62 妖精の暴走
リュウ達は表の騒ぎを確かめるために家の外へと急いだ。
『妖精が暴れるなんて聞いたことないわ』
ナターシャが有り得ないという口調で話す。
『この辺には妖精が普通にいるのか?』
『この南の大陸の中心には精霊の森があって、その精霊は森の守り人として存在してるの。その精霊がフェアリーと呼ばれる妖精なのよ』
リュウ達は大声を出していた男の所へと駆け付けた。
『おい、一体何があったんだ?』
『突然森で妖精の大群に襲われたんだ』
『妖精って、森の守り人で決して森の住民を攻撃したりしないはずよ?』
『俺だって信じたくはないさ。でも実際に襲われて仲間がやられてるんだ。あんな凶暴な妖精みたことなかった』
ひとまず、リュウは状況を確認することにした。
『おい、それはどっちの方角なんだ?』
『西にまっすぐ行ったところだ。あんた行くのかい?止めた方がいい。あれは手の付けられる状態じゃない』
『心配ない。それより、この状況を早く長老に知らせてくれ。エリン一緒に行ってくれるな』
『嫌よ。私は伯爵と一緒に行くんだから。この森に詳しい案内役が必要でしょ?』
『それも一理あるな。ナターシャ、戻ってすぐで悪いがこの人と一緒に長老のところに行ってくれないか?』
『仕方ないわね。私では戦闘力もこの森の知識も乏しいから、あなたと一緒に行っても足手まといになるだけね。任せて』
リュウはエリンを案内役にエルフの森の西へと向かった。
歩きながらリュウはエリンにいくつか確認を行った。
『なあ、エリン。妖精は普段どう過ごしているんだ?』
『妖精は森を飛び回って森の浄化を行っているの。妖精の羽から出る粉が森を清めているのよ。普段争うこともないけど、精霊魔法が使えるはずよ』
『そうか、魔法を使うのか。エリン、本当に妖精が暴走している様なら安全な場所に隠れていてくれ』
『伯爵はどうするの?』
『俺は妖精を退治しに来たわけではない。なぜ暴走しているのか原因を探る必要がある』
『そうよね。原因をつきとめて解決方法を探さないとね。でも、無理はしないでね。私をお嫁に貰うまで』
『まだ言ってるのか。いい加減諦めろ』
エリンはさりげなく自分の意思をリュウにアピールしている。
まあ、言うだけの範囲なら害にならなければいいかと思うリュウだが、この先また厄介事が増えることについては今は考えるのを止めておくことにした。
しばらく森を進むとリュウの索敵に反応があった。赤く光る魔物の反応だ。数は50くらいだろうか。
規則性なく辺りを徘徊している様な感じて彷徨っている。
『この先にどうやらいるみたいだ』
リュウは茂みの陰から様子を覗いた。
羽が生えた妖精がそこには居たのだが、目が赤くなっていて顔が狂乱状態だった。暴走という言葉が適切だろう姿だ。
フェアリーは辺り構わず炎を口から吹いたり雷を炸裂させたりしている。ただし、その体の小ささで威力もそれ相応の小規模なものだった。とはいえ、人間や普通のエルフが喰らえば無事では済まない。
『ん?何か様子が変だぞ』
『どれどれ?・・・何あれ??』
もともと狂乱状態なので様子がおかしいのは判ってはいたが、その中で異様な光景を目にした。
狂乱状態にありながらもフェアリー同士が争うことはなかったのだが、そこには一体のフェアリーが周りのフェアリーから襲われているのだ。
よく見ると逃げているフェアリーは目が赤くなく狂乱状態にもなかった。
『もう!やめてーー!私は仲間よーーー!』
逃げているフェアリーは仲間からの攻撃でボロボロの状態だった。
このままでは不味いことになりそうだ。
リュウはとりあえずこの正気であろうフェアリーを助けることにした。
『おい!こっちに逃げてくるんだ!』
『誰???』
リュウの声掛けにフェアリーは混乱していた。
『いいから早く来い!』
フェアリーはどうすることも出来ないので言われるがままにリュウ達の居る方へと飛んできた。
フェアリーが来るとリュウは周囲10メートルに結界を張った。
他のフェアリーは結界にぶつかって跳ね飛ばされたり地面に落ちたりしている。炎や雷の魔法も結界には通じない。
ひとまず安全領域を作ったのでフェアリーから話を聞くことにした。
『あのう・・・助けていただいたんですよね?』
フェアリーは心配そうにリュウに尋ねた。
『ああ、そうだ。心配しなくていい。取って食おうってわけじゃない』
『ありがとうございます!私、メアリーと言います。もう駄目かと思って半分諦めていました・・・』
メアリーは相当怖い思いをしたのだろうシクシクと泣き出した。
『はい、妖精さん。涙を拭いて。可愛いお顔が台無しだよ』
そっとハンカチを渡すエリンにリュウは感心していた。
落ち着かせるためにリュウは空間バッグから長老の家でもらったハチミツティーをメアリーに勧めた。
『・・・これ、すごく美味しいです』
少しだけメアリーに笑顔が戻ったみたいだ。
結界の外では何とか破らんと狂乱フェアリーが多数襲い掛かっており、中からは異様な光景に見えたが結界は遮音性が高く静かな状態が保たれていた。




