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武龍伝  作者: とみぃG
158/222

157 オーグより授かりし力

黒い影から放たれた無数の針の攻撃はリュウによって阻まれた。

だが神楽元はその攻撃が防がれた事に何も感じていなかった。

むしろその程度の攻撃は防いで当然という顔をしている。


神楽元から出ている影が消えると次の瞬間にリュウの足元に影が出現しリュウの体が動かなくなった。


圧倒的なパワーを有するリュウなので物理的な拘束など不可能に近い。これは恐らく物理的な拘束ではなく精神的なものなのか或いは術を発動させたのだろう。

そして拘束されている状態では力を抜き取られているという様な脱力感に襲われ力が出てこなかった。


『うっ、これは何だ!?』


『ククク、聖なる力をもつあなたに闇の力で中和をして更に闇で上書きをしているのですよ。中和だけなら通常の状態と変わりありませんからね。こうする事であなたの体は闇の支配下にあるという訳です。お判りいただけましたかな?

これが私の手にいれたオーグ様の偉大な力の一端という訳です。すばらしいとしか言い様がありません』


『お判りも何も実際に体が動かないんだから百聞は一見にしかずだろう。本当に厄介なことばかりしてくれるなお前は。しかし驚いたぞ。これでは手も足も出せないじゃないか』


『ククク、長い付き合いの特別サービスです。ゆっくりと苦痛を味わって下さい』


神楽元は長年の念願だったリュウへの復讐が今まさに実現しつつあり至福の喜びにあった。


先ほどムーアに放った無数の闇のニードルが今度はリュウに目掛けて飛んでいった。リュウは避けることも結界を張ることも出来ずに針を直撃した。全身に針が刺さったリュウは強烈な苦痛に襲われた。

軍で拷問に対する耐性を身に着けているリュウはこの程度で根を上げることはないが単なる苦痛ではないことに違和感を覚えた。針の刺さったところから血が吹き出ているのだが、その血がドス黒変色し、傷を負った箇所からリュウの皮膚が腐食していたのだ。

聖属性を持つリュウだからこそ闇の毒に侵されていると言っていい状態だ。このまま腐食が進めば体が朽ち果てるのは時間の問題だった。


『伯爵様!!』


ムーアは目の前で起っている事が信じられなかった。いつも絶対的な強さを誇り無敵だと思っていたリュウが冴えない見てくれの人間にいい様に遣られているからだ。

自分は一度リュウを殺している。だがそれはムーアのやることを全て知った上で懺悔として何も抵抗せずに受け入れた結果に過ぎなかったのだ。相手の攻撃で負けることがあるとはムーアは夢にも思っていなかった。


『うっ・・・ちょっとこれは洒落にならない状態になってきたみたいだな・・・』


『まだまだですよ。この程度でさて次は何をしましょうか。今度は切り刻みましょうか』


今度は影から黒い剣が突き出されリュウの体を切り刻んでいく。針の傷と剣の傷を多数受けており、通常の人間なら痛みでショック死しているか失血死しているレベルだろう。


『グハッ!』


剣の一本がリュウの肺を貫きリュウは口から大量の血を吐き出した。

通常の人間ならこの時点で既に死んでいてもおかしくない。


『伯爵様!どうしたのですか!!しっかりして下さい!!こんなところで負けてはいけません!!』


ムーアは泣きながらリュウに反撃する様に懇願した。


『ククク、無駄ですよ。もう既に体は闇の支配下にあります。結局はオーグ様の力に対しては何人も抗う事が出来ないという事ですよ。皆さんの救世主はオーグ様の力によってここに朽ち果てる運命にあるのです』


神楽元は今まで散々リュウに自分の悪事を阻止されており、組織を壊滅され、部下の多くを失ってきた。今ようやく復讐が達成する時が来たことで興奮していた。


ここでリュウを心配しているのはムーアだけな事に気付く。

クラリスはガズルと戦闘がはじまったばかりで戦闘に集中していると思われる。

鈴鳴は大規模な結界を張り続けてダークネスの攻撃を防いでいる。。だがリュウの今の状況は二人の視界に入っており理解している筈なのに二人とも心配する気配がなかったことにムーアは憤慨した。


『どうしてそんなにお二人は冷静でいられるのですか?伯爵様がこんなに大変な状況なのですよ?助けなくて宜しいのですか!?手遅れになってしまいますよ!!』


居ても立ってもいられずムーアは鈴鳴とクラリスに向かって大声で叫んだ。


『ムーアとか言ったな?そう慌てるでない。其方の知るリュウがこの程度の奴に負けるとでも思うておるのか?』


『そうです。マスターはこれくらいの攻撃は何とも感じておりません。ご心配には及びませんのでご安心を』


ムーアは二人から帰ってきた言葉が予想外で理解できなかった。そして鈴鳴が指差す方向を見た。そこには今にも死に掛けのリュウがいた。


『これのどこが大丈夫なのですか!?伯爵様が死に掛けなのですよ!!』


『そう騒ぐな。リュウの顔を良く見てみるがよい。あの顔が死に行く者の絶望の顔をしとるか?』


ムーアは鈴鳴に言われた通りにリュウの顔を見た。

何かおかしい。リュウの顔が笑っている様に見える。リュウの体は既に全身が闇の毒に侵されて腐食している状態だ。それこそよく映画で見るゾンビが腐った手足を落とすシーンに近いものがあるのだ。

だが、リュウは笑っている。笑うというよりもニヤケているのだ。

この笑いは悪巧みしている時の笑いに近かった。


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