201 神の住む場所
クラリスはリュウの指示によりこの世界の神についてデータサーチを行った。
””この世界では現在529の宗教が存在します。その宗教の中で神と呼ばれる存在は236ありますが、実際に神が存在するかは不明です。殆どが信仰というよりも宗教としてビジネス的な要素を含んでおり、近年に発足されたものとなっています。
歴史のある宗教としては73の宗教が200年以上の歴史を持っています””
『なるほど。ということはその73の宗教以外は対象から削除してもらって構わない』
””了解しました。次になにをお調べしまよう?””
『そうだな。推測で構わない。実際に神が存在すると思われるものを選んでみてくれないか』
””はい、・・・・・推測でよければいくつか絞ることができます。
神の存在として考えるならこの星の人類の歴史から見て1000年以上前から存在していてもおかしくありません。
それで選別すると24の宗教が1000年以上の歴史を持ちます。
更に過去の文献から神話や遺跡などの資料で神の存在を現しているものが12に絞る事ができます””
『そうか、12となるとだいぶ絞ることが出来たな。まあ向こうの世界の神の数が7人だったから世界の広さで比較したら妥当なところなんじゃないかな?』
””人口比率で言うとこの世界ではもう少し多くてもいいのですが、種族での比較となると向こうの世界の方が多くなると思われます””
『なるほど。まあ正確な数字はいいとして、やはりこの世界も神の居る場所というのがあるんだろうか?』
””向こうの世界で言う仙人界の様な存在ですね。ちょっと待って下さい・・・・・
いくつかの候補地がある様です。どれも確証はありませんが、言い伝えなどで残っている様です””
『確証がなくても構わない。候補地を言ってくれ』
””一番可能性が高いのはこの世界の一番標高の高い山の付近に祠があり、そこから神の世界に通じる道があるというのと、一番海の深い場所の洞窟から入った場所という二つが有力です””
『ふむ・・・世界で一番高い山というとエベレストだな。もう一つの海の一番深い場所となると・・・ビチアス海淵か?』
””はい、標高の高い場所はネパールにあるエベレスト山の8,848mで間違いありません。一番深い海はマスターの言われるビチアス海淵は一説では一番深いと言われておりますが、測定方法が疑問視されているため公式データとしては残されておりません。ですが、ビチアス海淵のあるマリアナ海溝が一番深い場所と言うのは間違いなく、最深はチャレンジャー海淵となっています””
『わかった。山にしても海にしても人間が簡単に行ける場所ではなさそうだな』
””そうですね。普通の人間にはどちらも不可侵な領域となっています。エベレストの山頂付近は時には-70度になり風速300メートル以上の風が吹き荒れる事があります。酸素量も地上の1/3で酸素ボンベ無しでは生きられません””
『想像を絶する場所だな。海は言うまでもなく水圧で海底探査機でも厳しい所だな』
””はい、日本国の所有する深海6500では水深1万メートルに耐えられる設計となっていますが、あくまでも潜って探査する目的で自由に航行できるまでにはなっていません””
『まあ、山にしろ海にしろ技術が進歩しなければ神の住む領域には行けないということなんだろうな』
””マスターはその辺り心配する必要ないのではないですか?””
『俺?ああ、全く問題ないぞ。でないとオーグと真空状態の場所で戦闘なんて出来ないからな』
リュウは既に人間の体ではなく擬体なので極限の環境下でも何ら問題ない。だが、寒さや暑さは感じるのであまり生身では行きたくない場所には変わらなかった。
『場所はある程度特定できた訳だな。それじゃあ、それらしき場所を探ってみるか・・・』
リュウは世界眼を使ってエベレスト山頂付近にそれらしき場所が無いか探ってみた。
世界眼では地球の上空から焦点をあてて見たい場所をズームでクローズアップさせる様な感じで透視を行う。
生物などを見るのはターゲット固定出来るので簡単だが、場所を特定するのは結構難しい。特に雪山などは一面が雪景色で吹雪いていれば視界も不良で余計に見つけることが困難となる。
幸いにもエベレスト山頂付近はこの時は穏やかだったため透視は良好と言えた。
リュウは10分程度山頂付近を捜してみたがそれらしき祠は見つけることが出来なかった。
今度は海溝の方を世界眼で見ることにした。
深海一万メートルとなると光が全くない世界で暗闇だった。世界眼の透視では視界不良で何も見つけることが出来ない。
リュウはライトニングボールを手の平に出して遥か彼方へ放り投げた。弾丸の如く超高速でボールは飛んでいき消えていった。
リュウは5分程休憩を行い再び透視を開始した。
今度は世界眼で見る海底の世界が光に照らされている。先程リュウが投げたライトニングボールが深海の透視ポイントを照らしているためだ。リュウは透視とライトニングボールのコントロールを同期させ同時に操っているのだ。
透視と操作の両方を行う事も凄いが、ライトニングボールを軽く投げてピンポイントで届かせる事も十分凄い神業だ。
世界眼を使っての透視をしばらく続けていたリュウは岩陰から奥に続く洞窟を発見した。




