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武龍伝  作者: とみぃG
43/222

42 出立

早朝、まだ日が昇る前にリュウ達は家を出た。

家ではソフィアとエレノア、使用人達が玄関で見送った。


『リュウさん、必ず無事で帰ってきて下さいね。そして思い切り甘えさせて下さい』


『リュウ様、神様故にご加護もお持ちだと思いますが、くれぐれもお気をつけて。そして私にも戻られてから・・・・ください』


ソフィアとエレノアがしばらく会えなくなるリュウに声をかけた。エレノアは恥ずかしさで口の中でゴニョゴニョ行っていたが、内容はソフィアと同じことだった。


『わかった。留守中よろしく頼んだよ。

 そういえば鈴鳴を見掛けないのが気になるのだけど・・・』


リュウはそう思いつつも時間なのでクリスとユリンの二人と一緒に家を出た。



隠密行動となるので街での見送りはない。

偵察隊の各員との合流地点は街を出て5キロ程離れた場所を指定していた。まだ辺りは薄暗く足元が少し見える程度の道を駆け足で歩いた。


20分程して現地に到着したが、既に全員が集合していた。


『おっ、時間にはまだ少し早いのに皆感心だな』


『はい、伯爵様をお待たせするなど畏れ多い。皆心得ております』


諜報部隊長のクリフが代表して答えた。


『よし、それでは今回の任務の前に事前に説明しておきたいことがいくつかある。 まずは席に着いて聞いてくれ』


そう言うとリュウは人数分のイスを空間ポーチから取り出した。


任務の詳細な内容と各チームの行動について説明と質疑応答を行った。予め事前説明や準備を行っていたので今更という感じなのだが、こういう事は念には念を入れておくものだ。


そして最後に今回の移動の目玉となるホバーを皆の前に並べた。

空間ポーチから3台のホバーが現れる。


『おお!これは何でしょうか?すごい!乗り物の様ですね』


『へへへ、すごいでしょう?驚くのはこれからだよ』


素直にホバーを見て驚いたクリフに既にどんなものなのか知っているユリンが自慢気に話す。


そしてリュウからホバーについての使い方と持っている機能を一同に説明した。


まず、何もしていないのに地上30センチ程度のところに浮遊していることに驚いていたが、リュウが光学迷彩ボタンを押すとホバーの本体が背景と同色の迷彩色となり見えなくなるのを見て更に驚いた。この世界にカメレオンがいるか判らないが、知っているとは思えないから尚更だろう。


そして、空間トランクの説明をしようとリュウがシートを上げてトランクを見せた時にトランクの中の違和感に気付いた。


『・・・・・なんでお前がここにいる!』


『ふわぁ~っ、よく寝たのう。ん?もう着いたのか?』


なんと、空間トランクの中にクロの姿で鈴鳴が寝ていたのだ。

一同はトランクの中に猫がいたこともそうだが、何より猫が人間の言葉を喋っていることに一番驚いていた。


『その中に人が入っていても平気なのか!?』


『ああ、妾は人ではないからのう。細かい事は気にするでない』


確かに人ではなかった。リュウは試したことがないのだが、空間トランク内では酸素を供給しない限り人が生存できない筈だ。


『最近お前の姿が見えなくておかしいとは思っていたが、まさかここに隠れていたとは・・・』


『妾も旅行がしたいのじゃ。一緒にいると何かと便利じゃぞ』


二人の会話を聞いていたクリフ達にリュウが気付きフォローをした。


『ああ、驚かせてすまない。皆も先日会っていると思うが、こいつは俺の嫁の一人、鈴鳴が変化しているんだ』


『なんと、そうでしたか。いや、伯爵様の御身内であれば何が出来ても不思議ではありませんが、まさか猫が人の言葉を発するとは思いもよりませんでした。しかも奥方様であられたとは・・・』


クリフ達はもう驚く事にマヒしてしまったようだが想像の斜め上をいく出来事の連続に翻弄されていた。


とにかく、鈴鳴をこのまま置いておくわけにもいかないので、リュウの偵察隊に同行させることにした。但し、猫のクロので居ることを条件とした。人の姿と猫ではどちらが諜報活動に都合がいいかは言うまでもない。更に猫の姿を利用して様々なところにも潜伏できる。


『鈴鳴、最早帰れとは言わないが極力邪魔をしてくれるなよ』


『心得ておるわ、心配するでない』


リュウは渋々であったが鈴鳴の同行を許した。


先程の続きであったホバーの説明を再開した後、簡単に操作と試乗をそれぞれにさせて問題ない事を確認した。


定刻となったので偵察隊はそれぞれの方面に向かって出発した。


クリフ隊は一旦ガゼフ帝国を通ってイスタスに入るのだが、最短の湖沿いのルートで行くためリュウ達とは異なるルートとなる。

イスタスはガゼフ帝国とは国境付近で小規模の戦闘が繰り返されている現在交戦中の険悪な関係だが、イスタスとマキワとは特に何かあるわけではない。ひとつ国を挟んでおり一番遠い国という事もあって交流を行うことはあまりなかった。故に情報は仕入れておく必要あった。


ランドワープ王国へ向かうユリン達、紅の二人は砂漠を横断して人目のつかない人里から離れたところから国境越えを行う。

マキワを横断するだけでも結構な時間が掛かる。

ランドワープ王国とは通常の国交のため正規に国境を通る事も出来るのだが、相手国の現在の状況が判らない限りこちらの動きを知られずに行動する方が賢明だ。


リュウは二つのチームを見送り、見えなくなったところでガゼフ帝国方面へ向けて出発した。


ホバーの前にリュウ、後ろにクリスのタンデム航行だが、鈴鳴は元居たトランクの中でまた眠りについた。


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