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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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23 結闘の儀、2回戦…vs最強軍師スバロル

 俺は控室で、次の出番が来るのを待っていた。

 控室は思ってたよりずっとキレイで、食い物や飲み物もふんだんにある。しかも個室だ。


 俺が考えていた控室というのは、晒し者の牢屋みたいなイメージだった。

 往来に面していて、クソガキから格子越しに石を投げ込まれるようなのを想像してたんだ。


 でもまあ、参加者は奴隷じゃなくて……どいつも名のあるヤツみたいだから当たり前か。

 見た目はDQNにしか見えねぇんだが、王族とか貴族とか軍人とかだ。


 そのチンピラどもの戦いの様子は、控室の白い壁に映し出されている、真写によってリアルタイムで見ることができる。

 一回戦はタイマン勝負だったんだが、二回戦目はどうやら複数での対決のようだ。


 『指揮官戦』と呼ばれる方式らしい。二名の参加者にはそれぞれ三人ずつ、剣闘士が部下としてつくというもの。

 参加者はリーダーとなって部下を指示し、相手リーダーを殺したほうが勝ちというルールだ。


 より死体が多く出る勝負なので人気らしいんだが、会場はイマイチ盛り上がっていなかった。

 実況は過激に煽りたてて盛り上げようとしているのだが、観客たちは、



「さっさと終わらせろーっ!」



「そうだ! それよりもタクミクンだ!」



「早く、タクミクンを出せぇぇぇっーっ!」



「アイツがブチ殺されるのが、一番見てぇんだっ!」



「そうだそうだ! ひっこめーっ!」



 俺についてのヤジばかり飛ばしている。

 ふふ……人気者はつらいなぁ、と思っていると、



『か……観客の皆様のご要望にお応えし、タクミクンの出番までは競技時間の短縮を行います! 四対四の指揮官戦から、一対一の対決形式に切り替えます!』



 と実況が入った。

 ウオオオオオ! と諸手をあげ、快哉を叫ぶ観客たち。


 俺は焦った。

 よ……余計なことすんなよ……! せっかくのんびり昼メシでも食おうかと思ってたのに……!


 やはりこの闘技場は、王族が全権を持っているとはいえ……意思決定においては観客の反応に左右されるようだ。


 そして観客が欲しているものは、いいヤツよりも、悪いヤツ……。

 庶民の味方が活躍する姿よりも、憎たらしい悪役が殺される姿こそが、望まれているモノなんだ……。


 俺は一回戦で王族の命令を無視して、ガルトゥスを殺さなかった。

 でもこうしてのうのうとしていられるのが、何よりの証拠だ……。


 ……なんてことを考えていると、昼飯を食う間もなく俺の出番がやって来ちまった。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 二回戦目は『指揮官戦』。


 天井がなく、壁も崩れかけているような建物が立ち並ぶ、映画のセットみたいなのが闘技場の中に作られていた。

 おそらく、戦火にさらされている街をモチーフにしているんだろう。


 やる事はタダの殺し合いだってのに、かなり手が込んでいる。

 本当に古代ローマの闘技場みたいだ。そのうち水を張って、海戦とかも始めるんじゃなかろうか。


 ……俺は街を一望できるやぐらの上で、そんなことを考えていた。


 対面のかなり離れた場所には、同じようなやぐらが建っている。

 中には対戦相手であろうオヤジがいて、視線で殺さんばかりの形相で俺を睨みつけていた。



『さあっ、第二回戦、最後の戦い! スバロル選手とタクミクン選手がいま、司令塔にあがりました! スバロル選手はダリスきっての兵法のプロフェッショナル! 部下の使い方が戦況を大きく左右する指揮官戦において、彼にかなうものはいないでしょう!』



 実況の紹介を受け、スバロルはやぐらの上から手を振って観客に応えた。


 ひとつ前の対戦相手であるガルトゥスは、羽根かざりの肩当てだったが……スバロルは蜘蛛みたいな肩当てをしている。

 上半身はそれ以外何も身につけておらず、当然のように裸。



「おおっ! スバロル様! あなただけが頼りだ! どうか、タクミクンをブッ殺してくれぇ!」



「部下たちと一緒に、串刺しにしたタクミンクンの身体を、天に捧げてくれよ!」



「縛り首にして、街中を引きずり回してやってくれぇ!」



 よくそんなに残虐行為がポンポン出てくるな……と俺は呆れを通り越して感心する。



『対するタクミクン選手は、クーレ王女への夜這いで新聞の一面をかざった大悪人! しかも王族への不徳は、それだけにとどまりません! 一回戦ではなんと、王族の殺害指示を無視したのです! これによって王族……指示を出したゴルヌイ王子の面目は丸つぶれとなりました! タクミクンは、まさに国家に反逆する極悪人なのです!』



「ふてえやろうだ! 死ねっ、タクミクン!」



「ここがテメエの墓場だぁっ!」



「俺たち高原族(ハイランド)を敵に回したらどうなるか、思い知れぇ!」



 やぐらの手すりに腰かけている俺は、手をヒラヒラやって観客の罵声に応える。


 そういや今更ながらだけど……なんで俺、タクミクンって呼ばれてるんだ?

