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武龍伝  作者: とみぃG
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192 各地の様子

『さてと、俺が戻ってきた目的はこの世界を安定化させる為なんだ。ある程度様子を見て大丈夫ならローグの方に向かいたい』


『うむ、それで何をするのじゃ?』


『先ずはこの世界の各地の現在の状況を知りたいのだが』


『それなら各地に応援に出てた隊のメンバーが戻って来ているので彼らに聞くといいよ』


ユリンの提案で軍のリーダークラスが召集され各地の被害状況をとりまめた。集まった者達は先ずリュウの姿を見てその変わり様に驚いたが簡単にオーグとの戦いの影響とだけ伝えている。死んだ事は家族以外には伝えるつもりはなかった。

軍からの応援に出た者でもまだ帰還していない者も多くいた。現地の復興がかなり遅れそうな所や被害が大きく支援を集中させないといけない所へ滞在していたからだ。

北の大陸全土の治療を行っているカーラも同様だった。被害が大きかった北の大陸だったが建物などの破壊状況と比較して負傷者が少なかったのはカーラが治癒を行っていたからだ。上級神官でも治癒出来ない様な重度の負傷者をカーラが多数治療していたからこそ死者の数が少なかった。

カーラにも魔力に限りがあるので使い果たす事はせず、時間を掛けて全体の患者の治療にあたっていた。


各地の隊員からの報告をまとめるとやはり北の大陸の被害が大きかった。これからしばらく復興に時間を費やすことになるだろう。ローグが消えた今のマキワでは応援に出せる人材は残っていない。それよりもマキワの自体の復旧をここに集まった小数のローグ市民や軍の者でやっていかなければならないのだ。

南の大陸は軽微な被害で済んでいる。エレノアが行った治療の貢献も大きかった。その感謝の気持ちもあってか北の大陸の復興の役に立ちたいというボランティアの声も多く聞かれていた。

ローグの駅が消滅してしまったため今はリニア鉄道が運休している状態にあるが駅を早急に建設してリニア鉄道の再開を優先して行うことにした。これが再開すれば南北間を自由に行き来出来る様になる。

リュウはリニア鉄道のターミナルと破損したレールの修復を行った。

今のリュウの力は以前とは比べ物にならない次元となっている。その気になれば世界中の復興を一瞬で行う事も可能なのだが神の力で全てを解決することは良くない方向に向かう可能性があるため先ずは各地自分達で復興に取組ませて足りない部分を補うことにした。

リュウが危惧した良くない方向というのは何事も神頼みになるということだ。目に見えて神の力の恩恵があれば事ある毎に神に祈り解決できると思ってしまう。それは一種の堕落だ。やがてそれが信仰となり宗教として絶大な力を持つようになる。それは過去の歴史を見ても明らかな事だった。史実をみる限り宗教が絡むと碌な事が起こらない。この世界に居る者達には自分が神である事は伏せなければならなかった。だが以前は神に仕えるものとしてその力を発揮したに過ぎないので神という存在ではなかった。これからもそのポジションのままで居ることにした。


先ずはインフラを整えて各国間を行き来出来る様にすることが先決だ。

こういった時にローグ職人が居れば状況を察して手足の様に動いてくれるので助かるのだが今は別世界に飛んでいて不在だ。この役目はドワーフに担うしかなさそうだ。

リュウはドワーフへ飛んだ。以前のリュウは空間転移として自分の記憶にある場所、視界に入る範囲での転移が可能だったが、今は念じるだけでどこへも飛べる様になっている。やはり創造主の力というのは絶大だった。天界神がこの世界を創造したのでその範囲であればどこへでも飛べるのだ。


ドワーフに飛んだリュウは村長達に会った。最初は変わり果てたリュウの姿を見て警戒したのだが、すぐにリュウだと判ると警戒を解いた。


『おお!これはタイラ伯爵!!そのお姿、どうされました!?』


『オーグとの戦いの影響といったところです』


『想像を絶する死闘だった様ですな。ローグの街が消えたことは聞いております。ですがよくぞオーグを倒してくれました。この世界の者全員が伯爵に感謝しております』


『もっと上手くやれれば良かったのですが・・・。オーグの残した傷跡が多く残っています。しばらくは復興に力を注がなければならないでしょう。ですが、肝心のローグの職人達は別世界に飛んでいます。不在の間ドワーフにお力を貸していただけないでしょうか?』


『何を仰います。それはお聞きするまでもない事、我らは全力で復興の支援をさせていただきますぞ。伯爵に救って頂いたこの世界、今度は我々が頑張る番です』


村長は何の躊躇もなく復興支援の全面協力を申し出た。


『ありがとうございます。そう言っていただけると助かります。それで被害の状況ですが、南の大陸は軽微ですが、北の大陸の各国が甚大な被害を受けております。交通網のインフラや町の修復などに協力して貰えないでしょうか?』


『わかりました。早速部隊を編成して各国への支援に向かわせましょう』


村長は快諾し里の若い連中を各国の支援部隊として選抜した。先ずは遮断された交通網の復旧から着手することとなる。


その後リュウは獣人の里やエルフの里へも赴いた。各地の状況を説明すると共に復興にドワーフが動いているので出来る範囲で協力して欲しいという要請だ。こちらでもドワーフと同様にリュウには大変感謝しており協力は惜しまないと快諾してもらえた。


獣人の里ではクリフが事後処理にあたっていた。本来各隊員はローグへ帰還しなくてはいけない筈だが、クリフも一旦帰還したところ肝心のローグが消えて無くなっていたので再び獣人の里に戻って里の支援を手伝っていたとの事だった。リュウからは正式に継続して獣人の里を支援する様に命をクリフに下した。

今回の戦闘でのクリフの軍師ぶりは素晴らしく、獣人の里での被害は最小限に抑える事が出来たこともあり既に里の住人にクリフは認められ受け入れられていた。このままラナとクリフは結婚するのではないかとリュウは思ったが獣人と人間の結婚は今まで前例がなかったのでもし実現すれば最初のケースとなりそうだ。ラナはローグが戻ったら住居をローグに移してクリフの仕事を優先させたいと言っていた。

軍としては諜報員として有能なクリフに抜けられるのは痛手となるのでそうしてもらうと有り難い。


こうして南の大陸各地から北の大陸の各国への復興支援プロジェクトが開始された。

北の大陸では大勢の初めて見る人間以外の種族達に最初は戸惑っていたのだが、時間が経つにつれて一緒に作業を行ったり交流を深めたりした。

こういった災害復興の様な一つの目標に対してお互いに協力し合うという作業は信頼関係を深めるのに効果的だ。まだ知り合って時間も経っていないのに僅か数週間で長年の友の様な絆が出来ていた。

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