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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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27 結闘の儀、決勝戦前室

「わあぁ~っ!? 身体が軽ぅ~い!? まるで背中に羽根が生えたみたいですぅ~っ!?」



 俺のマッサージを受けたリンディは、子供みたいに両手をパタパタさせ、大喜びで控室を飛び出していった。


 ちょうど入れ替わりで入ってきたスタッフに俺も呼ばれたので、リンディの忘れ物をズボンのポケットにしまいこんで、控室から出る。


 案内されたのはいつもの闘技場の選手入場口ではなく、カラクリ仕掛けに囲まれた小部屋だった。

 どうやら舞台でいうところの『奈落』って所のようだ。


 決勝は、俺の足元がエレベーターみたいにせりあがって、闘技場に出るらしい。

 決勝戦らしい、なかなか派手な仕掛けだ。


 係のヤツからこのまま待つように言われたので、俺はポケットに手を突っ込んだままボーッとする。

 すると、いつの間にか……開きっぱなしの扉のところに、見覚えのある女が幽霊のように立っているのが見えた。



「……お前は……!」



 忘れもしない、鉄仮面女……。

 今となってはクーレの乳母というのも怪しい、メイド長のウェナーだった……!



「よく、俺の前に顔を出せたな」



 俺はいまいましい思いを隠しもせず、言ってやった。

 コイツのおかげで俺は、犯罪者にされちまったんだ……!


 でも責めてみたところで、ウェナーは退散しようともしない。

 平らな表情のまま、カツカツと部屋に入ってきて……俺の前に立った。



「タクミクン様、やはりあなたは誤解しているようですね。私があなたを眠らせて、クーレ王女の夜這いを仕立て上げたと」



 マシーンみたいな慇懃無礼な喋り方も、昨晩とまったく同じだった。



「……なんだ? 弁解でもしに来たのか?」



「本来の目的は別です。ただ、誤解されているのであれば、申し上げておきたいことがあります」



「言ってみろよ」



「私の腕でタクミクン様がお休みになったあと、そのままベッドに寝かせて、部屋から出ようとしました。しかし、ゴルヌイ様の工作隊が入ってきて、鉢合わせしたのです」



 言い訳というより、解説するような口調のウェナー。

 俺は眉をひそめる。



「……ゴルヌイの工作隊、だと?」



「はい。ゴルヌイ様直属となる、親衛隊の一部です。ゴルヌイ様の命であれば、潜入、破壊、誘拐、強盗、放火、暗殺……いかなる悪事もいとわぬ者たちです」



「ふぅん……ソイツらが俺を、陥れたと」



「はい。彼らはタクミクン様を眠らせようと、薬品を用いようとしていました。でも私が眠らせた後だと知り、そのまま部屋から運び出したのです」



「鉢合わせして、よくお前は無事だったな。そんな悪事をいとわぬようなヤツらが、目撃者を生かしておくわけがないだろ」



 俺は心を許さず、厳しく尋ねた。

 しかし人工知能と話してるみたいに、ウェナーの調子は変わらない。



「はい。私はクーレ様の乳母で、クーレ様に忠誠を誓っております。そして、将来クーレ様と結婚されるゴルヌイ様にも忠誠を誓っておりました。ですので、口止めだけですんだのです」



「ふん……まあ、わかった。お前はさっき、本来の目的は別だって言ってたよな? ここに来たのは何が目的なんだ?」



 俺は完全に信じたわけではなかったが、これ以上疑ってもしょうがねぇと思い、先を促した。



「はい。タクミクン様の戦いを、私は関係者席で拝見しておりました。そこでおかしな点がいくつもあったので、独自で調べていたのです」



「おかしな点だと?」



「はい。2回戦以降、タクミクン様が不利になるように、見えざる手が働いておりました。『指揮官戦』では開始早々、タクミクン様の部下となる兵士が寝返りましたが、あれは最初から仕組まれたものでした」



