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武龍伝  作者: とみぃG
159/222

158 リュウ VS 神楽元

ムーアの心配を他所に死にかけに見えた体のリュウの顔はニヤついていた。


『神楽元。念願の復讐が達成されると思っているんだろうな。喜んでいるところ悪いな。それは叶えてやることが出来んぞ』


リュウの言葉を聞いて神楽元は何を言っているのか判らなかった。神楽はこのまま最後のトドメを刺そうと思っているのだ。この一撃で全てが終わる筈なのだ。


『確かにお前がオーグから授かったその力、影の攻撃はすごい。通常の聖属性をもつ者では対抗できずに遣られていただろうな。だが、それは通常のという限定されたものに過ぎない。

残念ながら俺はそれ程弱くはないんだ。お前の攻撃でやらるように弱くするには百段階程レベルを下げないと死んでやることはできないからな』


リュウがそう言った瞬間にリュウの体が光輝いた。その眩いばかりの光に包まれたリュウは黒く変色した皮膚や失血死寸前の切り傷や刺し傷が全て無くなった。

元の何の攻撃も受けていない状態へと復活したのだった。


『おい!嘘だろ!!何でだ!?』


神楽元は最後のトドメを刺そうとしていたところだったのに傷を負う前の状態に戻ってしまった。

双六すごろくで例えるとサイコロあと一振りでゴールというところでフリダシに戻るになった様なものだ。今までの苦労が水の泡となって消えた神楽元は錯乱状態にあった。


『考えてみろ。オーグの力を授かったという時点でオーグではないと言う事だ。しかも完全復活する前のオーグの力の一部だろ?その希釈した力で本当に俺に通じると思ったのか?』


『何を言う!実際に攻撃が利いていたではないか!!全て上手くいく筈だったんだ!』


『それはアレだ。いきなりお前のとって置きの攻撃が弾かれたら面白くないだろ?まあどれくらいの実力なのか試したというところもあるが少しはお前を喜ばしてやろうと思っての演出だ。冥土の土産としていい思い出になったな。感謝していいぞ』


『クソッ!ふざけるな!!』


いつも冷静な神楽元が顔を真っ赤にして怒っている。血管がブチっと切れる音が聞こえてきそうな形相だった。


『確かにその影の防御力は大したものだ。だが言っただろ?絶対防御など無いってな。その意味を教えてやろう』


リュウは神楽元の足元を灼熱の溶岩に変えた。神楽の足元半径5メートルの土がみるみると溶け出して溶岩になりボコボコと泡を立てていった。

リュウが放ったこの溶岩は火山帯などで見かけるあの溶岩と同じものだ。灼熱で岩や土を溶かしたもので温度は千度以上ある。


足元の溶岩が神楽への攻撃と察知して影が神楽の足元を覆い溶岩から神楽元を守った。 影は一定の厚さを保っており溶岩の熱を完全に遮断している。

足元が溶岩に変わった瞬間、神楽元は焦ったが目にも止まらない速さで影が防御に回ったことで安心した。安定した防御力に安堵の表情を見せた。


続いてリュウは神楽元を中心に直径5メートルの球体状の透明の障壁を作り閉じ込める。球体の中に閉じ込められた神楽元の足元は灼熱の溶岩が半分の量を占めている。球体の下半分が溶岩で影に守られた神楽が上半分に居ると言った状態だ。


球体は密閉されているので中の温度がみるみる上昇していく。それと同時に酸素も消費されていくので酸素濃度も低くなっていった。


影は神楽元が溶岩に触れることの無い様に周りを囲んで守っている。影は忠実に神楽元を守る様に行動しているが守るだけで球体の障壁は破壊出来ないでいた。影の力よりもリュウの力の方が勝っているからだ。

リュウは更に球体内の溶岩の量を増やし底上げを行った。球体の中は溶岩の比率が増え内部温度が徐々に上昇していった。。


『熱い!苦しい!!おい!何とかしてくれ!俺を守るんだろう!!』


神楽元は球体内の酸素が不足して呼吸が困難になったのと温度上昇の熱さに晒された。

影は攻撃を防ぐ事は出来る。だがそれは直接攻撃に対してだ。周囲温度の変化や酸素濃度については一切考慮されていなかった。

リュウが言った絶対防御など無いという言葉の意味を理解した神楽元だったが既にその目は絶望を感じ必死に球体の壁を叩いている。


『何をしても無駄だ、神楽元。これで最後だ。地獄で懺悔でもしてろ』


もがき苦しむ神楽元を他所にリュウはそう言い放つと球体内にバケツ一杯程の少量の水を発生させ灼熱の溶岩に落とした。

すると球体内は水蒸気爆発を起こし真っ白に包まれ中が見えなくなった。水蒸気爆発とは熱で水が暴発する現象で熱した油の上に一滴の水を垂らすと跳ねる現象と同じだ。それが大規模に行われたのだ。

水が熱せられて水蒸気になる場合体積が1500倍以上にもなるため球体内は圧力鍋の状態に近い。当然人間が生きていられる状態であるはずもない。

影は直接攻撃に対しては守る事が出来るが温度変化など人間の生命維持環境については何ら配慮されていなかった。オーグも人間の脆さを見誤っていたのだろう。


こうして神楽元は断末魔の悲鳴と共に死滅した。最終的に球体内は溶岩で全て埋め尽くさせたので神楽元の死体も細胞も一切残ることは無かった。本当の意味での消滅だった。


『伯爵様!』


ムーアはリュウが絶対絶命だと思っていたのだが鈴鳴やクラリスの言う通りに神楽元に勝った。

先ほどは悲しみの涙を流していたが今はほっとしたのも併せた嬉し泣きをしていた。


『ほれ、妾の言う通りじゃったろう。あの程度では敵でもないわ』


『マスター、お疲れ様です。今度はクラリスが頑張る番なのでちゃんと見てて下さいね』


鈴鳴もクラリスもリュウとの付き合いが長い分どの程度の相手が脅威なのかを見計る目を持っていた。


『伯爵様!私がどれだけ心配した事か判りますか?』


リュウのもとに駆け寄ったムーアは思い切りリュウの事を抱きしめた。

リュウの危機には反応しなかった鈴鳴とクラリスだがムーアの抱き着き行為にはちゃかりと反応と抗議を行っていた。


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