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武龍伝  作者: とみぃG
142/222

141 側室候補

<ローグのグルメ食堂本社オフィス>

『社長!聞きましたよ!伯爵様の側室の一般候補枠に社長の名前が挙がっているそうですね!凄いです!頑張って下さい、皆で応援してます!』


店の若い従業員から突然パトリシアにそんな噂話を聞かされた。


『え!?ちょっと、それ何?私知らないんだけど?それに伯爵様とはここしばらくお会いもしてないのよ?どうしてそういう話になるのよ?』


『ええ?社長は知らないんですか?もうお店中の噂でお客さんからもどうなのか聞かれてる状態ですよ』


『そりゃあ、そうなればいいという願望はあるけど、私よりも相応しい方は大勢いるから私の番なんて回ってくる訳ないわよ』


『そうなんですか?でも可能性はありますよね?私達応援していますから!他の候補の方に負けないでください』


パトリシアの頭の中にはギルドの会頭のナターシャやモノローグ本社の秘書、歓楽街の組合長、ギルドの受付等この街でもリュウを狙っている者の顔が思い浮かんだ。それはパトリシアの知る顔だけで交流の広いリュウの周りにはもっと沢山の女性がいるに違いないのだ。


<ローグ ギルド本部 会頭室>

『会頭!側室に選らばれたって本当ですか!!』


ギルド会頭ナターシャの執務室に一人の受付の女性が駆け込む。


『今度はあなたなの?ローラ。もう今朝から頻繁に入れ替わり立ち替わり、一体何なの?』


『え?でも街で会頭が側室候補に選ばれたという噂でもちきりですよ?違うのですか?』


『そんなのある筈ないでしょ!私本人がそんな話聞いてないんだから。あの朴念仁がそう簡単に話を進める筈がないでしょ。そりゃあ、実際そうなったら嬉しいけど事実でもない噂に躍らせれてどうするの』


『はあ、やっぱり単なる噂ですか・・・ってことは私にもチャンスはあるということですね!』


『まあ夢を抱くのは自由だからそう思っていればいいんじゃないの?』


噂が真実ではないと知ったローラは機嫌よく小走りで会頭の執務室を出ていった。


『それにしても彼くらいの功績があれば側室を増やすことは自然なのに頑なに拒むのは何かあるのかしら?何やら最近挙動もおかしいからその辺について確かめた方が良さそうね』


恐らく側室を加えるとすれば自分が選ばれるだろうとナターシャは思っていた。リュウも自分に対して少なからず好意を持っていることは普段から接していて良く判っている。

そういう時に限ってリュウは悲しい目をするのをナターシャは見逃さなかった。以前からそれが気になっていたのだ。今度会った時に直接本人に確認することにした。ナターシャとしてもリュウが何に悩んでいるのかを知りたかったのと自分で何か出来る事があればと思ったからだ。



<ローグの下町某所>

『ククク、思ったよりも噂の効果は出ているみたいですね。これは予想以上でした。やはり隊長さんは大物だったということですね。いやはやすごい事ですよ』


神楽元はローグの下町にアジトをいくつか用意していた。魔族が人間に扮して紛れ込んでいればすぐに気が付くのだが、人間である神楽元自身が行動するのであれば通常の識票さえ身に付けていれば街中を自由に往来することが出来た。


発展して治安の良い街であるローグでも貧民街と呼ばれていた下町が存在する。リュウの政策で職のない者には優先的に職に就ける様にギルドを中心となって動いていたため失業率は2%とかなり優秀な失業率の低さなのだが、リュウが来る以前から裏家業を本業とする者達がいた。盗賊とかの類だ。

彼らはその道で生きることを望んでおり堅気の仕事などをする気など毛頭なかった。今は軍や警備兵の実力が上がっており自分達では太刀打ち出来ないので大人しく鳴りを潜めているだけなのだ。


当然彼ら達にとってこの治安の良い健全な社会は住み心地の悪いものだった。無法地帯で好き放題やれる方が心地いいのだ。


そういう彼らなので神楽元から見れば付け入る隙が多くあった。甘い言葉で誘えば二つ返事で協力が得られた。


このローグには元盗賊達を手下に従え5か所のアジトが存在した。

鋭いリュウの監視を逃れるために神楽元も彼らには本当の事は話していない。単に盗賊稼業を復活させるという程度の事しか話していなかった。


『お頭、タイラ伯爵の噂を言われた通りに流しているのですがいいのですか?嘘とバレたら相当ヤバいですよ』


『ククク、構いませんよ。全責任は私が取ります。それにあなた達も盗賊稼業の復活を望んでいるのでしょう?この作戦が成功した暁にはその希望を叶えてあげることは容易い事です』


『へい、わかりやした。で、次は何をしたらよいので?』


『そうですね。この街だけでは不十分です。世界各地で同様に吹聴してきてもらえますか?あと、各所にアジトを用意してこれを置いてきて下さい』


神楽元はそう言うと人が何とか抱えられる程度の四角い箱を手下に渡した。その箱は負の感情の受信装置兼蓄積装置だ。この装置が20台程アジトに積まれている。

それと各所へ渡航するのと現地アジト開設の資金として袋に詰まった金貨を手渡した。


『了解しやした。二人一組で各地に行かせます』


『よろしくお願いしますよ。あと現地で反勢力活動に協力しそうな裏家業の人間を見つけたら勧誘をお願いします』


蛇の道は蛇とは言ったもので悪党を統率するのが神楽元の得意とするところで魔族ではなく人間の手下を集め内部から混乱に陥れるため神楽元は動きつつあった。


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