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武龍伝  作者: とみぃG
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73 後継ぎ

書斎から戻ったリュウとクリスだったが、家族の皆には子供の事を打ち明けた。それを聞いた皆は驚くと共に自分の事の様に喜んでくれた。

恐らく、一番目はクリスに譲るとして2番目の子供は自分こそと思っているのだろうが、そんなことを微塵にも出さず祝福ムード一辺倒だった。


『それで、子供の名前とかはどうするのでしょうか?』


ソフィアが疑問を投げかけた。


『こういうのは慣習とかあるのか?俺はこの世界の事全く判らないからな』


『はい。世継ぎ問題もありますので通常は祭司と相談して決めるらしいです。何やら名前にも運気があるらしくそれを踏まえての名づけとなるみたいですね』


クリスはかつての王族の名前をいくつか例に挙げて、どういう経緯で付けられたのかを説明してくれた。


『でも、普通親が付けるものだよね。他人に付けられたら子供が可愛そうだよ』


ユリンが自分は親が付けてくれた事を考えて言った。


『まあ、何れ国王となる身だからな。色んなシガラミがあるんだろう。まさかそれが自分子の事になるとは思っても見なかったんだけどな』


『其方、自分が次期国王の立場というのを忘れておる様じゃの。その辺の自覚もそろそろ持ち合わせぬといかんぞ』


鈴鳴が珍しくまともな事を言うので周囲が一瞬シンと静まり返ってしまった。あまりに普段の彼女の言動が痛いが故の意外性だった。


『まあ、とにかく、親の意見も聞いてもらおう。クリスと一緒に子供の名前を考えてみるよ。でも、まだ男の子か女の子かも判らないから両方考えた方がいいな』


””マスター。胎児の性別判断は遺伝子を元にある程度の予測をすることは可能ですが?””


『まあ、そうなんだけどな。なんていうか、今からどちらか判っていたら楽しみがなくなるからな。だから、実際産まれるまではどちらかは詮索しない様にしておく』


””承知しました。マスター””


クラリスが言う様に神の力を持つリュウなら他愛の無い事ではなるのだが、生命の誕生の重さを考えると容易な事は避けたいと思ったのだ。ひょっとするとリュウは将来、過保護な親馬鹿になる可能性もある様だ。




翌日。お祝いムードも潮が引き、タイラ家は通常通りの朝を迎えた。今日は特使と一緒に昼食会を催すことになっている。

昼食のセッティングはパトリシアが現場で陣頭指揮をとっているのでそちらに任せるとして、リュウは特使であるエリンとメアリーを宿泊先のホテルまで迎えにいかなくてはならない。


彼女達は今日の昼食会用のドレスを新調しているのでそれの仕立て確認もあったりと朝からいろいろと忙しいのだ。


リュウが二人の宿泊している部屋に行くと衣装を身に纏って鏡を見ているエリン達がそこに居た。


『うん、結構似合ってるぞ』


衣装はローグで用意したものなのでエルフ用の衣装ではないのだが、エリンの細い体にはピッタリとフィットしていてスタイリッシュに見えた。

メアリーは人形用の衣装なのか、可愛いフリルの付いたドレスだったが、小さいと何でも可愛く見えるものだ。着付けを手伝ったメイド達にもすごく人気だった。


『ありがとう。なんだか着慣れないものだから緊張してしまったわ。似合ってるのなら安心したわ』


『伯爵様!メアリーはどうでしょうか?』


『メアリーも凄く可愛くていいぞ。メイドの反応を見れば一目瞭然だ』


リュウの褒め言葉にエリンもメアリーもすかり気を良くしている。


『さあ、そろそろ時間だから行こうか』


リュウは二人をエスコートして会場へと赴いた。


会食会場はホテルの迎賓用のフロアを用意した。ここは晩餐会や舞踏会などに使われている場所だ。


料理や飾りも既に用意されており、フロア責任者としてパトリシアがフロアの指揮をとっていた。

リュウに気が付いたパトリシアがリュウにアイコンタクトを送ってきた。


リュウは今回の感謝を込めて軽く頷いた。ちゃんと間に合いましたよの合図だろうとリュウは思っていた。


『伯爵様の期待に答えれたのは愛の力のお蔭ですよ』


パトリシアはそう言う意味も込めてのアイコンタクトだったのでリュウが頷いたのを見て嬉しくて顔を赤く染めていた。


そうとも知らずリュウは会場の奥へと向かった。

予定の開催時間よりも少し早い為、まだ席に着いている人は疎らだった。


ゲストの案内を係りの者に任せると自分の席へと移動した。


『婿殿、クリスから聞いたよ!私もお爺ちゃんと呼ばれる日が来て嬉しいよ。早く孫の顔が見たいものだ』


領主がリュウを見つけて駆け寄ってきた。官邸の主治医の診察なので当然領主には懐妊の話は伝わっているのでクリスが領主へ報告を事前に済ませておいたのだ。


『はい、私も昨晩クリスから聞いて驚きました。父親になる実感はまだありませんが、領主様を見習って良き父となるべく精進致します』


領主は上機嫌で各席に挨拶に回っていた。本来なら懐妊の告知をこの場でしたくてしょうがないというのが事情を知るリュウには良く判った。


そして定刻となり全員着席のもと昼食会はスタートした。


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