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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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24 結闘の儀、2回戦決着

『ああっと!? ゴングが鳴って間もないというのに、大きく局面が動きましたぁーっ! なんと、タクミクン軍の兵士たちみんなが反旗を翻し、スバロル軍につきましたっ! これでタクミクンはひとりっきり! さっそく味方からやぐらを揺らされ、襲撃を受けていますっ! タクミクン、大ピンチですっ!』



 実況の言うとおり、俺は開幕から王手をかけられていた。


 将棋でいうなら、初手でまわりの駒がぜんぶ、180度回転したような状況……!

 どんなに強い王将だったとしても、完全に詰んでいる状態……!


 俺にあてがわれた兵士たちは、スバロルのかけ声にあわせてやぐらを倒そうとしている。

 その頂上にいる俺は、地震を疑似体験できる車の中にいるみたいに、立つこともままならねぇ。


 ど……どうすりゃいいんだ……コレ……!?


 なんて迷ってるうちに、足元から「倒れるぞーっ!」と声がした。

 直後、メキメキとへし折れる音とともに、視界が45度に傾いていく。


 このままじゃ……倒れる木のウロで昼寝してた、間抜けなリスみてぇになっちまうぞ……!


 俺はタイミングを見計らって、やぐらの外へと飛び出す。

 プールの飛び込み台から水面に突っ込むみたいにして、天井のない家に入りこむ。

 部屋の床上を転がって、受け身をとった。



「敵軍の大将は、街の中に逃げ込みおったぞ! 三人ひと組となり、北軍と南軍で挟み撃ちにするんだっ!」



「おおーっ!!」



 俺のいる家の、前方と後方から野太い声がする。

 どうやら俺の部下たちは、南軍にされちまったようだ。


 でも、この中東の紛争地域みてぇな街があって助かった。

 いっぺんに相手にするとしても、120人は多すぎるからな。


 しかしこんな狭い場所じゃ、お得意の『マリオネット・ダンシング』が使えねぇんだよな……。

 こうなったら、ゲリラ戦しかねぇか……ちょっと骨が折れるが、個別撃破してやるとするか。


 俺は出たとこ勝負の作戦を決めると、家の壁に手をかける。


 俺の右手のグローブには、魔法猫であるディスペルシャのヒゲが織り込んである。

 これは魔法攻撃を跳ね返せる他に、壁に張り付くこともできるんだ。


 両手が縛られてるから、ちょっとやり辛いが……俺はデブ猫みたいな不器用さで、なんとか壁を這いあがって、ヘリの上にのぼる。


 俺が着地したのは、家の二階の部屋だった。

 しかも仮設とはいえ高原族(ハイランド)サイズだから、かなり高い。


 下のほうに目を向けると……そこは大通りっぽい所だった。

 俺を探しているのか、ちょうど三人の兵士たちが家の前を通り過ぎようとしている。


 俺は暗殺者のように飛んだ。



『ああっ!? タクミクンが家の二階から姿を現しましたっ! そしてすぐさま、獲物に襲いかかる鷹のように飛び降ります! いっ!? 一瞬にして、下にいる三人の兵士を倒しましたっ!? タクミクンよりずっと大柄で、武器を持った男たちを……小柄で、しかも素手のタクミクンが……! あっ! 走り去って、家の一階へと消えていきます!!』



 俺が家の中に駆け込むと、室内で三人の兵士と鉢合わせしたので、ツボを突きつつ外に放りだしてやった。



『続けざまに、家の中から三人の兵士たちが転がり出てきました! またしても一瞬にして、タクミクンにやられたようです! 家の外では六人の男が積み重なっており、山のようになっておりますっ!!』



 実況がジャマだな……こっちの位置をバラしてるようなもんじゃねぇか……!


