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武龍伝  作者: とみぃG
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189 けじめ

痛み狂うオーグに対してリュウはオーグの反応を待つでもなく次々とオーグの急所目掛けて攻撃を仕掛けた。足のや手の関節に打撃を受けてオーグはまともに反応出来ずやられる一方だ。


『おのれ!ふざけおって!!』


あまりに一方的な状況に我慢ならずにオーグはリュウ目掛けて手で叩き払おうとするが小さな標的のリュウは軽く避けるだけでオーグの攻撃をすり抜ける。


『一万倍強くなったと言っても動きはそれ程でもないんだな』


スピードが一万倍になっていればリュウも簡単には避けられなかっただろうが、オーグの力はパワーや魔力が増大しただけで瞬発力は元の倍程度の動きに過ぎなかったのだ。

このままでは危ういと感じたオーグは魔力を使った攻撃に切り替えた。


『このまま遣れたままでいると思うなよ。圧倒的な力、思い知るがいい!』


巨大な暗黒球が突如として出現した。禍々しいまでの黒い塊が無数に浮かんでいる。

リュウ目掛けてその全てが放たれた。暗黒球は一つの大きさが直径5メートル程ある。それが数百発ほどリュウに向かっていった。

一発がリュウに命中すると続いて残りの球が全弾リュウに着弾した。


先程のスピードと異なり魔力は正真正銘オリジナルの状態より一万倍の威力となっているのだ。そのオーグの放った暗黒球が全弾命中したのだから最早決着がついたものとオーグは思った。

ちなみにこの暗黒球1発の威力は原子爆弾が数発分の威力に等しかった。

爆風が収まり、闇の煙が徐々に晴れてきた。リュウが立っていた場所には何も残っていなかった。


全てが片付いた。オーグはそう思っていたのだが空間が眩い位の明るさで輝いている。上空には数百の光の塊が浮んでいた。


『今度は俺の番だな』


オーグはまさかと思い声のする方角を見た。そこには全く無傷のリュウの姿があった。


『これは聖なる光輝く球、聖輝球だ。存分に味わえ!』


リュウの放った聖輝球は一発が50センチ程の大きさだ。だがその形は大きくなったり小さくなったりを繰り返しており、力を抑えるために形を保つのがやっとといった具合の高い圧力で圧縮された圧縮球だった。 それ程大きくないのだが絶対的な質量が高く魔力を見れるものが見ればそれがどれ程の脅威なのかはすぐ判るものだった。


聖輝球は50センチ程度だが巨大なオーグに当てる事は難しくない。

的が大きいだけに攻撃もしやすい。

数百ある球が物凄い勢いでオーグ目掛けて着弾し炸裂した。


『グワアアーーー』


オリジナルの何倍もの防御力を誇るオーグだったが聖輝球の威力の方が勝っておりオーグに当たってもそのままオーグの体を貫通し突きぬけていった。光の速度の数倍という速さで飛んできた聖輝球にオーグは何ら対処をすることも出来ずに全ての攻撃をを受けることとなった。

25メートルのオーグの巨体に数百の風穴が開き蜂の巣状態と言ってもいい状態になっていた。


オーグには再生能力がある。だがこの聖なる攻撃は細胞再生を阻止し壊死させてるので傷口を再生することは適わなかった。貫通した聖輝球はオーグの血肉をえぐり取るだけでなく魔力そのものも奪っていった。

巨体を維持することが出来ずオーグの体は元の2メートルの体に戻った。体には無数の風穴が開いたままだ。人間なら既に死んでいる状態だがオーグは人間ではない。この程度では死なないのだ。いや、死ねないと言った方が正しいかも知れない。

体中に穴が開いた状態は想像を絶する痛みを生じた。

オーグは痛みの余りにその場でのたうち回った。風穴はオーグの体の至る所に孔けられており、声帯や眼球、鼻といった視覚や嗅覚、呼吸、全てを奪い去れており最早声を出すことも許されない状態となっている。


今の2メートルの大きさに戻ったオーグに聖輝球を一発でもぶつければ消し飛んでしまうだろう。だがオーグを消滅させることは天界神から止められているのでリュウはそれをしなかった。


『残念だったな。天界紳の力を持つ俺を倒すには百億くらいお前の分裂体を用意すれば良かったんだがな。まあ揃えたところで烏合の衆になることは目に見えているが』


『ガアアアアーーー』


人間ならショック死するか精神崩壊しているだろう。だがオーグは自我を保ったまま痛みを感じ続けているのだ。リュウの言葉が耳に入っているのかどうかも判らない程に狂乱してもがき苦しんでいる。

その姿は先程まで自信に満ちていた邪神オーグではなく無残に暴れ狂う狂人だった。


リュウはこの状態までが自分の役割だと考え、目線で天界神に合図を送った。天界神も良く出来ましたと言わんばかり頷いていた。


『オーグよ。自らの過ちをその痛みによって償いなさい。その期間は永遠です。貴方を無限回廊に送ります。誰も足を踏み入れる事の出来ない絶対領域です』


今のオーグには聴覚が残っているのかも判らず苦しみもがいているのだが、天界神の声は脳に直接届く様になっているので本人が聞く気がなくてもその言葉は理解させることが出来た。


天界神は言うべき事を全て言ったあとでオーグの四方を聖なる壁で覆った。壁はやがて繋がりキューブ状の立方体となりその中心にはオーグが閉じ込められている。


天界神が更に力を注ぐとキューブは圧縮されその大きさは半分程度になりやがて手のひらに収まるサイズまで縮まった。この圧縮は結界の強度にも比例する。更に内部が圧縮されるということは中に閉じ込められているオーグに対する痛みも増幅されるということで今まで味わった苦痛の何倍もの苦痛が倍増されたことになる。だがその痛みによる悲鳴は誰の耳にも入らない閉ざされた世界だった。


これだけの濃密な圧縮をする結界を施す事が出来るのは天界神だけである。結界を張れるのが天界神のみという事はそれを解除できるのも天界神だけなのだ。オーグは天界神の許しがない以上は結界から出ることは適わない。


やがて天界神が手をかざすと箱はどこかへ消え去った。


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