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武龍伝  作者: とみぃG
91/222

90 模擬戦

それぞれ武器ごとの訓練を講師より受けて生徒たちはなんとか使いこなせるレベルまでになった。

だが、練習で使うのと実際の戦闘では異なる。実際の戦闘では目まぐるしく変わる状況に応じて対応を余儀なくされる。

それを体感させるために模擬戦を行うことにした。


模擬戦とは5人のパーティで行動し、赤軍白軍の両方どちらかに所属して相手の軍と戦うというものだ。


軍事練習に近いのだが、1軍40名程なのでハンターでも対野党戦や盗賊戦を想定するには丁度良い人数だった。


赤軍の総大将は講師のソフィア、副大将は同じく講師のローラ。白軍も講師の二人がそれぞれ大将と副大将となった。

なんだか赤軍が女性、白軍が男性という年末恒例の国営放送の歌合戦の様だが、あくまでも男女に分かれているのは大将、副大将のみであとのメンバーはパーティ毎なのでバラバラだ。


当然、トーマスのチームは赤組となる様操作してある。


先日のローラとの手合わせで完敗したカルロスはしばらく意気消沈といった感じで大人しかったが、日が経つにつれて回復していき、この模擬戦には前と全く同じく太々しい態度の元のカルロスが復活していた。


『俺様のチームは最強たるべきだ。皆俺の足を引っ張らず引立て役に徹していてくれ』


相変わらず無茶苦茶ぶりだ。


『赤組の皆さん集合してください。今から作戦会議です』


ソフィアが号令をかけ40名の生徒が彼女のもとに集まった。


『まずは皆さんこのタスキを掛けてくださいね。この赤色が我軍の印です。白軍は白だと見難いので青いタスキを掛けています。


それで、この競技場の東西に陣を置いて、相手の陣の旗を奪えば勝ちというルールです。


両軍とも同じ兵力なので互角の勝負の筈ですが、作戦次第で有利にもっていくことができます。私が答えを出すと訓練になりませんので皆さんでどの様な作戦で行くか話し合って下さい。但し、時間は5分間です』


ソフィアから模擬戦の説明を受け、作戦時間5分が与えられたのだが、いきなり40人で話し合えというのは無理があった。

だが、現実ではこの様な即席での混成部隊で対応することは日常なのだ。


通常だと身分の上の者が取り仕切るが、ここでは皆同じ階級ということになる。唯一リーダーが各班にいるのでリーダー5名で作戦を話し合うという事にした。


リーダー会議でもカルロスの独走ぶりは炸裂した。


『ここは総当たりで挑むべきだろう。敵は初戦。まともに防衛出来ずに狼狽えているところを一気に落とす』


『そういった作戦もあるのだろうが、敵も初戦だが、我方も初戦には変わりない。攻撃するにも連携とか不備があってはそこを突破されれば無防備な我陣が落とされる危険性がある』


カルロスの案に別のリーダーからの指摘があった。


『ここはバランス良く前線から2+2+1の陣形ではどうだろうか?前衛の2チームが攻撃の要で、ポイントは中衛の2チームで、ここで戦況を見ながら攻撃と守備のどちらかに加わるんだ』


『なるほど、それはリスクも少ないな。よし、その案でいこう』


どうやら作戦が決まった様だ。


リーダーの一人から軍全体に作戦内容が伝えられた。カルロスは自分の案が採用されなかったので少し不満げだった。


部隊配置はカルロスが譲る訳もなく面倒なので前衛を任せた。右翼をカルロスの隊が受け持った。


前衛のパーティとして剣士3、弓1、魔法1とバランスとしては悪くない。全員が攻撃役となることもできる組み合わせだ。


模擬戦なので実際の戦闘とは異なり、殺し合いをするわけではない。武器も特殊なものを用いており、剣は刃先にペイントが塗られており、全身白のツナギの様な服を着ておき、斬られるとペイントが着く仕組みになっている。ペイントの付着量が多ければ死亡扱い、小さい傷は二つ以上で戦闘不能として退場させられる。


弓矢も矢先が丸くペイントが塗られており、矢が命中した時点で戦闘不能となる。


魔法はペイントでの判断ができないので殺傷力が低い低級魔法や行動を阻害する魔法のみが使用できる。低級魔法というのはウォーターボールなどだ。ファイヤーボールやウインド系の相手を傷つける魔法が禁止となる。


カルロスをリーダーとするトーマスのパーティは盾役がいないため敵に囲まれると落とされやすくなる。その点をトーマスはカルロスに指摘したのだが、落とされる前に落とせばいいという単純な脳筋思考には理解できなかった様だ。


だが、カルロス以外のメンバーはトーマスの指摘をきちんと理解していた。攻撃する際も密集せずに散開した状態で確固撃破とする様に裏打ちしていた。基本的にターゲットは糸の切れた凧状態のカルロスと当たった者とし、四人でバックアップする形だ。

矢じりの様な陣形で突撃する形となる。


トーマスは魔法役のカーラに攻撃魔法よりも行動阻害魔法を中心に使って欲しいとリクエストしていた。

スタンやフリーズ、スロウなど行動を止めたり遅くする魔法を先に掛けておいて前衛が攻撃すれば飛躍的に成功する確率が高くなるからだ。


弓使いのテレサにはカルロスの相手の更に後方に構える敵を狙う様にお願いした。敵の遠距離攻撃にとってカルロスは絶好の的なのでその攻撃を逸早く阻止する必要があるからだ。


ヨシュアとは連携攻撃でヨシュアが鍔迫り合いで敵を止め、トーマスが斬り込みを行うというツーマンセルでの攻撃態勢を取ることにした。


カルロスと当たった敵を集中攻撃で仕留めてその次の行動を作戦通りに進めると言う事だ。カルロスの独断攻撃は最初の一手だけで、すぐに乱戦になって次の行動へ移れなくなるのは目に見えていたからだ。


作戦時間が終了し、いよいよ模擬戦が開始されることとなった。




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