「ああ……俺も変だとは思ってたよ。『筋肉の壁(マッスル・ウォール)』が組まれたとき、逃げ場を塞がれたのも、そうなんだろう?」



 首をわずかに上下に揺らすウェナー。



「はい。お察しのとおりです。それでもタクミクン様が勝ち上がったので、より露骨に妨害工作を行ってきました」



「そうだな、『戦闘馬車(チャリオット)戦』でも俺が乗ったやつはことごとく壊れてたからな」



「はい。いずれも全て、ゴルヌイ様からの指示です。そしてきっと、次の決勝戦でも罠を仕掛けているに違いありません」



「まあ、そうだろうな」



「次はゴルヌイ様との直接対決です。きっとゴルヌイ様は、なりふり構わず不正を働くでしょう」



「まあ、そうだろうな……で、お前の本来の目的ってのは、それを俺に教えたかっただけなのか?」



 いままでは、水のみ鳥みたいに頷くことしかしなかったウェナーが、ここにきて初めて首を横に動かした。



「いいえ。タクミクン様、このままお逃げになってください」



「なんだよ……またそれか」



「はい。私はクーレ王女に忠誠を誓っております。そのクーレ様の意志をくみ、タクミ様を再びお迎えにあがったのです。ゴルヌイ様の卑劣な罠にかかる前に、逃げていただきたいのです」



 俺は後ろ頭を掻きながら、巨女メイドの言葉を聞いていた。



「……悪ぃけど、俺は逃げる気はねぇよ。これまでの罠が、ゴルヌイの企みだってわかった今ならなおさらだ」



 罠を仕掛けるようなヤツの前から、逃げ出すわけにはいかねぇ。

 しかし昨晩とは違い、ウェナーはなおも食い下がってくる。



「タクミクン様。私はこれまでにダリス・バンディの王族たちの不正を、いくつも目にしてまいりました。きっと、次は今までのような秘匿したものではなく、確実で、なりふり構わない罠を仕掛けてくるに違いありません」



「そうかぁ? 観客も見てるんだから、あんまりバカなことはしねぇだろ」



「観客たちが、明らかなる不正を前にしても何とも思わないのは……『戦闘馬車(チャリオット)戦』でタクミクン様もおわかりになったのではないですか?」



 そう言われて、俺は思い出す。

 俺のことを「日頃の行いが悪いからそうなるんだ」と罵っていた観客どものことを。



「……まぁ、そうだな」



 つい、苦い顔になっちまった。



「観客の中に狙撃手を潜ませて、タクミクン様の頭を撃ち抜くことくらいはするでしょう。そうなればいくらタクミクン様とはいえ、対応できないのではないですか?」



「うーん……そうかもしれねぇけど……」



「ですから私は、タクミクン様をお迎えにあがったのです。クーレ様は、私にこうおっしゃっていました。『タクミクンが生きていれば、わたしはどうなってもいいから、お願い……!』と。……王女の思いを無駄にしないためにも、お願いします。タクミクン様」



 ウェナーの言葉は、ほんの僅かではあるが……生気のようなものを感じさせた。

 でも……いくら人間の感情を取り戻してもらったところで、俺の考えは変わらねぇ。



「ああ……そうだなぁ……でも、やっぱりいいや。お前とクーレ先……クーレはそう約束したかもしれねぇけど……俺は俺で、優勝して嫁にするって、クーレに約束したんだよ」



 さっきのお返しってわけじゃねぇが……今度は俺が、熱を込めて言った。



「……だから俺は、お前とは行かねぇ。俺がともに行くのは……クーレだけだ」



 俺は決めたんだ。クーレ先生を嫁にするって。

 あの『春の日差し』の笑顔を守るために……!


