154 フェアリーの里
■フェアリー
エルフの里から更に大陸中心に向かったところにフェアリーの里がある。ここは精霊の森の中心に立つ大樹に近い地域だ。聖なる力が強くダークネス達にとって最悪とも言える場所だ。通常の力を出すことが出来ない状況だからだ。
しかもフェアリーは非常に小さな存在。その気になればこの森のどこにでも隠れることが出来た。聖なる力による力の制限の影響でダークネス達はフェアリーの気配を感知することが困難となり視覚だけで追っているのでなかなか見つけることができなかった。
小さなフェアリー達は戦闘力が無いに等しいが精霊の加護を一番受けている存在だ。精霊に守られ大きな被害を受けることなく今回の騒動が収まるまで我慢をしながらダークネス達の撤退を待ち続けた。
エレノアはフェアリーの里のある位置に転移をしたのだがフェアリー達の姿を見つけることが出来なかった。隠れている状態なので見つからないのは仕方ない。だが、フェアリーからは侵入者の姿は見えているのだ。
『こんなところに人間が来るとは・・・』
『あ、あれは!』
『どうしました。メアリー、あの人を知っているのですか?』
『はい、タイラ伯爵の奥方です』
『なんと、そうでしたか。恩人の身内の方なら早く知らせねば。メアリー、あの方をこちらにお連れなさい』
『はい、里長様』
メアリーは結界を解いてエレノアの前に姿を現した。
『エレノア様!』
『あっ、メアリー。やっと見つけられました。誰もいないのでどうしたのか心配しましたよ』
『敵に見つからない様に精霊結界で隠れていたのです。ここに居るのは危険です。早くこちらに』
メアリーはエレノアを連れて再度精霊結界を張った後に里長のところまで案内した。
『里長様、エレノア様をお連れしました』
『どうもはじめまして。エレノアと申します。こちらの大陸でもダークネスの侵攻を受けているとの事で各地に救援に来させていただいております』
『それは遠路からありがとうございます。それと貴女様はタイラ伯爵の奥方とお聞きしました。タイラ伯爵にはこの里を救っていただいた多大なご恩があります。今はこの様な事態だけに十分な歓迎が出来ない事お許し下さい』
『いえいえ、リュウ様は当然の事として皆様をお救いしたのだと思います。あまりお気になさらずに。
今回私は治療を主目的で派遣してきましたがこちらの里では負傷者はおられませんか?』
『おお!それは良かった。何名か闇の者に遭遇して瀕死の者がおります見てやってもらえますか』
エレノアは里長に連れられて診療所に案内された。
『この者達は闇の瘴気に当てられて生気を失いかけております。我々の力では治療できずに途方に暮れておりました』
『わかりました。では早速治療をいたしましょう』
エレノアが患者に手をかざすと温かい光を放ち負傷した者を光に包んだ。その柔らかく温かい光に包まれた負傷者はみるみると回復していき1分後にはもとの元気な状態に戻った。
『これは!?なんという偉大な!』
里長はエレノアの治癒力を見て驚いた。精霊の守り人として長年生きてきた里長なのだがこの様な強い治癒を見た事がなかった。
『この程度であれば後遺症も残りませんのでもう普通に生活されても大丈夫ですよ』
フェアリーはリュウだけでなくエレノアにも命を救われて感謝をするのであった。
エレノアは治療を終えたが、フェアリーが戦闘力に乏しくダークネスが去るまで隠れ続けることを不憫に思った。
『このままじっと隠れ続けているのって辛いですよね。ダークネスを退散させましょうか』
『そんな事が可能なのでしょうか?』
里長は先程のエレノアの力を見てその力の偉大さは知っている。だが相手は10万もの数がいるのだ。そう簡単に出来る事ではない。
『はい、ここは精霊の大樹の力が強く作用しています。私の聖魔法も普段の数倍の威力を発揮させることが出来るので大丈夫だと思います』
エレノアも試した訳ではなかったが自身の聖属性が高い故にこの地との相互作用も身体で感じていた。
『先程の治療といい重ねてのお願いで申し訳ございませんが宜しくお願い申し上げます』
『はい、それでは始めますね』
エレノアは精霊の大樹に近い位置に移動した。そこからダークネス達がいる方角に腕を上げて手のひらをかざした。
『この地に鎮まる精霊の力よ。我に力を貸したまえ』
エレノアが唱えると手の平の周りに光が集まりだした。その光はどんどん大きくなっていく。最初はゆっくりと大きくなっていったのだが、その大きさが大きくなるにつれて加速的に拡大していった。
やがてフェアリーの里全体を覆う光となり更に拡大していく。
遂にその光はダークネスに達した。勢いをつけて拡大していく聖の光にダークネスは光に当たる瞬間に浄化されていった。
10万もいたダークネスは精霊とエレノアの作り出した聖なる光により一瞬で浄化されたのだった。