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武龍伝  作者: とみぃG
54/222

53 防壁決壊

『もう朝ですね。今日が雲ひとつない快晴の天気でよかったですね』


クリスはそう言いながら微笑んだ。


防壁上面の監視所のある場所では魔導装置の準備が進められていた。反射板を展開し、そのリフレクターは上空の更に上にある太陽に向けられていた。


『リフレクター展開完了!

  一次シャッター解放!

  増幅レンズ調整完了!


   発射準備完了です!』


『全台、敵へ向けて放射!!』


魔導装置のセットの終了を兵が伝えるとルードルフ男爵が魔導措置の始動を合図した。


その魔導措置とはリュウが開発した鏡とレンズを組み合わせたレーザー砲だ。太陽光を集めてレンズで集中させるだけでも相当な威力があるが、集積する際に増幅度を増して破壊力を上げていた。

ここでも当然賢者の石が使われている。


特に発射音も何も発することなく、一本の光がサーチライトの様に伸びていき、その光が当たった先では一瞬で燃え上がり溶け去った。

後方で突撃を待機していた魔族達はその光の餌食となり多くが消し飛んだ。


この光のレーザー光線は魔法ではないので魔法で打ち消すことは出来ない。しかも通常魔法の数千倍という威力の前にはどんな防御魔法も効果がなかった。


『まだ朝方なのでこの程度の威力ですが、日中だとこの数倍の威力があるとタイラ伯爵はおっしゃられていました』


『恐ろしいほどの威力ですな。敵の攻撃でなくてよかった。いや、本当に』


クリスがリュウから聞いた説明をルードルフ男爵にすると彼はこの兵器が魔族側になくてよかったと胸を撫で下ろす。これを使われると強固な防壁も破壊されてしまうからだ。


だが、この兵器も万能ではなかった。

遠くの敵を狙うのに適しており、近くの敵には届かないのだ。

砲台の特徴と同じで急な角度での使用が出来ないため、目の前にる敵を片づける事ができない。


空中の敵や防壁決壊後の大群を片づけるという意味では非常に効果があった。現に魔族の半数以上がこのレーザー砲で消し去られてしまったのだ。


魔族からすればレーザー砲の届かない防壁付近の方が安全と言えた。


『全軍、防壁へ突撃しろ!何としてでもあの壁を打ち抜くぞ!』


いよいよ魔族の全軍が防壁へ押し寄せてきた。

防壁も既に穴が開き始めている所もあった。

この後は防壁内での乱戦を誰もが覚悟していたその時だった。


『ホーリーレイン!!』


クリスの後ろから女性の声がした。

女性の放った魔法で空から聖なる雨の滴が降り注いだ。

雨を受けた魔物は酸を浴びた様に溶けだした。


『エレノア!来てくれたのね!』


『お待たせしました。リュウ様から一報が入って迎撃部隊を編成して参りました。もうこれで安心ですよ』


エレノアの思いがけない援護に驚いたクリスだが、国の一大事にローグで何もせず見ている筈がないし、それをするリュウでななかったのだ。


破れた防壁にはヴァンやゴードンが駆け付けた。


『プレッシャーウォール!』


ヴァンが唱えると空気の壁が現れて魔族を後方彼方まで押し戻した。


『アースウォーター』


ゴードンの術は地面が突如水の様に波打ち、その上にいた者は水の上に居たかの如く土の水にはまりその中へと消えていった。


『リペア!』


工作部隊長のハンスが壊れかけていた防壁を元の形に戻している。

魔族が数時間掛けて苦労して壊した防壁が一瞬で元の姿にもどったのだ。


最早魔族に勝機はなかった。


魔族達も尽く敗れ去った光景を見て敗走をしはじめたのだ。


『貴様ら!どこへ行く!この地に残って生きて帰れると思うなよ!』


指揮官の言うのはもっともだった。この北の大陸で魔族が生きていける筈などないのだ。しかも低級の魔族が南の大陸に戻れる手段など持っているわけがない。


混乱している魔族達を掃討しているのはジョセフの率いる攻撃部隊だ。実戦経験を積めるとして部隊の多くの者が参加していた。


『なんとか俺がいなくても片付いた様だな』


そこに現れたのはリュウだった。


『あなた!私達頑張りましたよ!』


『なにを終わる頃に来ておるのじゃ。少しは働かんかい』


『リュウ様!お声を聞いて馳せ参じました!』


『タイラ伯爵。またしても貴殿のお蔭でこの国が救われました』


それぞれがリュウの突然の登場に驚いて声を掛けた。

鈴鳴に至っては魔族が防壁内に侵入していなかったので結局何もしなかったのでこの場の役立たずはむしろ彼女だったが、この場の誰もがそう思いつつも突っ込まなかった。


それぞれ戦いの緊張があったが、リュウが傍にいるというだけで何故か安堵がもたらされたのだった。


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