145 圧倒的な兵力
魔界南東部にある火山島で神楽元はオーグ復活のための装置開発に取組んでいた。受信装置の配備は盗賊の手下に任せているので開発に専念出来る様になった。
開発状況としては最終段階に達しており、ほぼ完成と言える状態だった。、今は実験体での試験を繰り返し行っているところだ。とは言え万が一でもオーグに何かあっては困るので神楽元としては慎重に慎重を重ねての実験だった。
この世界では概念だけで形に出来るので実験も試行錯誤の様なものでなく確認テストの類だ。今までこうなればいいと思っていたが実現する手段がなかった事もこの世界ではプロセスを無視していきなり完成体が生成できるのだ。
神楽元とはそもそも従属することを好まない。これ程までにオーグに従うのはやはりその偉大な力を魅力と思うからだろう。オーグより恩恵のあるその力は前の世界では到底有り得ない程の魅力だったのだ。オーグが倒されるということはその力も失うに等しいので神楽元としてはオーグには生き残って貰わなければならないのだ。
まだまだ沢山の実験をやりたい神楽元だったが、今はオーグの復活が最優先なので復活した暁には自分にもオーグの力を分けてもらい、自分自身でも生成が出来る様にしてもらう約束をしている。それが神楽元に対するオーグからの報酬と言ってもよかった。
『カグラよ。どの様な状況だ』
『これはオーグ様。はい、もちろん順調ですよ。今は最終段階とも言える状態です。これで問題が生じなければいよいよ復活のため準備に移らさせていただきます』
『聞くところによると儂を冬眠状態の様に眠らせて行うらしいな?大丈夫か?』
『はい、ご心配には及びません。精神に直接接続しますので冷凍睡眠状態が一番効率よく同調できるのです。安全については今厳重に確認をしておりますのでお任せ下さい。
但し、装置を繋いでから復活までの時間は早くて数日は掛かります。これは装置が暴走を行さない様に低出力で安定させて稼働させる為です。予期せぬ事に対応するための安全策とお考え下さい』
『うむ、わかった。いよいよ復活か。長かったな。儂が神達に力を封印されてから幾百年の月日が流れたことか・・・
だがお前が儂の元に来てからが早かったな。流石流れ人といったところか。儂が復活したら望みの物を与えてやるから楽しみにしておくがよい。
それと流れ人と言えば神の手下にも目障りなのが居たな。復活に際して又邪魔が入らぬか?今まで何度も邪魔をされてきているからな。』
『はい、その辺についても手立ては打っております。決して邪魔はされません。最早オーグ様の復活は確定したも同然と言えます』
最近は神楽元がオーグの右腕の様に重宝されているのでガズルとしては自分のポジションが奪われたみたいで面白くなかった。だが重ね重ねの失敗を繰り返していた為、本来なら無理とも言えたオーグを復活へと導いた立役者が神楽元というのも事実だったのでその実力は認めざるを得なかった。
『ガズルよ。お前は儂が復活するまでの間、ダークネスを率いて各都市を攻撃しろ。我が軍の軍勢は二百万だ。好きに使え。但し今回は失敗はないぞ。下手を踏んだら即死ぬと思え』
『なんと!二百万ですと!!前回の侵攻作戦の五万とは全く比較にならない規模ではないですか。その大軍の指揮を私に任せていただけるのですか?』
『お前以外に誰がおる?それともその役目不服か?』
『滅相もございません。必ずや成功させてみせます。それだけの兵を率いれば負けるは最早想像も出来ますまい。して攻撃手はずはどこにいたしましょう?』
『そうだな。まずは半分の軍勢百万をあの忌まわしい奴の拠点であるローグに充てる。完膚なきまでに街中を破壊し皆殺しにしろ。
残りの百万で北と南の大陸に分散させ十万単位で各拠点を攻め落とせ。但し、流石にカグラの装置が優秀とは言え、二百万の軍勢を用意するには今しばらく時間が掛かる。それまでに侵攻についての策略を考えておくがいい』
『ははっ!畏まりました!』
『うむ。で、カグラよ。儂の復活装置の完成と軍勢の配備はいつ頃できそうだ?』
『はい、生産処理能力として一日に5万体を生産しております。既に50万体出来ておりますのであとひと月もあれば200万体が揃います。しばらくお待ちいただく事恐縮ですが、ご了承の程宜しくお願い致します』
『わかった。それではひと月後に作戦を結構とする。
それと復活までの間、お前が狙われる可能性がある。儂の化身を護衛につけておく何かあればそいつが守ってくれよう』
そう言いながらオーグは自身の体から黒い人影を生み出した。その人影は神楽元の前に移動すると彼の足元の影の中に沈み込んで消えた。
『オーグ様、ご配慮いただきありがとうございます。これはどの様な守護が発動するのでしょうか?』
『その影がお前の危険を察知すれば盾となったりお前が望めば攻撃も行う。影は最大8体まで出現する。特に何も考える必要はない。全て影が勝手に動いてくれる。攻撃の時だけ指示すればよい』
『おお!それはすばらしい!!もう少しよろしいでしょうか?
攻撃とはどの様なものなのでしょうか?ご参考までに教えてください』
『影から闇属性の属性弾を発したり鋭い刃物を飛ばしたりだが、お前が望んだ方法で指示すればその通りに動いてくれる』
それを聞いた神楽元は10メートル先の壁に向かって散弾銃の攻撃をイメージしてみた。すると無数のパチンコ玉大の黒い粒が壁にのめり込んだ。
散弾銃の様な火薬の爆発が必要なく無音に近い攻撃だ。威力も申し分ない。
『これは使えますね。オーグ様ありがとうございます』
神楽元は自分がやられる事など微塵も考えていなかったが、オーグが力を貸してくれるのなら鬼に金棒だ。より自身の作業に集中できるので有り難かった。