 『タクミクン選手』って呼ばれてることを考えると、『タクミクン』がフルネームだと思われてるのか。


 うーん、推理するに……俺のことを尋ねられたクーレ先生が、『タクミくん』って答えたんだろうなぁ……。

 訂正してやってもいいんだか、なんだか面白かったので、俺はそのままにしておくことにした。



『さあっ、続いて剣闘士たちが入場し、各リーダーの元につきます!』



 実況の言葉を受け、俺はやぐらの下を覗き込む。

 するとやぐらの根元には、武器を手にした高原族(ハイランド)の男たちが、数えきれないほどいた。


 あれ? たしか他のヤツらの指揮官戦のときは、部下は三人くらいだったはずだが……やけに多くねぇか?



『競技時間短縮のために、途中で一対一の戦いとなりましたが……それで出番のなくなった剣闘士たち全員、この戦いに参加してもらうことになりました! その数……両軍あわせて百二十名! 中隊規模となったのです!』



 おおおーーーっ!! と湧く観客たち。



『指揮官戦において、これほどまで大勢の規模になったのは、闘技史上初めてのことですっ! これはまさに……戦争だぁぁぁっ!!』



 うおおおおおーーーーーーーーーっ!!! とさらに沸き立つ観客たち。



『兵法のプロフェッショナル対、大悪人……! 結果はやる前から明らかかもしれませんっ! ですが見てみたいのは……その火をみるよりも明らかな結果なのです!! では……約束された未来に向かって……第二回戦最終戦、スタートですっ!!』



 ……ゴオォォォォォォーーーーーーーーーンッ!!!



 こんな血なまぐさい場所には似合わない、厳粛な鐘の音が響く。


 ……ああ、またよくわかんねぇうちに始まっちまった。

 俺は中隊の指揮なんて、したことねぇぞ……と思っていたら、やぐら上のスバロルが身を乗り出し、大きな声で叫びだした。



「聞こえるかっ!! 兵士諸君っ!!」



 てっきり自軍の兵士に呼びかけているのかと思ったら違った。

 俺んとこの兵士に向かって何か言っている。



「そなたらは何だっ!? 何よりも誇り高い、高原族(ハイランド)の兵士ではないのかっ!? それなのになぜ、胸板もない平地族(グランドラ)の君主などに従属するっ!?」



 もしかしてコイツ……俺の兵士を寝返らせようとしてんのか?

 でも呼びかけられた兵士たちは「いや、だって好きで従属してるわけじゃなくて、割り当てられただけだし……」みたいな顔をしている。



「他種族に屈しないのが、我ら高原族(ハイランド)の誇りではなかったのかっ!? 誇りを思い出せっ!! ……我らの力は(ルーセイル)()すべてを捻じ伏せるっ(オーランダール)! 我らの筋肉は(ルーエラン)()すべてを跳ね除けるっ(オーミュータル)!」



 スバロルはやぐらから落ちんばかりに、太い腕を振って叫ぶ。

 つられてスバロルの部下たちも、負けじと腕を振り上げはじめた。



我らの力は(ルーセイル)()すべてを捻じ伏せるっ(オーランダール)!! 我らの筋肉は(ルーエラン)()すべてを跳ね除けるっ(オーミュータル)!! 我らの力は(ルーセイル)()すべてを捻じ伏せるっ(オーランダール)!! 我らの筋肉は(ルーエラン)()すべてを跳ね除けるっ(オーミュータル)!!」



 勇猛なかけ声が、プレッシャーとなって前から迫ってくる。

 どうやらこれは高原族(ハイランド)特有の、戦い前のかけ声のようだ。


 きっと幼い頃から耳にしていて、アイデンティティを刺激する内容に違いない。

 こ……こりゃ、やべえんじゃねぇか……!? と思っていたら、



「……我らの力は(ルーセイル)()すべてを捻じ伏せるっ(オーランダール)!!! 我らの筋肉は(ルーエラン)()すべてを跳ね除けるっ(オーミュータル)!!! 我らの力は(ルーセイル)()すべてを捻じ伏せるっ(オーランダール)!!! 我らの筋肉は(ルーエラン)()すべてを跳ね除けるっ(オーミュータル)!!!」



 足元からも、蛮声が突き上げてきた。

 見ると、俺の部下たちも腕をブンブン振っている。


 いや、それどころじゃねぇ……観客じゅうの野郎どもも立ち上がり、まるで国歌の斉唱でもしてるみてぇに、変な呪文を唱えてやがる……!!


 しばしの合唱のあと、スバロルは「よぉぉぉぉぉしっ!!」と感極まったような声を出した。

 なぜか滝のように涙を流し、男泣きしている。



「き……貴殿らはやはり、紛うことなき高原族(ハイランド)……!! 誇り高き魂は、失われてはいないようだ……!! 我が軍は、貴殿らを歓迎するっ!! さあっ、そなたらを惑わした、悪しき平地族(グランドラ)の君主を、血祭りにあげようではないかっ……!!!」



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」



 ぴったりと揃った動きで、鬨の声をあげるスバロル、敵軍の兵士、観客……!

 そして……ほんの一瞬だけ俺の部下だった、いまは敵に寝返った兵士たち……!


 その声は、割れたスピーカーみたいに空気をビリビリと震わせ……俺のいるやぐらを、地震のようにドドドドドド……! と震わせた。


 しまった……! と思う他ない、鮮やかな調略戦術……!

 俺はまだ何にもしてねぇってのに、開幕とほぼ同時に敵軍に囲まれるという、大ピンチに陥ってしまった……!

次回、タクミvs121人の軍勢!

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