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武龍伝  作者: とみぃG
92/222

91 模擬戦 二

模擬戦の開始にあたりソフィアが自軍に激を飛ばした。


『さあ、模擬戦が開始されますよ。皆さん全力を尽くしましょう』


『初勝利は我軍のもとに!』


ローラもこの軍なら勝てると確信していた。何しろ攻撃部隊に例の少年がいるのだから負けるはずがない。だが、その少年の強さを知る者はここに誰一人いないという優越感に浸っていた。


ドーーーーン!!


銅鑼の音が鳴り模擬戦が開始された。模擬戦の時間は1時間。その間に相手陣の旗を取るか、終了時点での生存人数で勝敗を決める。


前衛2チームが左右それぞれから敵陣に向かおうとしたその時、敵陣で動きがあった。


敵陣の陣形が明らかになったのだ。横一列の5連陣形。これは防御に徹する陣形だ。5層に分かれている様に見えて敵が突っ込んで来たら左右に分散して敵を囲い込む陣形でもある。


カルロスは敵の陣形を深く考える事もなくただ真っ直ぐに突っ込んでいった。

このままパーティ全員が突っ込めば、その何倍もの敵に囲まれてしまう。

不味いと思ったトーマスは真っ直ぐ行くカルロスを他所に右端のルートから回り込んで進むルートを取った。


敵から見ればカルロスの愚直とも言える行動は囮で、本命はトーマス率いる右サイドからの攻撃と判断し、防御陣をトーマス達に向けて展開し始めた。


囮と思われたカルロスは殆どスルー状態だった。トーマスに続けと中衛部隊も合流した。


トーマスの目論見が見事ハマった。中央に展開していた防御陣をサイドに展開しなおすということは人員が分散されるということになる。

トーマス達は順次向かってくる敵を確固撃破していくだけでいいのだ。リスクを負うことなく敵戦力を削ることが出来る。


その事に気付いた敵のリーダーが味方を呼び戻し、本陣周辺へと防御を敷き直した。

先程の消耗で敵兵数は1/3が脱落した。だが、まだ2/3の兵力がある。ここからは持久戦で持ち堪えるつもりだった。


今度はトーマスが陽動作戦を仕掛けた。

敵防御陣に対して単独で突っ込んでいったのだ。一見すると無謀な行動に見えるが、トーマスの俊敏な動きに敵はついていく事が出来なかった。混乱に乗じてカーラが行動障害魔法を放つ。

身動き取れない相手にテレサの弓とヨシュアの剣が放たれる。

これの繰り返しで敵防御は成す術もなく切り崩されていった。


左側の攻撃は防御に止められている状態だったのでそちらの防御から応援が駆け付けてきた。

だが、既に手遅れだった。戦いにも慣れてきたトーマスのパーティは間合いを徐々に詰めて敵と正面からぶつかり合う距離にまで達していた。敵も必死で弓や魔法で食い止めようとしているがトーマスの動きが速すぎて照準すら当てることが出来なかった。


ついにトーマスが跳躍で敵本陣の旗のあるところまで一気に飛び入った。ここは防御の要。敵も腕の立つ剣士を8人程置いている。

その数8対1、普通なら勝てる数ではない。

8本の剣が息を付く暇もないくらいにトーマスに襲い掛かる。

だがトーマスはその一本一本を見極めて軽く躱している。まったく当たらないのだ。物理的にそこに人がいるのだから当たらない筈がないのにいくら斬ろうが刺そうがトーマスに当たる気配がない。


主力がトーマスに集中している間にヨシュア達が敵の防御を突破し、追いついてきた。

左の攻撃班もようやく突破できた様だ。


形勢が逆転し、今度は8人対20人という人数差となった。

連携が上手いヨシュア達に敵も少しずつ数を減らしていき遂には最後の二人となった。


この二人とは大将・副大将の講師二人だ。

大将は槍の講師をしていたオスカーと副大将は弓の講師のギルバートだ。


『この短時間で撃破してくるとはかなり優秀だな。驚いたよ』


『はい、ですが我ら講師の面目の為、ここを譲る訳にはいけませんね』


オスカーの槍術は鉄壁の防御と言えるもので間合いが広く全く寄せ付けないものだった。しかも単に防御だけでなく、防御と共に攻撃も混ぜてくるので油断できなかった。


オスカーに躊躇していると後方からギルバートの矢が飛んでくる。

ギルバートの矢は一本だけでなく、同時に3本飛ばせる離れ技だった。弓の場合、矢筒に入った本数だけしか放てないのだが、それは移動時の話だ。ここは敵本陣。矢のストックは無限と言える程積み上げられているのだ。


この二人の防御と攻撃の組み合わせで赤軍の数も徐々に減らせれていった。


そろそろ決着をつけたいところだ。

トーマスはオスカーと対決することとなった。オスカーの槍は非常に速い。しかも戦い慣れをしている。

それもその筈。オスカーは今回の臨時講師として軍から派遣されたのだ。

弓使いのギルバートはギルドからの派遣で、彼はAランクのハンターなのだ。

どうりで強い筈だ。通常なら太刀打ちできないだろう。


とはいえ、トーマスが本気になれば一瞬でかたが着くのだが、これはあくまでも生徒の教育の一環なので本気を出さず生徒達に機会を作って任せているのだ。


やはり生徒達だけではいくら人数が優先といえども鉄壁の防御と言われるこの二人の防御を抜くことは無理だった。

そうこうしているうちにタイムアップとなり試合が終了した。


『この勝負、赤軍の勝ち!!』


勝敗がついた。トーマスのいる赤軍の圧勝的勝利だった。


赤軍のメンバーは初勝利に歓声を上げた。



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