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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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15 取ってこいキス

 あたりは静寂に包まれていた。


 俺のいるステージのまわりには、何十万という人が囲んでいるというのに……誰もが押し黙っている。

 それどころか、衣擦れの音すらもさせずにいた。


 だが、ステージの一番近くで腰を抜かしていた少女が、ボソリつぶやいたことで……世界は少しずつ音を取り戻していく。



「……な……なに……あの人……?」



「神獣の攻撃を、片手で止めたよ……?」



「あの人の身体の何倍もある、隕石みたいにでっかいゲンコツを、受け止めるなんて……?」



「絶対にぺちゃんこになっちゃうはずなのに、どうやったの……?」



「それだけじゃないよ! お城を粉々にしちゃうような雷……その何倍もすごいヤツを、受け止めたんだよ!?」



「それも、軽々と……まるでペットをあやすみたいに……!」



「あの人にとっては、神獣もペットでしかないの!?」



「ま……魔法みたい……でも、魔法じゃないよね?」



「そんな魔法あってたまるかよ! 攻城兵器を片手で止める魔法なんて……この世のどこにもないよ!」



「それに、見た!? 一瞬で、みんな裸にしちゃったよ!?」



「スジリエ様だけじゃなく、両親のツルリエ様やピッツボー様まで……!」



「しかも、隣国のペタリエ様やロロリエ様もだよ……!?」



「王族の人たちがみんな揃って、神獣憑依までして、全力で抵抗したのに……!」



「あの人の前では……赤ちゃんみたいに、あしらわれちゃった……!」



平地族(グランドラ)の人って、あんなに強いの!?」



「ううん、平地族(グランドラ)だからじゃない……あの人が特別なんだよ!」



「わ……わたし……認める! あの人のこと!」



「ええっ、アンタ、異種族の王なんて、絶対反対って言ってたじゃない!」



「だって、見たでしょ!? あんなにすごい攻撃を受けたのに、なんともないんだよ!? それに誰も傷つけずに、戴冠式を成功させたんだよ!?」



「そうだ……よく考えたら、誰も傷ついていない……!」



「ケガはつきものの戴冠式なのに、ケガひとつなく終わらせるだなんて……!」



「圧倒的な強さなのに、それを使わずに、相手を無力化した……!」



「しかも、武器も魔法も使わず、身ひとつで……!」



「す……すごい! 本当にすごいお方だ! あのお方こそ、異種族最初の王にふさわしいっ!!」



「わたしも! タクミ様になら飼われたい!」



「タクミ様っ! 我らが偉大なる国王、タクミさまぁーーーっ!!」



「タクミ様っ! タクミ様っ! タクミ様っ!!!」



『タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!! タクミ様っ!!!』



 喝采とともに巻き起こる、タクミコール。

 空が震え、大地が揺れるほどの歓声が、俺を包む。


 この魂をゆさぶられるような鬨の声は、観客席からだけじゃない。

 きっと遠くにいる国民たちも、同じように快哉をあげてるんだろう。


 まるで国民がひとつとなって、世界中から名前を呼ばれているようだった。



『あっ……! あまりの出来事の連続に、つい、実況を忘れておりましたが……戴冠式は、成功となりましたぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!』



 思い出したかのように、実況が割り込んでくる。



『しかもハイラウト王国の王女、スジリエ様だけでなく、女王のツルリエ様と、ピッツボー様まで剥いてしまいました!! しかもしかも、ハイヴァスト王国の女王ペタリエ様と、王女のロロリエ様まで……!! つまりタクミ様は、王族すべてをペットにしてしまったのです……!! これはどういうことかというと……両国の国王に、同時に即位されたことを意味します……!!』



 俺は「えっ」となった。



『これはかつてない、歴史的快挙!! 長きにわたって姉妹であった国家を、ひとつに束ねる国王の誕生です……!! 天上をごらんください!! 隣国のハイヴァスト王国の民たちも、湧きに湧いておりますっ!!』



 俺は顔をあげて、空を見やる。

 夜空一面に映し出された天空真写には、手を取り合って喜ぶハイヴァスト王国の国民たちの姿があった。



「……タクミ様……」



 ふと、足元から声がする。

 視線を落とすと、一糸まとわぬ姿のままで四つん這いになる、五人の幼女(うちひとりは幼児)の姿があった。


 皆、瞳のなかにハートが見えるほどのうっとりした顔で、俺を見上げている。

 身体だけでなく、まるで心までペットになってしまったかのように……俺の靴や太ももに頬ずりしていた。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 ハイラウト王国の女王ツルリエと、ハイヴァスト王国の女王ペタリエ。

 最高権力者だけあって、ふたりとも飼い主はいなかったらしい。


 俺はそんなふたりをペットにしちまったので、図らずとも、ふたつの国の王になってしまった。


 でも、今すぐに国王になるのだけは辞退させてもらった。

 俺はまだまだ未熟で、人の上に立てるような人間じゃねぇからな。


 王国の体制はいままでと変わらないようにして、俺が一人前の男になるまで待ってもらうことにしたんだ。


 ただ、異種族の飼い主を容認するようにと、ペタリエには言っておいた。

 あれほど反対していたペタリエだったが、ペットになったあとは二つ返事で承諾してくれた。


 そしてスジリエは……正式に俺の嫁となった。

 それとロロリエも……正式に俺の嫁となった。


 最初の予定より、嫁がひとり増えちまったけど……まぁいいか。


 それで俺はいま、何をしてるかっていうと……王城の寝室にある、薄明かりのベッドのうえで、スジリエとロロリエと話をしていた。

 ふたりともステージ上では全裸だったが、いまはネグリジェを着ている。



「……ほら、見て見てタクミさま、これがアタイのアザだよ!」



 俺の左側で女の子座りをしているロロリエは、俺の腕に新たにできたアザを指さしていた。

 スジリエとツルリエのアザは右腕にあるんだが、ロロリエとペタリエのアザは対称的に左腕にできている。


 ……いつの間にか、俺の腕には九人分ものアザができちまった。


 まったく……前世では女の子と手も繋いだことのなかった俺が、キスなんてのはとっくに通り越して、嫁どころか、いまやペットだの何だのって……いったいどうしちまったんだろうな……。


