表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武龍伝  作者: とみぃG
167/222

166 リュウの決心

『伯爵様どうして・・・私たちは伯爵様になにもしてあげることができなかったというのに・・・』


ムーアは自分自身もまたこの世界の人達もリュウからは多大な恩恵を与えられたが逆にリュウには何も返せていないことを悔やんだ。

しかも自分はそんなリュウに愛する人を殺した相手として逆恨みしリュウに刃を向けた愚かな行動をしていることも一生をかけても悔やみきれないでいるのだ。


『そんなこと決まってるじゃないか。俺がこの世界を好きだからさ。

親のいない俺は小さい頃からずっと孤独だった。

生きるために戦うしかなく殺戮が日常で気付けばいつも独りだったんだ。

いや、むしろそれが心地よかった。

だが、この世界に来てから俺は家族が出来た。そして大切な仲間が出来た。

決して戦うだけでなく話し合い理解しあえる楽しさ、喜びを知ることが出来たんだ。


俺はそんなこの世界が好きだしこの世界を壊させはしない。例えこの身が滅びようと俺はこの世界を守り切ってみせる』


『伯爵様・・・』


ムーアはリュウの言葉に胸が一杯で言葉が詰まった。

これ以上どんな言葉をかけて良いか思い浮かばなかった。


リュウは以前の世界では生きることに楽しみを感じたことはない。殺戮を繰り返してきた生活から社会人になることで変わるかと思ったが根本的には変わることがなかった。

趣味もネットやゲームとすることで若者の考えや行動を理解できるかとも思ってはじめたが夢中にはなったが虚しさもあった。

いつも心には穴が開いた状態だったのだ。

それがこの世界に来てから少しずつその心の穴が埋まっていく様だった。

もしリュウが小さい頃に両親と死に別れず普通の家庭で育っていたらこの様なことにはならなず平凡な人生を歩んでいただろう。

だがそれは”もし”であって実際はどうなったかわからない。

リュウは今の世界で生きることに充実感があった。そしてこの世界の人にも少なからず生きる楽しさや希望を持たせることだ出来たと思っている。

リュウとしても道半ばといったところでまだまだこの世界で試したいことがある。だが、先ずはこの世界を存続させることが先決だ。

自分にどこまで出来るか判らないがやれるだけの事はやるつもりだった。


『リュウ、其方の大切にするこの世界、きっと救ってみせようぞ。妾も其方の帰還を信じておるぞ』


鈴鳴も今となっては信じるしかなかった。神が神頼みというのもおかしいが神といえども祈りたい気持ちはあるのだ。


リュウも信じて待ってくれる人がいるというのは励みになった。

意地でも生還してみせるという気になる。


『龍王様!白翁様!お願いします!』


リュウは決心を固めた。龍王達に隙を作ってもらう様思念でお願いした。


『うむ、しかと承知した』


『ふぉふぉふぉ、任せるのじゃ』


龍王は懐から一つの拳大の塊を取り出した。その塊を天に向けてかざすと光の発光球となった。発光球に白翁が魔力を注ぐと円盤状に変形し中心部に穴が開いたリング状へと形態変化した。リングの大きさが徐々に大きくなり5メートル程の大きさにまでなるとオーグに向かって飛び去った。


強い聖なる力が向かってくるのにオーグは構えた。オーグは全ての物を吸収させる事に集中しており他の会話や行動に注力は注げないのだが攻撃に対しては見逃すことはない。

だが、リングはオーグへ攻撃することはなかった。オーグの手前で急上昇したのだ。

あっけに取られたオーグを他所にリングは上昇を止めてオーグの頭上から降りてきた。


攻撃でなかったことに油断をしたオーグだったがリングは今は攻撃していないに過ぎなかった。

オーグの頭上からリングを急降下させ中心部をオーグの体の位置まで持っていくとリングが急に小さくなりはじめた。

これは最初から攻撃を狙うものではなく拘束をするためのリングだったのだ。


孫悟空の頭にキンコジというリングがあって三蔵法師が経を唱えると頭が締め付けられるが、それを胴体に施したリングを思えば判りやすい。


膨大な魔力とパワーを持つオーグだが賢者の石を小石大で1万個を凝縮させて作られたこのリングはそのパワーを持っても抗う事は出来なかった。

オーグの体はどんどん締め付けられて身動きが取れなくなり吸収も中断された。


『うおおおっ!なんだ!?これは?力が出んぞ!?』


オーグは力を集中させリングを破断させようと試みたが力が出せなかった。リングの効力として相手の力を無効化させるというものがある。なのでこのリングを発動させることは絶対拘束が発動されるということとなる。


オーグは焦ってもがき苦しむが拘束は強化され続けていった。


最初からこのリングで攻撃すればオーグを封印できた筈と思うだろうが、このリングはそう簡単に作れるものでなく長い年月をかけて凝縮されている。又、持続時間もそう長くは持たないのだ。

短時間に集中させているからこそオーグを拘束出来ていると言っていい。

なのでオーグの封印で呪文を唱えても途中で解除されてしまうのだ。


『リュウ!今がチャンスだ!!』


リュウはオーグの前に瞬間移動し空間転移を発動させた。


『それじゃ、行ってくる!』


泣きながら見送る鈴鳴とムーアに手を上げると空間が歪みリュウとオーグは次元の狭間へと飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