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武龍伝  作者: とみぃG
209/222

208 消えた爆弾

部下の男性が大声で叫びながら部屋に入ってきた。


『一体何事だ!騒がしいぞ!』


『総統!大変です。緊急事態です!倉庫にあった爆弾が全て無くなっています!』


『何!?それはどういうことだ!?』


『いえ、実際に見てもらった方が早いかと・・・』


ゼノフは部下と共に地下倉庫へと足を運んだ。

地下の倉庫はエレベーターで荷物の搬入を行なうのだが、工場倉庫と同じくらいに広いスペースだった。

その広いスペースにパレットに積まれた爆薬が100パレット程あった筈なのだが影も形もなくなっており広い空間スペースが広がっていた。


『誰かが持ち出したのか!?』


『いえ、つい三十分ほど前の巡回では異常はありませんでした。搬入エレベータの前には見張りも立っていたので持ち出す事は不可能です』


『それじゃあ説明がつかんだろう!』


全く事態が理解できずにゼノフは声を荒げた。報告した部下にとっては自分の落ち度でもないのに怒鳴られるのは理不尽だと思ったのだが、余りの光景に反論も出来ずにいた。


『とにかく緊急警報を鳴らせ!周辺をくまなく探すんだ!賊がいればまだ近くに潜んでいる筈だ!』


ゼノフの指示に部下は無線で緊急通達を発信しようとした。その時だった。目の前に見知らぬ男が現れた。


男は白い髪の毛に金色の眼をしていた。明らかに人間ではないというのが風貌からして見て取れる。


ゼノフも部下達も突然現れたリュウの姿に驚いた。


『き、貴様!何者だ!!どうやってここに入ってきた!』


『随分と慌ててるみたいだな。そりゃあそうだよな。ここに積んであった物が消えてなくなったんだからな』


『貴様の仕業か!爆薬をどこにやった!』


『そう騒ぐな。お前達が探しているものは後ろにちゃんとあるだろう?ちゃんと見たのか?』


ゼノフと部下たちが立っているのは倉庫のエレベーター前でエレベーター前に立つリュウを見ていた。

リュウに言われて後ろを振り返ると先程まで消えていた筈だった爆薬が何事も無かったかの様に整然と積まれてあった。


『一体どういうことだ?さっきは確かに無かった筈だ!』


ゼノフ達は我が目を疑った。まるで狐につままれた様な感じだ。


『ええい!確認は後だ!とにかくこいつを捉えろ!』


ゼノフの指示で部下の男が非常ボタンを押し緊急警報が館内に響き渡った。

警報と共にゼノフ達の下に警備員と思われる男達が次々と集まってきた。だが、通常の警備員とは感じが異なった。男達の服装は完全武装されており防弾ベストと自動小銃を備えておりフル武装といっても良かった。


『ひゅ~っ、これは凄いのが沢山出てきたな』


リュウは出てきた連中の練度を見て訓練されたソルジャーであることが一目でわかった。


『大人しく観念して投降しろ。足掻いても無駄だ。ここにいるのは元グリンベレーやコマンドーで活躍した連中だ』


ゼノフは自慢げに説明した。常日頃から非常事態に備えて優秀なソルジャーを身近に置いているのだ。


『それはそれは。さぞかし優秀なんだろうな』


リュウは目の前にいるソルジャー達に手をおいでおいでして挑発をした。

いくら元は優秀なソルジャーだったとしても今は悪党に加担する奴らだリュウが手加減をする理由はない。


2メートル以上あるかという大柄な男がリュウへと掴みかかった。

羽交い絞めにしようとしたのだろう。だが、両手は空振りに終わり、掴んだはずのリュウが目の前から消えた。


『おい!何してる!後ろだ!!』


ゼノフに言われて男は後ろを振り返るとリュウがそこに立っていた。


『クソッ、舐めやがって!』


頭に来た男はコンバットナイフを取り出し構えた。2メートル以上もある大男が身を屈めて攻撃態勢に入っている。


だが、そのナイフは空を切る事も出来なかった。

目の前のリュウが消えて男は足を払われ後方に勢いよく倒れた。

倒れた男の鳩尾にリュウの正拳が入った。地面に屈む様に放たれたリュウの正拳一発で大男は白目を剥いて目を覚ます事は無かった。


二十人以上に囲まれている状況だがリュウと大男の1対1の戦いは圧倒的なリュウの勝利だったことに唖然としていた。


『ば、馬鹿な・・・ルドニコフが一発で倒されるとは・・・』


『ほう、今のがルドニコフだったのか』


リュウは軍にいる時代にその名前を聞いた事があった。北欧の国の特殊部隊に居た狂犬ルドニコフ。圧倒的な戦闘力で接近戦を得意とし数多くの戦績を残したが、残虐非道な殺戮で人道的に問題があり軍法会議に掛けられて戦線から外されていた筈だった。


捨てる神あれば拾う神有りだったんだろうな。リュウはそう思った。


『お前達!何を惚けて見ている!全員でかかれ!!殺しても構わん!』


手加減無用を言われて周りのソルジャーは一斉にリュウに向かっていった。

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