185 授かった力
一部前184話と会話が重複していたので修正しました(16.11.19 AM8:35)
天界神から身体と呼べる器を授かったリュウは手足を動かした。その動作は生前と何ら変わりなく違和感と呼べるものは見当たらなかった。
むしろ何事を行うにもストレスがなく軽快そのものだった。恐らく単純な動作程度では疲労の類は感じないのだろう。身体の動きにも切れがあった。
シャドウボクシングの様に軽くジャブやアッパーをするリュウを天界神も笑顔で見守っていた。
その笑顔があまりにも可愛くてリュウはドキっとするのだが平常心でその気持ちを封印した。
『ふふふ、私の事、気になるのでしょう?さっきの儀式の影響かしら?』
天界神が意地悪そうに笑いながら言った。
『茶化さないでください。俺も一応健全な男子なのです。反応しない方がおかしいですよ。』
『そうよね。じゃあ、どうする?やる?』
リュウはコケそうになった。一体何をやると言うののだ。おいおい、この人本当に天界神なのか!?そう疑う様な発言だった。
『失礼ですね!何度も言いますが私は本物の天界神よ!』
『失礼しました天界神様、ですが、本当にすばらしい力を授けていただきありがとうございます。とは言うものの、実際にどれくらいの力が備わったのか実感がありませんが・・・』
『心配には及びません。貴方には私の力があります。オーグなど足元にも及びませんよ。それに、オーグを倒せば終わりという訳ではありませんからね。まだ災いは続くのです』
『厄災の元凶であるオーグを倒せば世界は救われて元に戻るのではないのですか?』
『本来であればそれで済むはずなのですが、オーグは持ってはいけない力を持ってしまい、その強大な力を良からぬ事に使ってしまいました。それによって世界の理の一部が崩壊してしまったのです。オーグを倒しても歪んでしまった世界の異常を直さない限り本当の意味で世界は救うことはできません』
『よくは判りませんがまだ危機が続くということなのですね?でも、そんな大きな世界の危機に対して、何故俺なのですか?それこそ俺個人なんかが出来ることは知れてますけど』
『何を言っているのです。貴方はもう人間ではありません。神の上を行く存在なのですよ。その力を用いて私と共に世界を見守っていかねばならないのです。
まあ、突然のことで貴方には理解できないのも無理はありません。まずはオーグを倒すことに専念しましょう。その先の事についてはその時にお話しします』
『わかりました。それでどうやって倒すのです?作戦とかは無いのですか?』
『判らないのも無理はありませんが貴方が思う様に戦えば良いのですよ。それこそドカーーンとやったりグチャーっとしたり。負ける事の方が難しいでしょうね。ガンガンやっちゃって下さい』
『俺へのアドバイスがその擬音ですか・・・まあいいです。実際に戦いながら考えます』
リュウは頭が痛くなったが、このやりとりを懐かしく感じた。鈴鳴がリュウをリラックスさせようとたまに茶目っけのある行動をする時に似ていたのだ。やはりこれも気を遣ってくれているのだろうか。
そう考えたがまた心を読まれて何か言われるかと構えたが天界神は何も言わなかった。
『あ、でも、やはりオーグは消滅させてはいけないのですよね?消滅させずに倒すとなると封印の様な感じですか?』
『そうですね。消滅させてしまうのは良くありませんね。極限まで弱らせてもらえば結構です。最終的な結界封印は私の力で行いますのでオーグには出来る限りの苦痛を与えてやって下さい』
天界神より授けられた擬体のリュウはその姿形こそ以前のリュウのままだったが、髪の毛の色は白色の長髪となっている。以前のリュウはショートカットだったので見た目の雰囲気は大きく変わったと言えた。目の色も黒から金色に変わった。
今までの世界では金色の目は存在しなかった。人間には存在しなかったが狼などの化身には金色や銀色の眼を持つものはいた。
なので一番の変化と言えばこの眼だろう。
この金色の眼は単に色が異なるだけではない。その眼は魔眼と呼ばれるもので眼の力だけで魔力が使えたり千里眼とは比べ物にならないくらいの察知能力を備えていた。
身に纏う衣装も白を基調とした神官着の様なもので、その服を構成している糸の一本一本にかなりの聖なる力が注がれていてオーラを発し輝いている。
リュウは自分の変わった姿を一望してその能力が計り知れない程向上していることが判った。それは魔眼を使うまでもなく能力として見極めていた。
先程までオーグに苦戦していたので再び戦いとなることに些か不安があったが自身の能力を理解すると不安が一掃された。
『さあ、お行きなさい。オーグを倒して世界を救うのです』
『はい、行ってきます』
天界神により空間が閉ざされて元の次元の狭間へとリュウは戻った。