 なんて、しみじみしたものを感じていると……ロロリエはどこからか持ってきた、鳥のぬいぐるみを咥えていた。

 猫みたいに瞳を丸々とさせながら、俺のヒザの上にポトリと落とす。



「タクミさま、『取ってこい遊び』したーい!」



 無邪気な笑顔でせがんでくるロロリエ。



「……『取ってこい遊び』って、あの犬とかがよくやるやつか?」



「うんっ! したーい! したいしたーい!」



 それまで、俺の右隣で大人しく正座していたスジリエが口を挟んでくる。



「まあっ、ロロリエ、いい加減になさい。タクミ様はお式でお疲れなんですよ」



「ああ、スジリエ、別に構わねぇよ、これを投げればいいんだな?」



 俺はスジリエをなだめてから、鳥のぬいぐるみをポイと放りなげた。



「わぁーいっ!!」



 ロロリエは大喜びしながら、四つ足で脱兎のごとく駆け出す。

 部屋の隅に転がっていたぬいぐるみを、はぐっと咥えてから戻ってきて、再び俺の手の上に置いた。


 「えらいでしょー!? 撫でて撫でてー!」と頭をこすりつけてきたので、乱れた髪を直してやるついでに、よしよしと撫でつけてやる。


 「んふふふふふー!」と満足そうなロロリエ。

 何がそんなにイイのかわからねぇが……まぁ、楽しそうだからいいか。


 それから何度か、ぬいぐるみを投げ、取ってきたら撫でる、というのを繰り返していると、



「ず……ずるいです、ロロリエ……」



 羨むような、悔やむような囁きが耳に入った。


 声の主は、他ならぬスジリエだ。

 見ると……楽しみにとっておいた好物を、「残すならちょうだい」と誰かに取られてしまったかのような、悲しい顔をしていた。


 ……もしかして、スジリエも遊びたいんだろうか?



「スジリエ、お前もするか?」



 誘ってみると、スジリエは好物が二倍になって戻ってきたかのように、パッと顔を明るくしたが、



「はっ、はい……! あっ……い、いいえ……わたくしは結構です……」



 小さな胸に当てた手を、ギュッと握りしめ……自分の思いを押し込めるように、ふるふると首を左右に振った。


 俺はベッドの上に垂れていた、スジリエの首輪の鎖を掴むと、ぐい、と引き寄せる。



「きゃっ!?」



 俺の胸に飛び込んできたところを、抱きとめてやる。



「なあ……お前は俺のペットかもしれねぇが、俺の嫁でもあるだろ……旦那に遠慮するなんて、変じゃねぇか? 俺にできることだったら、何でも付き合ってやるから、少しはワガママ言えよ」



 優等生らしいセミロングの髪を、やさしく撫でてやった。


 しかし、まだ慎みが残っているようで……俺の機嫌を伺うような、ひそやかな上目遣いをする幼妻。

 ちょっとウルッときている瞳に、俺の顔を映している。



「ほ……本当に……よろしいのですか? わ……わたくし……実を申しますと、タクミ様と『取ってこい遊び』をするのが、夢だったのです……」



「それをロロリエに先にやられて、悔しかったんだな」



「は……はい……、でも、ペット失格ですよね……飼い主様に気を使わせてしまうだなんて……」



「失格なもんか、お前は俺にとって、最高のペットだ。なんたって、俺を王様にしてくれたんだからな。……スジリエ……お前はえらい、えらいぞ! よしよし!」



 切り揃えられた髪をメチャクチャにするみたいに、わしゃわしゃっと撫でてやる。



「ああっ……! た……タクミ様……タクミ様っ!」



 すると、もっとしてほしそうに、俺の手に頭を押し付けてくるスジリエ。



「わたくしは……タクミ様のペットになれて……本当に……本当に幸せです……!」



 吐息がかかるほどの距離で、銀河のような瞳を向けてくる。


 あまりの健気さと、あまりの美しさに……俺はたまらなくなってしまう。

 手にした鎖をさらにぐいと引き、あどけない顔を引き寄せる。



「タクミ様っ……!? ん……!」



 唇を奪われて、驚いたように目を見開くスジリエ。

 でも抵抗することはせず、俺に身体をあずけてきた。



「ああーっ、ずるーい! アタイにもしてーっ!」



 ロロリエが割り込んできたので、ぷはっ、と口を離して、



「ずるいずるい! スジリエばっかりんんんっ……!?」



 続けざまに、唇でロロリエを黙らせる。


 俺はふたりの嫁からキスを求められ続けて、呼吸困難になりそうだった。

 そこで俺は……ぬいぐるみを投げて、ひとりが取りに行ってる間に、もうひとりとキスをする方法を思いついた。


 スジリエとキスをしている間は、ロロリエがぬいぐるみを取りに行き、取ってこれたらロロリエにご褒美のキス……をしながら、ぬいぐるみを投げ、スジリエがそれを取りに行く。


 なんだかすごく変な遊びだが、ふたりともドッグランに来た犬みたいに楽しそうにしていたので……まぁいいか、と思った。

スジリエ編はこれにて終了です。

次はどうするかまだ考えてないので、ネタを思いついたら書きます。

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