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武龍伝  作者: とみぃG
151/222

150 トマホークブーメラン

聖属性の高いクラリスは闇属性の魔物に対して相性がいい。圧倒的な数の敵を前にしても分が悪いとは思ってはいない。


三体のクラリス分身体が聖属性の雨を降らせた。人間にとっては癒しの雨とも言える聖なるホーリーレインはダークネスにとっては人間の濃硫酸の雨に等しかった。

雨粒が当たる部分から煙を出して溶け出している。全体を溶かすまではいかないがダメージとしてはかなり与えていた。


ここまで何もしていなかったガズルだったがこの戦いで成果を上げなければ断罪されてしまう。そう思うと居ても立っても居られなかった。ガズルは自らの武器である両腕に持ったトマホークをクラリス目がけて投げつけた。回転しながら回るトマホークは動きとしては非常に緩慢だ。俊敏なクラリスが避けられない筈がない。

だがトマホークが迫るのにクラリスは避けられずに遂にトマホークを直撃し分身体の一体が消え去った。


『マスターおかしいです。あの斧の攻撃が避けられません』


『あの斧の動きに変なところはないか?』


『幻影かと思ってサーチしましたが実体としてあることを確認しました』


ガズルから投げられたトマホークはブーメランの様にガズルの手元に戻ってきた。どうやら魔力でコントロールをしているらしい。

二投目が別のクラリスの分身体を狙う。これもまた避ける事が出来ずに消し去られてしまった。


クラリスの分身体で聖なる雨を降らす三体残りは一体だけとなってしまい効果が薄れてしまっている。


『どうやらあの斧にカラクリがありそうだな』


『ガハハ、どうだ避けられるまい。いつも遣られてばかりだと思うなよ』


ガズルのトマホークは巨大なガズルと比例してかなりの大きさだ。

人間に直撃すれば一撃死は免れない。下手すると胴体が真っ二つに分断されるだろう。それくらいの威力を持っている。


聖なる雨を発動している残り一体のクラリスにガズルが攻撃を仕掛けようとするのをクラリスの本体が必死に阻止している。ガズルにファイアボールを飛ばして注意を逸らす。


『どうだ、クラリス。あの斧を見ずに避けることは出来るか?』


『いいえ、マスター。魔法を発動しながらだと難しいです』


『そうか、判った。それじゃあ俺が何とかしよう』


クラリスの最初の分身体が放った粘着雨のお陰で地面はダークネスがびっしりと張り付いており地面の振動を起こせなくなっている。むしろそのまま飛び続けていたら仲間を踏み殺すことになってしまう。地震攻撃が止めばリュウもローグの街を浮かせ続けることをしなくて済むのでクラリスに加勢することが出来た。


ガズルから放ったトマホークをリュウが斬撃で軌道を逸らす。

両手で放った二本のトマホークを二回放たれた斬撃でそれぞれに命中している。


『タイラとか言ったな。いつも尽く邪魔をしおって。お前から先に死ぬがいい』


今度はトマホークのターゲットをリュウに切り替えた。

リュウはトマホークの動きを見なかった。正確には視覚で捉えなかった。知覚と音でその動きを見切ったのだ。

クラリスの分身体が避けれなかったその動きを難なく避ける事が出来た。


『どうやら俺の思った通りだった様だ』


『マスター一体どういう事でしょうか?』


『こいつのカラクリはトマホークの回転にあるんだ。相手の攻撃を避けるために武器の動きを凝視するだろう。その時にトマホークの回転を見ると幻覚に陥る魔法を連動させて発動しているんだ。だから目で追うと体が反動出来ずに直撃するという訳だ』


『そうだったのですね。クラリスも魔法を発動中でなければ視覚に頼らずに避けれました。少し悔しいです』


『どうやら気付いた様だな。まあいい。気付いたところで簡単に避けれるものでないわ』


ガズルはそう言うと両手二本のトマホークを二回連続に投げた。即ち四本のトマホークが飛んだのだ。


『目を瞑ってこの四本が避けれるか』


先程よりも倍以上とも見える速度でトマホークが投げられていた。しかも四本がリュウ目がけて飛んでいる。普通なら絶対に避ける事が出来ないスピードとタイミングだ。


『クラリス。こいつの対策はこうやるのが正解だ』


リュウはそう言うと焦ることもなく更に目を瞑ることもなくトマホークを見ていた。このままでは体が硬直してトマホークが直撃すると思われたが、リュウに当たる直前でトマホークは四本とも跡形もなく消え去った。


『なっ!?馬鹿な!俺のトマホークはどこに消えた!?』


自分の放ったトマホークがリュウに当たる直前に消えた。更に本来魔法で戻ってくる筈のものが戻ってこない。


『簡単な事だ。厄介な武器はそれごと異空間に飛ばしてしまえばいいだけの事だ』


リュウは自分の体の周りに空間転移を設置したのだ。トマホークはその空間転移で次元の狭間へと飛ばされたのだ。もちろんもう二度と戻ることはない。


『おのれ、儂の武器を・・・最早武器などに頼るまい。手加減はせんからな。目にもの見せてくれるわ!!』


自分の武器がなくなったことにショックが隠せなかったガズルは同時にどうしようもない怒りが込み上げてきた。その怒りに任せて巨大化したのだった。元々が巨大な大きさのミノタウルスだがこの変身で体長が20メートルにも及ぶ超強大化とガズルはなった。


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