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武龍伝  作者: とみぃG
51/222

50 デーモンロード

魔王ガズルが消えた後に残されたのは、デーモンロードのギラという魔族だ。強さに自信があるのか他に従属は連れていなかった。


先日のデーモンとこのデーモンロードの異なる所と言えば、先ずは外観の色が赤ではなく黒っぽい赤といった感じでデーモンより一回り大きく、羽も大きくなっている。

デーモンからの進化なのか或いは元々別の種族なのかは判らないが、魔族としての階級はこちらの方がかなり高そうだ。


『さて、人間。我もガズル様の後を追わねばならん。手間を掛けさせずさっさと消えるがいい』


そう言い放つとギラの両手から円月輪の様な直径30センチ程の黒い光の環が左右3つずつ回転しながらリュウを切り刻むべく飛んできた。


リュウは一発一発の攻撃を見切り最小限の行動で躱す。

足元は殆ど移動せず体を捻って躱していると言った表現が近い。


『やはりこの程度では駄目だったか。ではこれではどうだ』


ギラはニヤリと笑うと同時にリュウの足元から黒い影が出てきてリュウの手足を拘束した。影縛りの術と同じものみたいだ。


『これで動くことはできまい。終わらせてもらうぞ』


ギラは先程の2倍の大きさの環を左右5発ずつ放った。当たれば瞬断されて体がバラバラになってしまうのは確実だ。


環の刃がリュウに届くことは間違いなかった、このスピードでこの大きさの環が躱せるはずがない。ギラは最早勝利を確信していた。


そしてリュウに届いたはずの黒い環はギラの目の前に遠ざかっていく。ギラは何が起こったかわからない。背後からの衝撃と斜めにずり落ちていく自分の体があった。


リュウは環が届く寸前で空間転移を行い、リュウの目の前とギラの背後を繋いだのだ。黒い光の環はその回転の勢いを保ったままギラの胴体を真っ二つに切り裂いた。


『ぐっ、ば・馬鹿な!』


普通のデーモンなら既に死んでいるだろう。だがギラは生きていた。


『人間のくせに想像以上にやるじゃないか』


ギラは切り捨てられた上体を浮遊させ、体の下半分と接合させた。

どうやら切ったくらいでは死なないらしい。


『魔族というのは便利に出来てるんだな。反則だぞ』


『何とでも抜かせ。再生能力も力のうちだ。使えない奴が弱いだけだ。そういう意味では人間とは何とも脆いもんだな』


ギラはリュウに得意げに語った。


『じゃあ、これならどうだ?』


影に縛らていた筈のリュウはいつの間にか影から抜け出しており、リュウの両手からギラと同様の光の環を放った。

黒い光でなく、聖なる光だ。神々しい光の環はギラの放った時よりも格段に速く目で追うことが出来ないくらいのものだった。


”ジャリーン!!”


聖なる環はギラの手足を切り割いた。

四肢を切り取られたギラは悲鳴と共に地面に転げ落ちた。


『グワアアアアア!!

 ・・・・・おのれ・・・・・』


しかし、ギラには再生能力がある。切り割かれた手足を本体に引き寄せ接合にはいる。


『な・なぜだ?何故繋がらない??』


リュウの放ったのは聖なる環だ。即ち聖魔法なので切られたギラの断面は壊死しているので再生が効かないのだ。

先程は自分の放った黒い光の環だったので再生が通用したに過ぎない。


『さっきは自分の放った攻撃で切り割かれたのが、俺の聖魔法では効果がなかっただけだ。残念だったな。そういう意味では魔族とは何とも脆いもんだな』


リュウは先程のギラのセリフをそのまま入れ替えて嫌味たらしく語った。


『人間め、これで勝ったなどと思うなよ!』


そういうと同時にギラの体は頭から順にアメーバー状に溶けていく。切り落とされた手足もアメーバーとなり本体と融合して一つの固まりとなった。

そして再度デーモンロードの体へと生成していったのだ。


『なるほど、考えたな。それなら復帰できるという訳だ』


リュウはなるほどと感心した。


『ちょっと油断していた様だ。だが、ここからは本気でいかせてもらうぞ!ブラックレイン!!』


ギラが唱えると空から黒い雨が降ってきた。それは単なる雨ではなかった。雨の滴にあたった草木や岩、地面をも煙を出しながら溶かしている。濃硫酸が降っているような感じだ。


黒い雨はリュウの体も直撃した。大粒の雨がリュウに降り注ぐ。


『ガハハ!これまでだ!溶けて無くなれ!』


だが、リュウは何事も無かったかの様に立ったままだった。


『えっと、これってどんな攻撃だ?雨が降ってきただけだが?』


『ば・馬鹿な!!そんなはずがない!!万物はこの雨に溶けてなるなる筈だ!!なぜ平気なんだ!!』


ギラは平然としているリュウに驚き混乱した。


リュウは自身の体に完全治癒と万物再生の無限ループを働かせいるのだ。黒い雨が当たった瞬間、それは当たる前の状態へと戻る。それがナノという短い超短時間で繰り返されているのだ。

リュウの技は常識では理解できないレベルに達していた。


『じゃあ、こっちの番だな。対極の技でいかせてもらうぞ。ホーリーレイン!』


『ま・待ってくれ!!ギャアアアアアアアアア・・』


空から光の雨が降り注ぐ。単なる光でなく浄化の雨だ。魔族にとってはこれ以上にない破壊力をもつその効果は無数の雨粒となってギラの体に降り注いていく。

最早再生というレベルではどうしようもなくギラは成す術もなく浄化されていった。


そして3分後、そこには何もなくなっていた。


『やれやれ、終わったな。

  クラリス!至急マキワの全軍に伝えてくれ!魔族の襲来を』


””了解しました。マスター。今判る限りの情報を味方に伝達いたします””


『それと、俺が南の大陸にいることはクリスと鈴鳴にだけ伝えておいてくれ。こっちの状況を調べてすぐそっちに戻ると』


””了解しました。お伝えします””


リュウはこの南の大陸に飛ばされたことを不幸中の幸いと思っている。ここに来れたことで空間転移で自由に行き来が出来る様になったからだ。

だが、ここから次々と北の大陸に魔族が来られても困るので阻止をすべく行動することが必要だと思ったのだ。



そしてリュウはクラリスと周辺の調査に入った。


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