 俺は苦々しく思いながら、大通りとは反対側の扉から家を出る。

 その先は大通りほどではないが、広めの通路だった。


 道の北側には新手がいて、「見つけたぞぉぉぉっ!!」とロングソードと盾を手に手に走ってくる。


 スバロルが指示していたとおり、ちゃんと三人ひと組だ。

 しかし、どいつもこいつも2メートル以上あるから、ロングソードもショートソードみてぇだなぁ……しかも盾持ちかよ……面倒くせぇなぁ。


 相手にするなら、デカくて重い両手武器を持ってるヤツのほうが楽なんだよな。簡単にかわせるし、スキもデカいから近づきやすいし。

 片手武器だとかわすのがちょっと厄介だし、盾があるとこっちの攻撃も1ステップ増えるし、ロクなことがねぇんだ。


 俺は心の中で愚痴をこぼしながら、女々しい盾持ち野郎どもを迎え撃つ。



『兵士はタクミクンを取り囲みました! 対するタクミクンは……踊るように回りながら、縛られた手を一閃っ! ああっ!? 兵士たちの盾が、まるでシャンパンの栓のように空高く舞い上がりましたっ!? いったい何をやったのでしょうか!? タクミクンは、さらにもう一回転……! 兵士たちは催眠術にでもかかったかのように、次々と崩れ落ちていきますっ!!』



 バックスクリーンに映し出されている俺の姿を指差し、口々に叫ぶ観客たち。

 そういや俺の戦いをマトモに見せるのは、これが初めてだったんだよな。



「なっ……なんだありゃっ!?」



「殴っても斬ってもいねぇのに、倒しちまったぞっ!?」



「なんで倒せるんだよっ!? タクミクンは素手で、しかも縛られてるんだぞっ!?」



「もしかしてタクミクンは、魔法を使ってるのか……!?」



「あんな激しく動きながら、魔法なんか使えるかよっ! 全然詠唱もしてねぇし、魔力反応があったらすぐわかるはずだぞっ!?」



 やぐらで見下ろしていたスバロルも、我が目を疑うように腕でゴシゴシこすっている。



「め……面妖な……まさか毒かっ!? そうだ……そうに違いないっ! なんという悪辣な男なりっ! 毒を使うなど、戦士の風上にもおけぬヤツよ! ……あっ! タクミクンが走り出したぞっ!? 大通りのほうに向かっている! 全軍、大通りに向かえーっ!!」



 俺はやぐらに陣取っているスバロルを見て、いい手を思いついていたんだ。

 わざとスバロウにわかるように、見えやすいルートで大通りへと戻る。

 観衆から、「毒なんて卑怯だぞーっ!」と罵声を浴びなら。


 大通りに出ると、北と南に軍勢が集結しているところだった。


 北に見えるは、世紀末の荒野にでもいそうな野盗っぽい集団。そして奥には、スバロルのいるやぐら。

 南に見えるは、新世紀のディストピアにでもいそうな自警団っぽい集団。そして奥には、かつて俺がいたやぐらの残骸。


 役者が全員揃うまで、俺は待つ。

 ちょっとハデに動くつもりだったので、靴をトントンやって履き直す。


 しばらくすると、街じゅうに散っていた兵士たちが集まってきた。



「よぉしっ……今こそ決戦の時! 筋肉の壁(マッスル・ウォール)を組めいっ!!」



 スバロルの号令を受け、兵士たちは大通りを埋め尽くすように横一列に並ぶ。

 その後ろから別の兵士が乗っかり、肩車をする。さらにその上に兵士が乗って、三段重ねの兵士たちができあがった。


 6メートルほどの高さをつくりあげた、むくつけき男ども。

 その様はまさに、筋肉の壁(マッスル・ウォール)……!



『おおっ! スバロル様の策略によって、大通りに誘い込まれてしまったタクミクン! 筋肉の壁(マッスル・ウォール)の餌食になろうとしています! この、相手を圧殺する壁から逃れた者は、いまだかつていませんっ!』



 ツッコミどころの多い実況だ。

 俺は誘い込まれたわけじゃなくて、こっちが誘い込んでやったつもりだったんだが……。


 それに……筋肉の壁(マッスル・ウォール)ってのは、北と南から突進して、真ん中にいる俺を挟み潰すやりかたなのか?


 たしかにこの大通りには横道はねぇが……家の中に逃げ込めばいいだけなんじゃねぇか?


 と思っていたら、



 ……バタン! バタン、バタンッ!!



 まるで賊がやってきた西部の街みてぇに、扉や窓が閉まりだしたんだ。

 中には誰もいねぇはずなのに、勝手に……!



『おおっとぉ!? タクミクンにとって最悪のタイミングで、家の扉も閉まってしまいました! この指揮官戦の市街では、膠着状態を防ぐために様々な仕掛けが施されています! 扉が一定のタイミングで自動開閉するのもそのひとつですっ!!』



 ……ええ~っ……ウソだろ……。

 タイミング良すぎねぇか……? 

