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武龍伝  作者: とみぃG
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193 成功報酬

これでしばらくはリュウが離れていてもこの世界は大丈夫だと確信したので一旦ローグへと戻った。


『これからローグのところへ行こうと思う』


『妾達も一緒に連れていってはもらえんのか?』

+

鈴鳴の頼みにリュウは少し考えた。復興に関しては問題なく進みそうだし、ローグが無い状況で鈴鳴達がここに留まっていても余り意味がない事を考えると一緒に連れて行っても良いかと思った。


ローグ跡地での対応はムーアと軍のリーダー達に任せることにした。ムーアは民間人だがリュウの秘書でもあるのでリュウとの連絡が必要になった際などの窓口となる。

それ以外にも軍の範囲の及ばない民間の商人などとのやり取りもムーアの管轄だ。ローグが無くなったとはいえ、この地が北と南の大陸の中心ハブとなっている事には変わりない。

ローグの街が無くなっても高速鉄道のローグ駅は復活したので交通や流通の拠点として機能させていかなければならない。

既に駅周辺には商業施設や宿泊施設などを建築しているので多くの人が今後訪れることが可能で全体をとりまとめる者が必要なのだ。言わば臨時市長の様なものだ。ムーア一人でこの大役を引き受けるのには問題があるのでマキワの国境警備都市のルードルフ男爵やニューシティの市長となったローマン公爵からも応援部隊が駆けつけ補佐をしてくれている。


リュウの秘書とはいえ、多くの役目をムーアに押し付けてしまって申し訳ないと思いリュウはムーアに声をかけた。


『ムーア、いろいろと押し付けてしまって済まない。この埋め合わせはローグが戻ってからちゃんとするから』


『それっていつ戻って来れるかわからないのですよね?ご褒美は前払いを希望します。あ、もちろん戻って来られても成果報酬をいただきますよ』


ムーアは笑いながら言った。ムーアとは色々あったとは言え、こうして自分や皆のために尽くしてくれ信頼してくれていることがリュウは嬉しかった。


『ちなみに聞いておくけど、前払いと後払いの内容は?』


『前払いは熱い抱擁と口付けを。後払いは私をもらって下さい』


リュウは最近のムーアを見て側室の話が出てくるかも知れないとは覚悟しておいたのだがやはりだった。ギルド会頭のナターシャとの事もあるし、どうしたものかと考えた。

自分が生きていれば昇爵と併せて側室に迎えてもよかったのだが自分は既に死んだ身。その事実を話して諦めさせるかどうかを悩んだ。考えた挙句、ムーアにはこれからも多くの事を託す事になるため隠し通すには無理があると判断して打ち明ける事にした。

他の者に聞かれない様にムーアを郊外まで転送させた。


『あら、伯爵様。早速報酬の前払いをいただけるのですか?』


ムーアはリュウの行動の早さに少し驚きながら紅潮していた。


『ムーア、君には本当の事を話しておきたい。これを知ったら後の報酬をキャンセルしてくれても構わない』


リュウの予想もしていなかった言葉にムーアは戸惑った。一体何を話されるのだろうか?幸せだった気持ちが一気に引いた。


『実はオーグとの戦いで俺は死んだんだ。今は魂だけの存在と言ってもいい。この体は魂の器にすぎないんだ。そんな訳で俺にはもう側室をとる資格はもうないんだよ』


ムーアは衝撃の事実を知らされてその目を見開いた。側室の話をはぐらかされるのか程度に思っていたのだが予想外の愛する人の死を告げられてムーアは沈黙した。


『伯爵様・・・私は伯爵様とオーグの戦いをこの目で見て知る数少ない者です。私の知る以上にオーグとの戦いは壮絶なものだったのでしょう。私達の為に身を粉にして戦って下さった伯爵様・・・』

ムーアは号泣していた。今この世界があるのもリュウのお陰なのだ。自分の命と引き換えに世界を救ったと言っても過言ではない。一体その事実をどれだけの人が知っているというのか。


『それで、伯爵様。お亡くなりになってこの世界に戻って来られましたが、あとどれ位居る事ができるのでしょうか?』


『そうだな。この器がある限り大丈夫なのだが、皆の寿命が尽きるくらいまでは問題ないな』


『よかった・・・まだ伯爵様とこうしてお話出来るのですね。先程側室をとる資格がないと仰いましたが、私はむしろ余計に伯爵様のお傍を離れたくありません。この命尽きるまでお傍に置かせて下さい』


リュウはムーアが諦めると思ったのだが実際は逆だった。


『この話をすればムーアは断ると思ったんだが思惑がハズレたな』


『はい。悲しいお知らせではありますが私はその程度の事では諦めませんよ』


『わかった。でもこれは俺一人で決めれる事ではないのでもう少し時間をくれないか。俺としてはムーアの気持ちに応えれる様にしたいと思っているから』


ムーアは涙を流しながらリュウに飛びつき口付けをした。リュウもムーアの気持ちを蔑ろにしないようにしっかりと受け止めて抱擁した。

しばらくしてローグ跡地に戻ったら早速鈴鳴から嫌味が放たれた。

『まったく、この二人はどこに行っておったのかのう。ムーアの目が赤く腫れて何をしとったのやら・・・』


『ふふふ、報酬の先払いですよ』


ジト目で見る鈴鳴にリュウは目を合わせなかった。


『まあよいわ。リュウよ、例の事、ムーアには話たのじゃな?』


『ああ、ムーアには話しておいた方が都合がいい事もあるからな』

リュウは鈴鳴に話したのは死んだという事実だけだと念話で語った。

『ところでリュウよ少し良いかの?』


鈴鳴はリュウを人の居ないところへ連れて行った。

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