表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武龍伝  作者: とみぃG
89/222

88 体験入学 訓練実習

30分後最後の生徒が戻ってきて全員が武器を選び終わった。

実際の武器は想像していたよりもズッシリと重かった。

単に武器本体だけでなく、剣だと鞘、槍系だと剣先を保護する保護具、弓だと矢と矢筒など他の道具とセットして持ち運ばなければならない。


『これ、結構重いのね・・・』


何の武器にするか悩んでいたテレサだが、結局は弓にすることにしたらしい。弓も長弓でなく丈の短いショートボウと呼ばれるものだ。それでもしっかりした骨組みで出来ているので重量感があるし、何よりも矢筒が重いのだ。通常弓矢は20本以上は持ち運ぶ必要があるので矢は弓の力、弓力の強さに応じて重量を調整する。


『テレサは結局弓にしたのね。私が魔法で杖だから二人で後衛って感じだね』


カーラは魔法士志望なのでワンドを選択していた。カーラの選んだワンドは黒い杖の先に紫水晶が施された物だった。水晶は魔力を増幅する媒体として用いられる。


カルロスとヨシュアは共に両手剣だった。共に剣の心得があるので今更という感じだった。


トーマスは武器などなくとも戦えるのだが、今は一人の体験入学生だ。本来ならコンバットナイフなのだが、ここは無難なダガーにしておいた。ダガーはナイフを両刃にした様なものだ。懐に隠しておいて使う場合もあるし、投擲用として使われることもある。盗賊に愛用者が多い武器でもある。


トーマスを見て早速カルロスが反応した。


『おいおい、トーマス。お前盗賊にでもなる気か?まあ、下民だから違和感がないと言えばそれまでだがな』


トーマスはカルロスの言葉が無かったかの様に華麗にスルーした。


『ちっ、無視しやがって!生意気な!』


それぞれの武器を手にした生徒達は演習場へと移動した。

演習場はかなり広い屋内競技場だ。模擬戦なども出来る様になっている。広さで言えば、東京ドーム4つ分といったところだろうか。


講師が4人いるので武器の種類毎に説明が判れた。

剣、槍、杖、弓の四種だ。

トーマスは短剣なので剣でカルロスと同じ説明を聞かないといけない。別にトーマスは気にしてはいなかったが、カルロスとしてはまた目障りな奴と一緒というのが面白くなかった。


剣の講師は意外にも女性だった。しかもリュウのよく知る人物だったのでかなり驚いた。その女性とはギルドの受付の職員だったのだ。リュウが初めてギルドを訪れてから色々と世話になった彼女だ。

決して武闘派には見えないが彼女が剣の講師とはよく知る者程意外性の高さに驚いただろう。


『はい、私が皆さんに剣の講師を行うローラといいます。今はギルドの職員をしていますが、以前は軍に所属しており最前線で戦っていました。剣の腕については皆さんよりも上なので安心して下さい』


よく知る人物だったが、リュウは彼女の事については実は何も知らなかったことに気付いた。名前がローラであることも今知ったくらいなのだ。


剣の生徒は大半が男性だが、剣を扱ってきた者達も半数はいるのだ。講師とはいえ、若い女性に剣術が自分の方が上と言われたら面白い筈がない。最初は女性の講師でうれしかったのだが、今では敵を見る様な目つきでローラの事を睨んでいる。


『フフ、いい目つきになってきたわね。剣士は前衛で攻撃が主体の職です。ここが弱ければパーティはあっという間に全滅してしまいます。攻撃は最大の防御といいますが、それはあくまでも自分と同格か下の者に対してです。格上と戦う場合、短期で決着が着かず防御も必要となってきます。相手の力量を確かめ、如何に適切に対応できるかも剣士の技量となります。


まあ、理屈を並べても仕方ないので実際に見てもらいましょう。

誰か手合わせをしたい人はいるかしら?』


ローラの言葉に真っ先に反応したのはカルロスだった。


『よし、俺が相手をさせてもらおう。女性だからと言って容赦はしないぞ』


『勇ましいわね。そういうのは悪くないわ。戦いにおいて自分を信頼していなければ強くはなれないですからね。その勇ましさが本物かどうかは試させてもらうわ』


ローラはそう言いながら木刀をカルロスに手渡した。


『ルールは簡単。相手が降参するか意識を失ったら勝ちです。一本勝負でいきましょう』


お互いが剣を構えた。ローラは先程までの緩い顔から一変して鋭い顔つきへと変化した。普通の人から見たら顔が真剣になった程度に見えるが武術の心得があるものが見ればすぐに気が付くはずだ。

彼女の構えには隙が一切ない。


カルロスも一気にカタを付ける筈だったのが、飛び込もうにもタイミングが計れずにいた。


『先程までも威勢はどうしたのかしら?掛かってきなさい』


まだはじまって一分経ったかどうかくらいだが、既にかなりの時間が経過したかの様にカルロスは感じていた。


『どうしたんだ!カルロス!早くやってしまえよ!』


仲間のヤジも耳には入らなかったが、このままでは男としてのプライドが許さなかったカルロスはついに踏み込んだ。

正面から斬りかかったカルロスにローラは半歩身を動かすだけで簡単に躱した。


”ほう、やるもんだな”


トーマスはローラの動きを見て感心した。彼女の一瞬の動きで強さを判断したのだが、以前に軍の教育をした際の最初に稽古した連中の誰よりもレベルが高いものだった。


『ま、参った』


カルロスがとうとう彼女の威圧感に負けて降参した。

応援していた者達から見ればたった一回攻撃をしかけて、しかもそれが空振りしただけなのに何してるんだ?という様な呆れ顔で見られていたが、その者達の中には彼女の実力気付くものが居なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