはさらに情熱的な愛撫を送り込んでくる。
俺と彼女たちは、静かな波の音に身をまかせ……誰もいない浜辺で、溶けあい、混ざりあっていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
次の日。
俺はまだ夢の中にいるマーメイズを起こさないように、そっと起き出して作業を開始した。
今日のうちに、ある程度の食料と、屋根のある寝床を確保しとかなきゃならねぇ。
昨日は木の実だけだったから、すぐ腹が減っちまうだろうし……こんな南の島みたいな所じゃ、いつスコールが降ってくるかわからねぇからだ。
俺はまず、石を削って石器づくりをした。
せめて持ち物のナイフが残っててくれりゃよかったんだが、リュックと一緒に流されちまった。
刃物がなけりゃ、木も削れねぇ。
石器で簡易ナイフと、矛先を作る。
その後、できたてのナイフで太い木の枝を削り、矛先を縛りつけて石ヤリを作った。
これで……素潜り漁くらいはできるだろう。
魚が手に入るようになれば、食料のほうはひとまず安心だ。
あの雛鳥どもは、起きたらまた「ハラヘッター」と大合唱を始めるはずだから、それまでに魚の一匹でも……と思って海に潜ろうとする。
だがタッチの差で気づかれていまい、ピィピィ鳴かれてしまった。
しょうがないので俺は「今から魚を獲ってくるから少し待ってろ、その間に潮干狩りでもして貝をあつめておいてくれないか」となだめた。
それから小一時間後。
俺は石ヤリでモノにした何匹かの魚を抱え、マーメイズの元に戻ると……。
「あっ! 旦那様! 貝をあつめておいたよー!」
と貝殻を大事なところに貼り付けただけみたいな、貝殻ビキニで迎えてくれた。
……ソレ、ちょっと大胆すぎねぇか? と目のやり場に困ったが「みてみてー!」と迫ってくるミューティ、フォティア、アネモス。
恥ずかしがり屋のセリリムだけは遠くのほうで、手で隠してモジモジしていた。
そんなに恥ずかしがるなら着なきゃいいのに……それに貝殻を手で隠しちまったら、全裸にしか見えねぇぞ……。
なんて思ってしまった。
まったく……無人島とはいえ、アイドルがそんなハレンチな格好していいのかよ……。
ある種のヌードじゃねぇか……角度によっては「安心してください、はいてますよ」って言ってくれなきゃ、ドキッてしちまうよ……。
しかし問題は、そんなことじゃなかった。
貝殻で水着を作るくらいだから、中身もあるんだろうと思ったのだが……彼女らは本当に貝殻しか集めてこなかった。
貝といえば貝殻だろう、とカラッポの貝をみんなして集め、なにに使うんだろうと首をかしげているうちに水着にすることを思いついたんだそうだ。
貝塚みたいになっている、カラの貝の山を「じゃじゃーん!」と紹介され、「いっぱい集めたでしょ、ほめてほめてー!」と擦り寄ってくるマーメイズ。
俺は身体に押し当てられる、アイドルたちの柔肌を感じながら……乾いた笑いを漏らすしかなかった。
次回、タクミをさらなる苦悩が襲う…!?
それと新作小説を掲載いたしました。
本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。
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