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武龍伝  作者: とみぃG
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178 もう一つの世界の危機

首相の北条から出た言葉は国王達が想像もしていなかったものだった。むしろ自分たちが危機にある状態だというのに更にこの世界も同様だということは悪い冗談の様にも聞こえた。


『いや、唐突で申し訳ありませんでした。少し咀嚼して話をさせていただきます。この世界の情勢なのですが、過去から地球温暖化や環境破壊が騒がれていましたが、ここ数年でその事態が深刻化してきたのです。地球の温度が毎年少しずつ上昇しています。これは化石燃料の排出ガスやオゾン層の破壊などが主とした原因となっています。

地球の温度が上がると北極や南極の凍っている凍りが解けてきます。その量は膨大なもので海面が上昇するため海岸線が陸地の奥まで後退していき人が住める場所が少なくなっていきます。


それに加えて砂漠化の現象が顕著に現れてきているのです。砂漠は以前では限られた地域で収まっていましたが森林伐採などの環境破壊により土地が枯れ果て砂漠化が広域に及ぶ様になりました。


こうしたいくつもの現象が重なったことにより人々の住む場所が無くなり、生活の源と言える食料が不足し始めました。それによって食料や物資、領土などを奪い合う戦争が起こり始めたのです。


貧しい国から豊かな国へと戦火は世界全土へと広がっています。幸い我々の国は極東である事と島国であるので他国からの影響は少なく、その監視下におけるアジアの各国もまだ緊迫した状況にはありません。ですが、この先その影響が我々のところにもやってくるのは時間の問題と言えます。

戦争も核を使ったものとなれば放射能汚染が懸念され本当の意味で星が死んでしまいます。


お恥ずかしながら我々の置かれた状況を知っていただきたいと思いお話させていただきました』


『お話はわかりました。正直言いますと大変驚いております。我々には想像もつかない状況にあるったのですね。ですが、何故私達にその事をお話になられたのでしょうか?』


『はい、我々には今の状況を打開する術がありません。発達した近代技術をもっても地球の温暖化や砂漠化を防ぐ有効策を長年研究してきましたが見出せませんでした。

ですが、貴国の様な別の世界のテクノロジーを持ってすれば何とかなるのではないか?という藁にもすがる気持ちでお話をさせて戴いた次第です』


国王は考えた。この問題もリュウが居ればすぐに解決したかも知れない。国王は技術については疎かったので良い解決策が出てきそうにもなかった。それを見かねてクリスが助け舟を出す。


『実は私共の国は数年前までは非常に貧しい国でした。あまりの貧しさでしたので諸国から国と認めてもらえず一つの領地的な扱いだったのです。なぜ貧しかったかと申しますと私達の国の領地の殆どが砂漠だったからです』


クリスの言葉に首相達三人が反応を示した。砂漠という言葉が出てきたからだ。


『砂漠が多かったので作物は育たず特産品と呼べるものも少なかったので交易でも得られるものはありませんでした。

ですが、私の主人が来てからその生活は急変することとなりました。砂漠の土をある別の土地の土と混ぜ合わせることによって豊かな土壌を作ることが出来たのです。その土を使えば通常の作物の三倍の速度で収穫することが可能となりました。その他にも工業や産業の様々なものを取り入れることにより人々に職が生まれ街が活気付いていきました』


『それは大変興味深いお話です。皇女、その土というのは我々にも扱えるものなのでしょうか?』


『恐らくですが、この世界にはないものだと思います』


期待を持っていただけにクリスの言葉に首相達は落胆の顔が隠せなかった。


『ですが、我々のローグにはその土があります。培養をすればなんとかこの世界にも根付かせる事が或いは出来るかも知れません』


『おお!本当ですか!?』


『はい、今日ここに技術者の責任者も一緒に来ておりますのでこの後彼に相談してみます。

ですが、その方法がうまくいったとしても砂漠化の問題が解決するだけで他の問題については残ったままですね。

主人から聞いたことがあります。この世界では地下に埋蔵されている石油に頼り過ぎたことが過ちだったと。先程一条総理も仰られていた化石燃料によるものがそれに当たるのだと思います。


主人は砂漠の地下に眠る石油も利用しましたが燃料という使い道ではなく資源としての有効活用でした。その石油から精製して様々なものを有効利用しています。


我々が化石燃料を用いなくても生活や工業が発展出来たのは魔法があったからです』


当初、国王達は魔法については秘匿しておくのが望ましいということで結論が出ていたが、今の深刻な状況を聞いた以上は伏せておく事は難しいと判断してクリスは魔法について語ることにした。


『魔法ですか?』


首相は冗談としか思えなかった。


『この世界に魔法が無いことは存じております。ですが我々の世界では魔法は実在する能力なのです。なかなか信じていただけないとは思いますが』


そう言うとクリスは服の内ポケットから小型のナイフを取り出した。

内ポケットが空間ポーチとなっていたので様々なものを取り出す事ができた。

クリスが武器を取り出したので警備の者達が反応したが首相がそれを静止した。


『このナイフは先程までは私は持っていませんでした』


『確かに。ここの入り口には金属探知機が備えてありますが反応はありませんでした』


『ナイフ以外にも様々な物が取り出せます。それはポケットが別の空間に繋がっているからです。ですが、今はそれをご説明しているのではなく、魔法をこれからお見せするためです』


そう言うとクリスは自分の手の甲にナイフを突き刺した。


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