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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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10 実は男の娘の国

 謁見場は岩山の頂上にあり、壁がなくて全方位を見渡せる作りになっていた。

 この国の統治者は、ここから民の暮らしを見下ろすんだろう……乾いた風が吹き抜けていて、なんだか心身ともに気持ちのいい空間だ。


 カツカツと足音を鳴らしながら、奥からやって来たのは……ひときわ豪華なドレスに身を包んだ女の子だった。



「あなたがタクミさんですね。お話は、スジリエから聞いておりますわ」



 顔がスジリエにソックリだったから、双子のお姉さんかな? と思っていたら、



「わたくしの母、ツルリエです」



 と足元から声がした。


 ええっ!? スジリエのお母さん……!? と内心驚いたが、よく考えたら地底族(ロウキャス)って、歳をとっても見た目は子供のままで変わらないんだっけ……。


 ツルリエさんはペットを連れていた。地底族(ロウキャス)の女の子だ。

 ショートカットでボーイッシュなんだけど……肌の露出が多めの、大胆なミニスカドレスを着ている。


 ドレスを着ているのに四つん這いなので、違和感はスジリエの比じゃない。



「母に飼われているのがわたくしの父、ピッツボーです」



 スジリエの一言に、俺は聞き間違いかな? と思った。



「えっ……お父さん? 女の子にしか見えないけど……」



 失礼を承知で、俺は聞き返す。

 ピッツボーと呼ばれたペットの子は、恥ずかしそうに顔を伏せる。


 俺の疑問に答えてくれたのは、スジリエではなくてツルリエさんだった。



「ああ、タクミ様はたしか、異世界人なのですよね。なら、ご存知ないのも無理はありませんね……我ら地底族(ロウキャス)は、男も女も、どちらも女の子に見えるのです」



 えっ……!? と俺が面食らっていると、すかさずスジリエからのフォローが入る。



「見分けるコツとしては、服装ですね。不確かではありますが、男の子は男の子っぽい格好をしております。確実に見分けたければ、自分の呼び方……我が国の法律として、男の子は自分のことを『ボク』、女の子は自分のことを『わたし』と呼ばなくてはいけない決まりがありますので、そちらで判別可能です」



「そ……そうなんだ……どうりで……」



 俺は他愛ない相槌を返すだけで精一杯だった。


 ダメだ……この国の常識は、俺の予想を遥かに越えてくる……!

 理解が完全に、周回遅れしてやがる……!


 でも、ようやくわかったぞ……街中で男の子の姿を見かけなかったのは、そういう理由だったのか……!

 男の子がいないんじゃなくて、女の子にしか見えない男の子……すなわち男の娘しかいなかったってワケか……!


 いったいどんな国……いや、どんな種族なんだよ……!?


 俺は、街を歩いてようやく取り戻したはずの正気が、音をたてて揺らぐのを感じていた。



「さぁ、ピッツボー、お客様にご挨拶なさい」



 ツルリエさんは手にした鎖を、ぐいと引っ張りあげる。

 それはけっこう力いっぱいで、ピッツボーさんは、照れ顔を無理矢理上げさせられていた。



「……やっ、やあ……ボクがスジリエの父、ピッツボーだよ。む、娘が……世話になってるそうだね……」



 ピッツボーさんは、犬が無理矢理『ちんちん』させられてるみたいに……首吊りさせられる寸前みたいな格好で、苦しそうに俺に声をかけてくれる。


 そんな体勢なら、いっそ立ち上がったほうがいいんじゃ……と思ったが、ピッツボーさんは決して立ち上がろうとはしなかったし、ツルリエさんより前に出ることもしなかった。


 きっと……そう躾けられてるんだろう。容易に想像がつく。

 芸をキッチリ仕込まれた動物みたいに、俺に向かって挨拶しているのは……マジでスジリエの親父さんなのか……。


 顔も声も格好も、女の子にしか見えないのに……!

 どっからどう見ても、ボクっ子にしか見えないのに……!


 俺は信じられなかった。

 特に彼女……じゃなかった、彼が男の子だということに。


 どうしても脳が納得しなかったので、疑念を晴らすべく尋ねてみる。



「あ、あの……ピッツボーさんは男の子なんですよね? ドレス着てますけど……」



「ああ、ボクには……自分の服を選ぶ権限がないんだ。ツル……いや、ボクの飼い主様のお気に入りで、ドレスを着させてもらってるんだ」



 さらっととんでもない答えが帰ってきた。


 自分の服を自分で選ぶ権限がないって……どういうこと!?

 お母さんに買ってきてもらってるとか……そういうこと!?



「ペットに服は必要ないですよね? 本来ペットというのは全裸で、首輪のみを身につけて生きていくものです」



「ペットが服を着れるのは、飼い主が着せたいと思っている時だけ……。タクミさんは、その制服みたいなお洋服がお好みなのね」



 母子は当然のように言ってのける。

 ツルリエさんに至っては、スジリエがこの格好をしているのは、俺が着せたもんだと誤解している……!


 で……でも……そうか……そうだったのか……!

 スジリエの父親は、母親の手によって女装させられているのか……!


 しかもその見た目は、変態オヤジじゃなくて……完全に男の娘しか見えない……!

 似合いすぎにも、程があるだろ……!


 そんな可愛らしい男の娘が、国王で……しかも一児の父で、首輪をつけられ連れ回されてるだなんて……!

 どういうことだよ……!? ここはいったいどういうワンダーランドなんだよ……!?


 俺の正気は、再び音をたてて崩れ去る。

 血の気が頭に昇りすぎて、目の前が真っ赤っ赤になってしまった。


 血の海に溺れているような俺のまわりで、スジリエの一家の声だけが響く。



「あっ……それよりもお母様! わたくし、タクミ様のペットになりましたので、正式に戴冠式を行ってください! それも今日じゅうに!」



「えっ? 今日中じゅうに?」



「はい! ちょっと事情がありまして、今日じゅうにタクミ様を次期国王に任命する必要があるのです! ここに来る途中、街のほうで凱旋も行いましたので、もう民も理解しているはずです!」



「……まったく、ひさしぶりに帰ってきたと思ったら……でもあなたは一度こうと言い出したら聞かない子……かわいいひとり娘の頼みとあらば、しょうがありませんね」



「ありがとうございます! お母様っ!」



「すぐに大臣に指示して、戴冠式の手配を……ああ、急にいそがしくなるわね、国じゅうの民が集まるから、ピッツボーもめいっぱいおしゃれしないと……それとも、生まれたままの姿のほうが素敵かしら? 大事なところだけリボンをして……ね? ピッツボー」



 なんか……俺が立ったまま気絶している間に……話がどんどん進んでねぇか?

次回、タクミの決意は…?

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