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武龍伝  作者: とみぃG
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139 見える未来

リュウの元へ珍しく鈴鳴がやってきた。


『鈴鳴から俺のところへ来るなんて珍しいな。どうした?寂しくなったか?』


『そうじゃのう。寂しいか寂しくないかと問われたら妾としては其方の姿を長く見ておらんから寂しいと言うべきじゃろうな』


今日の鈴鳴は素直だった。何か調子が狂う。


『思えば鈴鳴との付き合いが一番長いからな。まさか神を側室に迎えるとは思ってもいなかったけどな』


『妾も最初は其方のお目付け役に過ぎなかったのじゃがな。いつしか傍に居る事に心地よさを覚えてしまったわ。妾が生ある頃の思い出が蘇ってくるようじゃ。とはいえ、それは数千年も前の話であるが故に既に覚えておらんのじゃがの。

妾は其方がこの世界を本当に救うと信じておる。神でない其方が短い時間にこの世界をまとめるとは流石に仙人界におる者達も想像しておらなんだろう。それだけの偉業を行ったのだ。誇るが良い。妾も其方を惚れ直したぞ』


『鈴鳴から褒められるとは思っていなかったな。一体今日はどうしたんだ?いつもと違うから調子が狂うぞ?』


『其方、もしやとは思ったが見えているのじゃろう?』


『見えるって何がだ?』


『この先の未来がじゃ』


『やっぱり鈴鳴には判るのか。さすがは神ってところだな。以前はぼんやりとだが近未来の状況が断片的に頭に浮かんでくることがあったんだが、先日仙人界で百年の修行を終えて戻ってきたあたりから未来の情景がはっきりと見えてくる様になってきたんだ』


『それは其方が神へと近づいている証拠じゃ。しかしその段階には相当な年月を経て更に修行を積んだ者でしか到達せんはずなのだが・・・。して、何が見えたのだ?』


『もちろんオーグを倒した平和な世界さ』


『うむ、それは多くの犠牲を払ってのことか?』


『鈴鳴には未来が見えないのか?神なら備える力なんだろう?だったら確認する必要はないだろう』


『何が見えるのかは神によって違うのじゃ。妾の場合はもっと先の未来しか見えぬからの。数年先の未来じゃ。だが不思議とその未来に其方の存在が見えぬのじゃ。もしや其方・・・』


『未来は常に動いているんだろう?先がどうなるなんて判っていたら面白くないだろう。未来を良くするために足掻くだけ足掻けばいいのさ』


鈴鳴の見える未来はオーグを倒した後の平和な未来だがそこにはリュウもオーグと共に存在が確認できなかった。それを意味することを鈴鳴は覚った。だがリュウの言う通り未来は行動や選択により常に動いている。この先の行動次第ではリュウを救うことが出来るかも知れない。鈴鳴はそう思うと共に全力でその為の力になろうと誓ったのだ。鈴鳴にとってリュウの居ない世界など退屈以外何物でもないのだから。


『どうやら妾も本気を出さねばならぬ様じゃな。安心するがよい。妾達が其方を守ってみせる。神の威信を賭けてな』


『それは心強いな。そんなに真剣な鈴鳴を見るのは初めてだな』


『其方の居らぬ世界など退屈以外何物でもないからの。あの邪神如きに妾の生き甲斐を奪われて溜まるか』


『何れにしてもオーグとの戦いは避けられない。しかも凶悪な力を得て復活するらしい。勿論俺一人で何とか出来る相手ではないのは判っているさ。鈴鳴の力、頼りにしてるから』


普段は足を引っ張る様なことばかりする鈴鳴だったが、この時ばかりはリュウは鈴鳴が頼もしく見えた。リュウはうれしくなり鈴鳴をぎゅっと抱きしめた。

突然のリュウの抱擁に驚いて顔を真っ赤にする鈴鳴だったが満足したのか気が付くと黒猫の姿になってゴロゴロいわせながらリュウの膝の上で丸くなって眠っていた。


『なんだかんだ言って俺のこと想ってくれているんだな。俺の消滅は多くの人の失望になるからな。未来が判っているのならその未来を変える為にやれることをやるしかないな。こいつらの為にももっと足掻いてみるか』


そう思いながらリュウは膝の上の黒猫を撫でていた。


リュウは自分の見える未来ではオーグとの闘いの末に共にこの世界の消滅を防ぐ代わりに自分がこの世界から消え去るというものだった。巨大な力を封じるために巨大な力をぶつける。それしか手立てがないのか?未来を変えるべく手立てについて考えてみる事にした。


先ずはこの先必ずオーグが復活するということだ。あれだけ打撃を受けておきながら何故オーグが復活を遂げられたのか?

恐らくその鍵を握るのは神楽元の存在だろう。奴が何らかしらの手を貸したに違いない。それが何かを探るのが先決だろう。


やはりオーグを倒す前に神楽元の始末の方が先になりそうだ。奴を野放しにしたままだとオーグとの戦いになった際に足元をすくわれる可能性が高い。

かと言って用心深い奴をどう仕留めるのかも重要になる。下手を打つと相当な被害を受けることになる。


リュウは諜報部隊長のクリフを呼び出した。

オーグ達のアジトに潜入してそこに居ると思われる神楽元の動向を探るように命じた。

今後の憂いが無い様に次の決戦で神楽元を確実に葬り去らなければならない。だが奴は用心深く用意周到だ。戦闘能力が低い自分が生き残るため手段というのを必ず用意している筈だ。それが何かをつきとめて排除を行うのだ。


クラリスを交えてあらゆる視点で考えられる手を全て考慮して奴の始末をどの様にするかの作戦を練った。


クラリスも先程の会話で自分のマスターがこのままでは消えてしまう事を知って非常にショックを受けていた。それ故にその運命を阻止しようと必死に考えるのであった。


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