160 クラリス VS ガズル
クラリスの召喚したロボット、クラリスロボは全長は約20メートル。二足歩行型ロボットでコックピットは腹部にある。人間と同様の関節で動作し、武器も様々な物を持つ事で換装可能だ。
主となる攻撃武器はビームサーベル、ビームマシンガン、ロケットランチャーなどとなる。
装甲はチタニウムの様なこの世界特有の超合金で軽量かつ強靭な素材で出来ている。
アニメに登場するロボットは核融合炉を動力源としていることが多いがクラリスロボは魔力を動力源としており全く異なる原理で動いている。
『この様な大きな建造物が動くのですか?』
ロボットという存在を始めて見るムーアは大きな石造しか知らないため、このロボットが動き回るところを想像がつかなかった。
『これはあれじゃな。ストーンゴーレムの様なものじゃな。と言っても妾の知るゴーレムとは様相がかなり違うのじゃがな。』
鈴鳴はまだ召喚で傀儡を操る術を知っているのでそれ程の驚きはない。だが召喚の傀儡は遠隔操作で操るのが基本で自身が搭乗して操作するものではない。
胴体のハッチ部が開き上からワイヤーが降りてくる。そのワイヤーに足をかけてクラリスはロボへと搭乗した。
実際にロボットを現実として作るには相当な労力と技術が必要だ。関節ごとにサーボモーターを動かしその制御を行わなければいけない。二足歩行を実現させるためにジャイロセンサーで重心のコントロールが必要など何かと難しい技術をクリアしなければならない。
人間という動物の中でも稀な二足歩行動物だが、二本の足で立って動くということはそれ程高度なものなのだ。
クラリスにはその辺の技術が完璧に再現できるわけではない。もっと手っ取り早く、荷重を地面に掛けず常に地面から少しだけ浮遊させている状態にしてある。ホバー技術を使えば簡単なことだ。
移動も歩行というより飛行で行う。逆にその方が俊敏な動きが出来た。
『また奇をてらったものを出してきおって!叩きつぶしてくれるわ!』
ガズルは黙ってクラリスを見ている筈もなくクラリスロボに向かってダッシュした。
『えっと・・これの操作は・・確かマニュアルに書いてあったような・・右のレバーが・・・』
クラリスロボのコックピット内には数多くの計器類やスイッチなどの操作ユニットが並べてある。これからその一つ一つを確認している時間はない。
ガズルから渾身を込めたナックルが放たれる。クラリスロボの顔面目がけてガズルのガズルの拳が振るわれた。巨大になったとは言えそのスピードは目にも止まらぬ速さだ。恐らくローグの城壁ぐらいならこの拳一つで粉砕することも可能だろう。
ガズルの放った正拳を顔面の手前でクラリスロボは掴みとった。
『なーんてね。自分で作ったのに操作がわからない訳ないじゃないですか』
クラリスは思念で操作をするため計器類は必要なくなんとなくの雰囲気作りで用意しているだけだった。
先程から何やら自演しているクラリスを見てリュウは頭が痛くなった。本当に緊張感がない。しかもそのネタ判るの俺だけだろうとも。
『うむ・・力はある様だな』
『力だけではありませんけどね』
正拳を掴まれた後、ガズルとクラリスロボは両手を組んで力比べをしている。力はほぼ互角だった。
力比べに優劣がつかず痺れを切らしたガズルがクラリスロボの腹を足で蹴り突き飛ばした。
勢いよく蹴られたクラリスロボは500メートル後方の城壁付近まで飛ばされたが姿勢は安定したままでダメージとしては全くなかった。ホバー直立のため地面との摩擦抵抗がないので惰性で流された感じだ。
離れた位置から今度はクラリスロボが攻撃に転じる。ホバー移動しながらビームマシンガンを乱射させる。通常のロボットの銃器はライフルが基本だがこれはビームのチャージが必要なため単発かつ間隔を置いた射出しか出来ないからで、クラリスロボのビームマシンガンは雷魔法ライトニングの応用なのでいくらでも小刻みに連射が可能なのだ。見た目が派手なガトリングガンの様に砲身を回転させたものを使っている。これも本来連射性と放熱性を考えて複数の砲身を備えているのだがあくまでも見た目重視だった。
クラリスロボから放たれたガトリングは無数にガズルを直撃した。
威力としてはライトニング魔法の小さいものなので単発ダメージは少ないのだがそれが連続となると話は変わってくる。数百、数千を喰らっては無事では済まされない。
あまりの痛みに耐えかねたガズルは後方斜め上に跳躍して射撃を回避した。
今度はガズルからファイアボール乱射が放たれた。通常のファイアボールと言えばボーリング球大の大きさなのだが、ガズルの放つそれは1メートルを超える巨大なものだ。それが一度に数十発放たれ連射された。
ホバーで水平回避をするクラリスロボだがファイアボールはクラリスロボを追って追尾してくる。逃げきれず何発も着弾していた。クラリスロボの耐熱装甲ならしばらくファイアボールを直撃してもビクともしないのだがダメージを負うと修復のための魔力を取られるので続くと魔力低下に繋がってしまう。
『どうやらこの攻撃は少なからず効いている様だな』
ガズルはそう言うとファイアボールの数を倍にして放出させた。
『装甲板へのダメージが大きいみたいです。モードを対火戦用に切り替えます』
クラリスが戦闘モードを切り替えると装甲板の色がグレーから水色に変わった。