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武龍伝  作者: とみぃG
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97 別れ

トーマスの視界にはメカゴブリンにより一方的に蹂躙される地獄絵図が映し出されていた。

逃げ惑う生徒達に向けて容赦なくメカゴブリンのバズーカの砲弾が放たれた。威力はそれ程広範囲には及ばないのだが、直撃すれば人の身体が木っ端微塵となるくらいの威力はある。


これ以上好き勝手させる訳にはいかない。

トーマスは魔法で防御壁を展開し生徒を守っているソフィアのもとへ瞬間移動した。


ソフィアはメカゴブリンの攻撃を察知して防護壁を展開したが、大きさが直径200メートルのドーム状の防護壁が限界でそのエリア外に居た生徒達は未だに攻撃の標的となっている。


トーマスは他の生徒達のところへ防護壁を展開した。直径100メートルの防護壁を全生徒がカバーできる様に4つ展開した。

これにより応急的に攻撃を防ぐ事ができたが、メカゴブリンの砲撃は継続的に続けられておりバリアがいつまで持つのかが問題だった。


『ソフィア、非常に不味い状況だ。応援を呼ぶがそれまで耐えてくれ。俺も強度が限界にきつつある』


『リュウさん・・・』


トーマスは2週間前にリュウによって作られた分身体である。分身体は作られた時の強度で耐久力が決まる。通常であれば分身体が維持出来る時間は数時間程度で時間が経つにつれて強度が減っていく。当然攻撃等を受けると強度が下がる。

すでにトーマスはいつ消えてもおかしくない状態にあったのだ。


『クラリス、聞こえるか!エレノアと軍の各隊リーダーに至急応援要請をしてくれ!時間がない』


””はい、マスター。承知しました””


生徒達はメカゴブリンの攻撃に驚愕していたが、目の前のトーマスのやりとりを見て更に驚いていた。

突然空間から女性の声がしたり、軍を動かしたり、体験入学の生徒がこの様なことを出来ること自体有り得なかった。


トーマスはすぐ近くに待機していたカルロス達パーティメンバーのもとへ向かった。


『みんな、聞いてくれ。俺はもうすぐ消える。大丈夫だ、もうすぐ援軍が到着するのでそれまでの辛抱だ。


カルロス、皆の事よろしく頼む』


『消えるってどういう事だ!お前は今まで通り俺たちに力を貸してくれないのか?』


『済まない、詳しく説明している時間がないんだ。お前なら俺がいなくてもちゃんとやっていけるさ。


ヨシュア、カルロスが暴走しないようにちゃんとサポートしてやって欲しい』


『お前の事だ、それなりの事情があるのだろう。わかった、後は任せてくれ』


『テレサ、弓は矢の数に限りがある。今後は護身の剣術も覚えていった方がいい』


『わかったわ。私もダガーを使える様に頑張るよ。・・・トーマス、もう会えないの?』


『俺は消えるがいつまでも皆のことを見守っているよ。


カーラ、危なくなったら魔法でみんなをガードしてやってくれ。その為には魔力を増強しないといけないな』


『トーマス君、もう私に魔法教えてくれないの?私会えなくなるの嫌だよ・・・』


『みんな、今回は体験入学だったけど、アカデミーに正式入学して立派に成長してくれ。またいつか会える時がくるさ。その時を楽しみしている』


もう会えなくなる。そう理解したメンバーは手を振って去っていくトーマスを涙ながら見送ることしかできなかった。


どうやって外に出たのかわからないが防護壁の外に出たトーマスにメカゴブリンの集中砲火がかけられた。

トーマスに着弾することなく砲撃が消し飛んでいく。トーマスが右手を広げて天に向かって掲げると天から細い光の柱が降り注ぎメカゴブリンをピンポイントで直撃した。200体以上いたメカゴブリンに光のビームが当たり、一面が真っ白な閃光に覆われて大きな爆発となった。


光のビームの正体は以前にリュウが魔族対策として上空に打ち上げた太陽光ビームだった。大爆発したのはメカゴブリンが持っていたバズーカの砲弾が誘爆したからだった。砲弾を持っていなければこれ程の威力とはならなかったのである。


不思議なことに爆発は防護壁には影響なくゴブリンのみを葬り去っていった。


やがて光が消えていき目の前には焼野原となった台地のみが残った。

そこにはメカゴブリンもトーマスの姿もなかった。


『おい、見てみろ!跡形もなく消え去っているぞ!助かったんだ!!』


生徒達が状況を見て歓喜した。


みんなが喜んでいる中、カルロス達四人はもう見る事のない仲間を失って悲しみに包まれていた。


『おやおや、見事に消し去られてしまいましたね。残念です。ですが、これで終わりじゃないんですよ。メカゴブリンは数の多さが取り柄ですからね』


神楽元はメカゴブリンが消し去られても想定の範囲と言わんばかりに魔法陣から次々とメカゴブリンを召喚した。


『なんだ!?終わったんじゃないのか!?』


先程の生徒の喜びは再び訪れた恐怖に落胆に変わった。


トーマスが作った防護壁はトーマスが消えたのと同時に消滅していた。


ソフィアだけでは全員分の広範囲の防護壁は展開できなかった。

動ける者は呼び集めればいいが、多くの負傷者が横たわっているためその者達を見捨てることになる。万事休すだった。

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