144 サミット
予定時刻通りにローグ国際会議場にて各国首脳会議、通称サミットが開催された。
ホスト国であるマキワからは国王と今回の幹事であるリュウが出席。各国からは国家元首と他一名の二名ずつの参加となった。
参加国が北大陸が四カ国八名、南大陸が五カ国十名で合計十八名で会議が行われる。
当然会議の議事を取る書記や警護の者は別に用意されている。
国王から今回の会議にあたっての挨拶が行われた。リュウが代わりに行っても良いのだが、各国が国家元首の参加となっており、国のトップで尚且つホスト国であるため国王がその威厳を示す必要があるのは語るまでもない事で逆にその度量を各国が見て計っている。
その点では国王は事前にシナリオをリュウと考えており、何度も練習した甲斐があって無難に挨拶をする事ができた。リュウとしても合格点の出せる出来だった。
今回の会議でまずは各国の紹介から執り行われた。今回の会議の主旨は和平の為のものだが、お互いに繁栄をもたらすパートナーとしてのきっかけ作りの場として活用してもらいたいという思いもあり、
各国の紹介の際に自国の特産やアピール出来るポイントなども紹介してもらっている。
各国の紹介の後は今後国際交流を進めていく上で必ず必要になるものとして法律の整備を挙げた。
各国ではそれぞれ法律というものがあるのだが、自国の法律を他国に適用する訳にはいかない。ならば二国間或いはそれ以上の国が関わる事案の場合どの様に判断しればよいのかが問題となるが、そういう場合の為に国際法を整備する必要がある。
この国際法を基準として各国はその枠内で国際交流をするというものだ。これには他国への侵略の防止などの戦争の抑制も含まれている。他にも人権侵害や環境破壊、経済など多方面に渡って取り決めを行うことでこの世界の健全化を保っていく考えだ。
この国際法が整備されればオーグ達の行動は国際法違反となり、全世界の敵と認定される。当然オーグ達には法律など何の意味もないのだが、各国からすればお互いが協力する上での大義名分となる。
その他では他国への訪問のハードルを下げる代わりに旅券を発行し所持を義務付ける事と、各国に大使館の設置を認める事を提案した。
大使館の有用性は説明するのが難しかったが、自国の者を他国で保護したり、相手国との信頼関係を築く上での重要性を説明した。
かなり多くの内容がこのサミットで取り上げられているため全てをすぐに実行するのは無理がある。少しずつ理解を得て進めていくのと優先順位をつけて長期的な取り組みとして進めていく。
そして最後は世界の敵となるオーグ達の件だ。
リュウから現在掴んでいる状況を説明し、どこが主戦場となった場合でもお互いが協力する方向で賛同を得た。
それに加えて先程弥生から得た情報をここで伝えた。ローグだけでなく各国に盗賊達が拠点を築きつつあるということを知らせるだけでも阻止するきっかけになればと思った。
一通りの議題をこなした後で各国からの意見、質問を受け付けたのだが、やはり質問が多かった。仕組みがよく理解できないための質問だったがリュウは一つ一つの質問に対し丁寧に答えた。
こうしてサミットは無事終了することが出来た。次回は一年後に同様にローグでの開催とすることを決めた。二回目もローグだが、3回目以降は各国の持ち回りとすることとした。その頃であれば不安分子も取り除いているので大丈夫だろう。
『ふ~っ、やっと終わったなあ』
『婿殿、よくやってくれた。婿殿が仕切ってくれたお陰で助かった』
『いえいえ、国王様もご立派にお役目を勤められましたよ。これ程までに上手くいくとは思いませんでした』
『そうか、それはよかった。ところで各国の要人はこの後どうするのだ?』
『はい、今夜は花火が打ち上げられますので夜に観覧をしてもらい翌日観光する方とそのまま自国へ戻られる方とで分かれます。明後日にはすべての国の方がお帰りになられます』
『そういえば花火が打ち上げられるのだったな。一度試作の打ち上げを見させてもらったが見事なものだった。ああいったものが婿殿の住んでいた世界にはあったのだな』
『はい、主に夏の行事として各地方で開催されてました。庶民の楽しみといったところでしたね』
『なるほど。このローグでも恒例行事としてやるわけだな』
『はい、年一回、大花火大会と称して開催しようと思っています。各国からの来訪者も多く見込めますのでローグの経済も潤うことでしょう』
『それは楽しみだな。私も早く引退してゆっくり見物でもするかな』
『国王様、それはまだ先にして下さい。引退しても退屈な毎日ですよ』
『そうかも知れんな。婿殿は外からこの国を守り、私は中からこの国を支える。そういう連携が一番良いのかも知れんな』
『はい。それにジルバートには幼い時から王になるべく教育を施して早い段階で即位させられればと考えております。国王様の右腕として鍛えてあげて下さい』
『そりゃあ、私もやるのだが婿殿は一緒にやらんのか?なんか私だけが育てる様な感じに聞こえるのだが』
『いえいえ、決してそんなことはありません。やはりこの国の歴史や王家に関わる事となると俺にはわかりませんので』
最近、リュウは国王と会話をする機会が増えた。義理の父親だが実の父親もこんな感じなのだろうなという気持ちで国王との会話はリュウにとっては結構楽しみだったのだ。
明日から神楽元の掃討作戦が始まる。オーグ復活もそう遠くない将来であるため、こういったのんびりとした時間はもう取ることが出来ないかも知れない。そう思うと少し寂しく感じたリュウだった。