164 神の助太刀
オーグは闇を掃われた原因が龍王達の仕業だという事を鈴鳴と龍王との会話で知った。
『誰かと思えば龍王と白翁ではないか。もしやと思えばやはりお前達の仕業だったか』
『ああ、オーグ悪いな。今回も邪魔をさせてもらうぞ。骨折り損を又味わうがいい』
『丁度良いわ。長年に渡り力を封印され続けてきた恨み晴らす時が来た様だ。今の儂を今までと同じと思わん事だな。長い年月の恨み分闇の力が格段に上がっておるわ』
『いや、今回もその力封印させてもらうぞ。より強固な封印として二度と破られぬ様にな』
龍王とオーグは睨み合いを続け今にも戦いが始まろうかとしていた。
『白翁よ。仙人界から来たのは其方ら二人だけか?』
『ふぉふぉふぉ、無論儂ら二人だけでは力が足らんからのう。他の神4人も各地に配置して闇を掃っておるぞ』
闇の濃度が一番濃いのがオーグのいるこのローグ周辺だった。それ以外の地域はそれ程濃い闇に包まれておらず、分散した仙人達でなんとか闇を掃うことの出来るレベルだった。
他の神の救援もあり多勢に無勢となってしまったオーグだが、その顔には余裕が見られた。
『不可解だな。オーグ、何故に余裕の顔をしておる?』
『そう見えるか?闇が晴れた程度で勝ったつもりでいるお前らが滑稽で仕方なくてな』
『なんだと!?まだ何か企んでいるのか!?』
『闇が無くても儂の力は存分に発揮できるという事だ!』
オーグが言い放つとブラックホールの力が作用した。近くの物からすべての物を飲み込んでいく。
『マズイぞ!早く止めるのだ!!』
龍王や白翁はオーグを止めるためその力の封印に掛かった。だがあまりにも強力なその力を前に術が全く効かなかった。
このままではローグが真っ先に吸い込まれてしまう。
リュウは先程浮遊させたローグの状態のままローグを異空間に転移させた。これ程大きな物体を異空間に転移するなど以前のリュウでは出来ないことだったが、真仙桃を食べてレベルアップをした事で可能となったのだった。
ローグを転移させた跡地には城門だけが残り市街地跡は大きな窪地となっていた。既に城門はオーグに端から順番に吸い込まれている。リュウの転移が遅かったら取返しのつかない事になっていただろう。
『リュウよ、よくぞローグの街を守った。じゃが大きなちからを使い過ぎて其方には殆ど力が残っておらぬではないか』
鈴鳴の言う通りローグを街ごと異空間に転移させた事でリュウの持っている魔力の9割を使い果たしてしまった。
1割の魔力では戦闘は行う事が殆ど出来ない。生命維持や活動を行うのにギリギリの魔力しか残っていないのだ。むしろそれは魔力というより生命力と言った方が正しい。
『これじゃあローグを戻す事もできないな・・・まあ、無事に事が済んだらの話だが・・・』
龍王と白翁は必至でオーグを止めるべく手立てを講じている。だが、二人合わせてもオーグの力には及ばず封印が出来ない状態が変わるものではなかった。
オーグへの吸収は龍王と白翁には作用しない。神同士が互いに干渉出来ないことによるものだ。元神のオーグは現神を直接攻撃する事が出来なかった。
近隣にいるムーアとリュウが吸い込まれていないのは鈴鳴が二人を神の力で繋いでいたからだ。
『オーグの力がこれ程までとは思わなんだ。一体どうやってこの様な力を手に入れたというのだ』
『龍王よ、驚いたか。お前を出し抜く事が出来て満足だ。これだけの力、何故手に入れられたか判らぬか?それだけ積年の恨みが積もっていたという訳だ。それに加えてカグラという流れ人の造った装置で負の感情を倍増させる事が出来たからな。それを無限ループさせて倍増に倍増を重ねたという訳だ』
神楽元、死んでしまったが今尚厄介な存在だったことを痛感するリュウ達だった。
オーグの吸い込みは既にローグ近隣の高速鉄道の駅や線路、ローグ周辺の幹線道路にも及んでいる。全てを薙ぎ払い吸い上げていった。
このままではマキワだけでなく北の大陸全土、やがて南大陸に及んで全世界が吸い込まれていくのは時間の問題だ。
『リュウよ。先程もらった力、返させてもらうぞ』
鈴鳴はそう言うとリュウと口付けを交わした。魔力を鈴鳴からリュウへ伝達するためだ。二人は白く光ると魔力が鈴鳴からリュウに流れリュウの魔力が回復していった。
二人のやりとりを見ていたムーアも世界の危機的状況を前にして抗議するどころではなかった。むしろ自分にも膨大な魔力があれば同様にリュウに分け与える事が出来るのにと思っていた。
『済まない、鈴鳴。助かった。あとは養仙桃で補うとする』
『当然の事をしたまでじゃ。借りたら返すは常識じゃからの』
鈴鳴は顔を赤くしながらそう返すのが精一杯だった。
リュウの魔力が回復したからと言ってオーグの力を止めれる訳ではない。龍王と白翁の二人掛りでも相手にならないくらいなのでリュウが加わったところで状況は変わることはないだろう。恐らく後の4人の仙人が加わったとしてもオーグの力の半分にも満たない。
オーグの力の反則的な量に絶望感が漂っていた。
だがリュウはオーグを倒せるのは自分しか居ない事を理解していた。