 かぼちゃワインみたいな、身長差カップルになっちまうかもしれねぇけど……別にいいよな。


 ウェナーは俺の決意を、うつむいたまま聞いている。

 再び顔をあげたヤツの瞳は……ついに人間の心を……と期待したんだが、相変わらずのレイプ目だった。



「……クーレ様が、タクミクン様をお好きになったのが、私なりにわかったような気がします。……かしこまりました。では私はもう、お止めしません」



「悪いな」



「お気になさらず。……では最後に、タクミクン様のお色直しをさせてください」



 特に名残惜しい様子もなく、ウェナーは話題を切り替えてきた。



「なに? お色直しだと?」



「はい。私の立場上は、このお色直しが本来の目的です」



 ウェナーは肩に掛けていたトートバックから、きれいに畳まれたタキシードを取り出しす。



「『結闘の儀』の決勝戦が終わると、表彰式となります。その際、花嫁を賞品授与するとともに、結婚式もあわせて執り行われます。ですので決勝戦の参加者は、タキシードを着て最後の戦いを行う決まりとなっているのです」



「マジかよ……めんどくせぇなあ……」



「その汚れたお召し物で、花嫁の前に出るのはスマートではありません。私も手伝わせていただきますので、お着替えを」



 確かに俺のワイシャツは砂埃にまみれ、薄汚れていた。

 まぁ、結婚式もあるんだったら、着替えてもいいか……。


 ウェナーが俺の服を脱がせようと近づいてきたのだが、俺は手で押しとどめた。

 俺とウェナーじゃ身長差がありすぎて、ピーターラビットの着替えみたいになっちまう。



「あ、いいよ、自分でやる」



 俺はワイシャツを脱いで、上を着替えた。

 下は面倒だったのと、パンツをまじまじと見られるのがイヤだったので着替えなかった。


 最後に上着に袖を通す。



「では仕上げに、この蝶ネクタイをどうぞ」



 黒い紐みたいなのを差し出してくるウェナー。



「あ……俺、蝶ネクタイって付けたことねぇや。お前、付けられるか?」



「はい。かしこまりました」



 俺を見下ろしながら近づいてきたウェナー。

 屈みこんで目線をあせて、まっすぐ見つめながら、俺の首に蝶ネクタイを結ぶ。



「はい、おわりました」



 最後にそう言って、蝶ネクタイのリボンの所を、軽く押す。



 ……チクリ。



 俺の喉元に、鋭い痛みが走った。

 何の痛みだ? と思う間もなく、視界が霞む。



「な……なんだ……?」



「……蝶ネクタイのなかに、毒針を仕込ませていただきました。もうすぐあなた様のお身体は、自分の意志では指一本動かすこともかなわない、棒立ちのカカシになります」



「な……なんだとっ……!?」



「でも、ご安心ください。この毒では死には至りません。なぜならば、ここで死なれてしまうと、ゴルヌイ様の大切な見せ場がなくなってしまいますから」



「なるほど……そういうことか……!」



「はい。あなた様は、戦うことも、逃げることもできないまま、ゴルヌイ様になぶり殺しにされるのです……。これが、ゴルヌイ様が仕掛けた、最後の罠……。いかがですか? いくらあなた様でも、予想できなかったのではないですか?」



「ああ、たしかに……! 確実で、なりふり構わない罠、だな……! 今までお前が言ったことは、全部ウソだったってわけか……!」



「はい。でも、一部は本当ですよ? ゴルヌイ様の不正は事実ですし、ゴルヌイ様の工作隊も、たしかにタクミクン様のお部屋に入ってきました。といっても、私のことですが……」



「……そうか……たいしたもんだ……! 俺も最初は疑ってたんだが……途中から、すっかり信じちまったよ……!」



「ウソに真実味をもたせるには、ほんの少しの事実を混ぜる……それがコツです。冥土へのお土産として、どうぞお持ちになってください」



 仲良しのカカシが向かい合っているかのような、俺とウェナー。

 しかしふたりの間を引き裂くように……俺の足元がせりあがっていった。

次回、決勝戦、開始…!


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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★新作小説
ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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