 絶対、裏で操作してるだろ……。



『これで完全に、タクミクンは逃げ場がなくなってしまいましたっ! 残された逃げ場は地面を掘って土に潜るか、空を飛ぶしかありませんっ!』



「よぉし……タクミクンは、袋のネズミ……! 我ら高原族(ハイランド)だけが持つ、(はがね)の筋肉の味……とくと味あわせてやれいっ!!」



 バッと勇ましく、手をかざすスバロル。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」



 雄叫びとともに、前後から迫ってくる筋肉の壁(マッスル・ウォール)


 なんか……だいぶ予定が狂っちまったな……。

 俺は高波のように迫りくる壁を眺めながら、頭をポリポリ掻いていた。


 まぁ、いいか……と思いつつヒザを折り、ふくらはぎのツボを突く。



「……おい、見ろよ! タクミクン、しゃがみこんじまったぜ!」



「どうやら観念して、命乞いでもはじめるつもりだぜ!」



「でもいまさら遅せえよっ! そのまま潰されて死んじまえっ!」



「潰せっ! 潰せっ! 潰せーっ!」



 闘技場を支配する、潰せコール。

 闘牛場から逃げ出し、街で暴れる牛どもみてぇな足音と振動が、重低音となって押し寄せてくる。


 前から後ろからのサラウンド。

 こんないたいけな少年相手に、豪勢なもてなしだ。


 じゃあ、それには応えなきゃな……!

 俺は勢いよく地を蹴った。



『ついにタクミクンが、最期の時を迎え……てぇっ!?』



 実況者の声が途切れる。あんぐりと口を開けた顔が想像できるようだ。

 俺は高みから、街を見下ろしていた。観客席も目に入る。



「と……飛んで……る……!?」



 誰もがあんぐりと口を開け、マヌケヅラで俺を見上げていた。


 俺は、脚力を向上させる『ストライダー』のツボを突いていた。

 これを使えば、10メートルはジャンプできるようになるんだ。



『こ……これは……! 後方伸身、二回宙返り、三回ひねり……! ま……まさか……こんな血なまぐさい場所で、あんなに華麗な体技が見れるだなんて……! す……素敵っ……! 素敵ですっ……!』



 実況も見とれるほどに、優雅に空を泳ぐ俺の眼下で……肉の壁が激突する。



 ドッ……ガァァァァァァァァァ……ンッ……!



 肉を貫き、骨どうしがぶつかりあう。

 その衝撃はすさまじく、爆撃を受けたように吹っ飛ぶ兵士たち。


 街の真ん中で繰り広げられている惨状を横目に、俺は敵軍のやぐらの根元に着地した。

 そしてちょっと残念な気分になる。



「……ああ、せっかくお前らにはボスを倒すところを見せたかったのに……まあ、いいか」



 大通りはちょっと前まで、男6人が折り重なってできた小山だけだったのに……今では120人分の大山ができあがっちまってる。

 どいつも死んじゃいねぇと思うが、まるで地獄でうち捨てられてる亡者の山みてぇだ。



「な……なんたることだ……! 我が軍……いや、我が国でも最強の布陣である、筋肉の壁(マッスル・ウォール)が破られるなんて……!?」



 俺の頭上では、身を乗り出してワナワナしてる大将がいる。

 残るはコイツだけか。



「こ、こうなったら、ワシ自らが出て、決着を……!」



「あー、いいよ別に。オッサンはそこにいてくれ、もう終わるから」



 俺はやぐらから降りようとしているスバロルを、声で押しとどめながら……やぐらの支柱をコツンと突いた。

 直後、太い柱にミシミシとヒビが入っていく。


 ……ツボがあるのは、人間だけじゃねぇ。

 衣服にもあるように、万物すべてに存在する。


 ソイツを突いてやりゃ……デカブツが大勢集まって、うんとこしょ、どっこいしょ、なんてやらなくてもいいんだ。



「……倒れるぞーっ」



 って言っても、誰もいねぇか。



 ……ズズーーーンッ!!



 俺が序盤にやられたみたいに、やぐらは倒壊。

 その頂上にいたスバロルは、どうなったかというと……マンガみたいに大の字になって、大通りの地面に埋まっていた。

次回、『結闘の儀』準決勝!

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