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武龍伝  作者: とみぃG
183/222

182 消滅

<次元の狭間>

オーグの放った暗黒の霧を爆発させる攻撃で次元の狭間空間全体が爆発した。爆発と爆風、爆風によって残骸の破片が全体に爆散し生命が生存できる状態ではなかった。

当然その中にいたリュウも同じだった。リュウは両手足と首に装着された防御帯の防御力を遥かに超えるその威力に抵抗できず、その体は木っ端微塵に吹き飛ばされて形も残らない程となりその生命が消滅した。


一方オーグは自身が爆発に影響されないように爆発に指向性を持たせ自分とは反対方向への爆風とし、自身を多重の闇結界で覆ったため無傷のままだ。


リュウが最後に見た光景は光が闇に変わった瞬間に飛んできた何かと爆音が耳に入ったというだけだ。闇の中での爆発だったのでそれが何だか判らないまま死ぬこととなった。


暗い世界を彷徨うリュウの視界に明るい世界の光が入ってきた。その光景を感じて自分が死んだことを理解した。


『やっぱりオーグを倒すことは出来なかったか。まあやれるだけの事はやったな。あとはオーグが次元の狭間に留まってくれることを祈るだけだな。って、死んだ俺が祈ってもしょうがないんだが・・』


リュウは死後の世界がこの様になっているんだと感心していた。温かく心地よい世界、そんな感じがする。オーグに敗れて悔しいはずなのにそんなことは些細なことと感じてしまう。


『これから俺はどうするんだろうな?やっぱり何年もかけて次の生命へと転生するんだろうか?』


よく小説などで書かれている輪廻転生をリュウは想像した。次が猫とか犬だったらちょっと嫌だなあ、でも昆虫よりもマシかとか他愛のない事を考えていた。


そんなリュウの頭上に眩いばかりの光が差し込んだ。その光は天の上から降り注いでいるのだが上空から降り立つ天使の姿が見えた。

正確には天使かどうかは判らないが人の背中に大きな羽が生えており、想像の天使そのものだったからだ。

そしてその天使の顔は見たこともないくらいに美しかった。普段クリスやソフィアといったこれ以上ない程の美人に囲まれているリュウだが、その天使は形容し難い次元の違う美しさといった感じなのだ。

それは好みとかでなく存在そのものに愛しさや憧れ、敬愛が込み上げて来ると言った方がよいかも知れない。


『天使様・・・ですか?ということはここは天国?』


リュウは唖然として少し間抜けな質問をしてしまった。自分はどうせ死んだら地獄行きだと思っていたのが天使が現れたので少し気が動転していたのかも知れない。


『くすっ、いえ、私は残念ながら天使ではありません。あなた方の神である存在の神、世界の創造主と呼ばれる存在です』


『神様の神?どこかで聞いた様な設定だな?』


『嘘ではありませんよ。ここは私の世界です。あなたは死後の世界と思っているでしょうがそれは間違いです。死後の世界には死んですぐには行きません。現世に未練のあるものは魂が留まり続け、未練のない者も時間を掛けて成仏することで天界へと昇華されます』

『ここは死後の世界ではないのですか?だとすると俺は何故ここにいるのでしょうか?』


『あなたがここに居るのは私のお願いを聞いてもらうためです』


『神様の神様が?ただの人間の俺にですか?』


『天界紳です。今はまだ何のことだか判らないでしょうから順を追って説明をします。

邪神オーグの出現とあなたが異世界へと飛ばされた事は無関係ではありません。この話をする前にあたなの世界の事を話さなければなりません。


あなたの世界では12の並行世界が存在することは知っていますね。これは実は並行世界ではなく異なる銀河の星々なのです。

人がどの様な過程で成長を遂げるかを12の銀河の地球に同じ条件で開放してその成長を見届けていたのです。ですが、残念ながら人間は未来というものをあまり考えていませんでした。

文明が高度になるにつれて利己的になり殺戮兵器や環境破壊を繰り返し自分達の世界を滅ぼしていったのです。


既に5つの星が枯れ果て滅亡しました。そして4つの星が滅亡の危機を迎えようとしています。

あなたの居た世界の地球もやがて同じ道を辿ります。温暖化、砂漠化、核戦争、これらにより土地が枯れ放射能が蔓延し人間は住むところも食べる物の無くなっていきます。

一気に無くなるわけではないので多くの人口を抱える国同士で生き残りを懸けた戦争を繰り返していくのです。最後に残った国も既に住める状態ではなくなっているので死滅してしまうのは時間の問題となってしまいます。

ほぼどの星もこの末路を辿っています。

そして星の消滅、生命の消滅による負の感情が大量に流れてオーグの邪神化へのきっかけを作ってしまいました。彼の強大な力はこれらの星の全ての負の影響によるものなのです』


リュウは天界神の話を聞いて半信半疑だった。スケールがあまりにも大きかったからだ。そのスケールの大きい話に何故自分が関わるのか?そこも疑問だった。


『天界神様。その星の行方と俺とはどう関係するのですか?』


『そうですね。あなたが疑問に思うのは尤もです。思い出して下さい。あなたが元に居た世界から転移した時の事を。

そしてあなたは白翁仙人に出会い仙人界で修行をして力をつけました。その後あなたの活躍によって世界が救われ平和を取り戻しただけでなく種族の壁を取り除き技術や文化の発展を遂げました。


これはあなたが起こす未来を知っていた白翁があなたを転移させて呼び寄せたのです。ですが白翁は私の指示で動いたに過ぎません。

もちろんこの事は白翁自身は知りません。私が潜在的に白翁を操っての行動ですから』


リュウはそれを聞いて驚いた。いや、驚きつつも何事もトントン拍子に進んでいる感があり何者かの思惑に乗せられているのかという疑念もあり、その何者かが白翁や龍王ではないかと疑っていたのだが、その張本人が神の神である天界神だったとは思いもよらない展開だったからだ。

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