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武龍伝  作者: とみぃG
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56 南の大陸

一晩明けて翌日、リュウは南の大陸に行く準備をしていた。


昨日クリスとケーキを一緒に食べた後でエレノアにも謝りに行ったのだが、彼女は直接見ていた訳でなく、もしその場に居たらオーラに気付いてただろうから、クリスでは仕方がないという感じだった。


だが、この時とばかりに彼女との一日デートを約束させられた。デートとは言っても彼女の場合、孤児院の施設の仕事を一緒にするという健全なものだ。

最近は彼女の収入も大幅に増え、リュウの支援もあり施設の設備や食事などに困ることがなく彼女もリュウに感謝していた。


エレノアとの約束は今の一件が片付いて戻ってからということにした。


リュウは空間転移で南の大陸に飛んだ。

魔王ガズルに転移させられなかったら南の大陸には行くことが出来なかっただろう。そのお礼に聖なる釘のたっぷりご馳走してあげた訳で何とも皮肉である。


『クラリス、転移座標を確認する。前回のポイントで問題ないか?』


””はい、マスター。転移先での生体反応はありません。このまま転移しても問題ありません””


あれから暫く時間が経ってしまったため、魔族が集結している中に転移したら厄介なことになるので事前にクラリスに確認した。


リュウが空間転移し辺りの確認するとクラリスの言う通りそこには何もいなかった。


『クラリス、この場所が北の大陸への転移拠点となったのは何故だと思う?』


””転移の手段のためだと推測します。マスターの空間転移は知覚や記憶の中で距離に関係なく転移することができますが、魔族の転移は魔法陣による魔法の一種です。従って転移するにも距離の限界があると思われます。故に北の大陸から一番近いこの北端の海岸が選ばれたものと結論付けます””


『なるほど、それなら辻褄があうな。魔族の拠点はこの南の大陸の南部に位置すると聞く。本来そこから直接飛べば効率がいいのに距離の離れたこの場所を選んだのは恐らくそれで間違いないだろう』


””魔族の拠点とする地域はこの海岸から約1000キロメートル南に位置しています””


『ここから北の大陸はどれくらいの距離だ?』


””今立っているこの場所から北の大陸の南端まで約30キロメートルです””


『それじゃあ、仮にこの北の大陸の北部に大規模な聖結界を張ったとしたら、そうだな、海岸から20キロメートルくらい内陸部までを範囲としたらどうなる?』


””強力な結界であれば魔族は侵入することができません。従って結界の外からの転移であれば陸地でなく海流の荒い海へと転移され侵攻は不可能なものと推測されます””


『それじゃあ、暫定的に魔族侵攻を阻止するために強力な聖結界を北部海岸沿いに張るとしよう』


リュウは広範囲の聖結界を施した。先日の防壁で張ったものよりも強固なものを三層に重ねて上書きしたので絶対に破られることはない自信があった。


『それとクラリス、この大陸の情報が欲しい。判る範囲で教えてくれ。先ずは生息する種族からでいい』


””はい、マスター。この大陸では四つの種族が存在しております。精霊を司るエルフ、鍛治職に特化したドワーフ、人と獣が合わさった獣人、そして魔族の四種族です。


北の大陸では大きな湖を中心としておりましたが、この南の大陸は精霊の森を中心とし、その真ん中には大きな大樹があると言われています。精霊の森の北東がエルフ、北西がドワーフ、南西が獣人、南東が魔族の居住地域となります。


この四つの種族は古の契約により互いに不可侵とする掟が守られており、南の大陸では種族間の戦争や争いは皆無となっております。しかしながら、南の大陸は北の大陸の人間の事は良く思っておらず、災いをもたらす者として忌み嫌われている様です””


『なるほど、俺たち人間は招かざる客という訳か。とは言え、情報も欲しい。各種族の所に行きたいのだが、ここから一番近いのはエルフの地域だな?』


””はい、この先南の森がエルフの住む領域となります。但し、ここの四つの種族の中で特にエルフ族が一番人間を嫌っております。どうぞご注意下さい””


リュウは海岸から草原を通って南下した。


北の大陸と南の大陸の大きな違いは南の大陸は緑が多いということだ。北の大陸にも森はあるが、どちらかというと林に近い感じで魔の森以外では深い森というのは存在しない。リュウの知る範囲なのでまだ未踏の地ではあるかも知れないが、マキワやガゼフ帝国の領域では見かけなかった。


森に入るとそこはジャングルとも言える背の高い木やシダが覆い茂っている。

リュウの居た世界のアマゾンのジャングルがそれに近かった。


ジャングルに入ってから10分程度した頃、リュウは辺りの違和感に気付いた。


『クラリス、気付いているか?』


””はい、何者かに監視されています。二時と十時の方向にそれぞれ配置しています””


リュウはクラリスに念話で話しかけた。

先程から一定の距離を保ちながら尾行をされていることに気が付いたからだ。

向うは俺が気付いていないと思っているらしい。


『それじゃあ、お手並み拝見としようか』


リュウは尾行者が何者なのか、どういう目的で追尾しているのか判らないので揺さぶりを掛けることにした。


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