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武龍伝  作者: とみぃG
136/222

135 百年の修練

仙人界では肉体的には成長しないが、精神は生きた年数分がそのまま加算される。

修行が始まってすでに25年が経過していた。途方もない長い時間だ。この先この何倍も修行が続く。通常の精神では逃げ出したくなることだろう。神に近づくということは長い年月を生きるという事実を受け入れなければならない。

この世界では人間が一番短命で長くても100年で寿命が尽きるのだが、エルフはその十倍を生きるし他の種族もエルフ程ではなくても人間の数倍の寿命を持つ。

精神の年齢は寿命と比例して人が一番幼いと言える。500年生きたという事は5回分の人生を歩んでいるということで精神年齢は500歳なのだ。


リュウも既に2回の修行と自分の年齢を加算すると100歳を超えている。同年代の者と比較して落ち着いているのは当然だろう。

この仙人界で修行をした者は皆同様で見た目年齢以上に精神が鍛えられているのだ。


ここで修練をする上で”いつ終わるのか?”を考える事は厳禁だ。

それよりもどれくらい成長出来たかを考える方が日々の修練の効果が確認出来て励みになる。



結局リュウ達が仙人界で修行を終えて元の世界に戻ってきたのは

予定より遅く辺りが暗くなっている時間だった。

軽く十時間以上は仙人界に居たことになるので百年以上の間修練を続けていたこととなる。


『みんな、修練に付き合ってくれてありがとう。俺からはもう何も教えることはない。あとは自身で鍛錬を続けてくれ』


『伯爵様。こんな私を鍛えていただいてありがとうございました。なんかこの世界の記憶が消えそうなくらいでしたが皆さんとお話出来たので何とか繋ぎ留めていられました。それにしても懐かしい風景ですね』


『私もリュウ様と共に長き時間を過ごせて幸せでした。そして私にも神のお力の片鱗を授けていただいたことに感謝しております。是非ともこの頂いた力でお役に立ちたいと思います』


『マスター、シャバの空気は美味しいですね』


クラリスはリュウの記憶から元居た世界の映画や小説でこのセリフがよく使われていたいので戻ってきたら使ってみようと思っていたのだ。


『おいおい、そんなセリフよく知ってたなあ。にしても益々人間みたいだぞ、クラリス』


そういうクラリスはリュウの右腕にしっかりしがみついている。

一方の左腕にはカーラが負けじと同様にしがみついており、残るエレノアは背後からリュウに抱き着いていた。

この光景は他人から見れば”リア充爆ぜろ!”と言われそうなハーレム状態だ。


百年以上も一緒に居たのだ。この四人は以心伝心。遠慮も当然なくリュウを溺愛し行動に直結させている。そこまでの道のりでは数々のドラマがあったのだがこの四人以外にそれを知る者はいなかった。


『もうすっかり遅くなってしまったな。俺はカーラを家まで送っていく。エレノアは悪いが先に家に帰っていてくれないか?』


『はい、リュウ様、承知しました。お家に帰るのもすごく久しぶりですね』


クラリスはとりあえず無形化してリュウと行動を共にすることにした。


カーラの家はローグの貴族で子爵だ。ローグの貴族街の外れに位置している。リュウは自家用ホバーにカーラを乗せ、カーラの自宅まで送り届けた。


今日一日カーラを修練のために借りることはカーラの実家には連絡してあるため帰りが遅くなったとしても心配はしていない。

むしろカーラの家はリュウと繋がりが持てたことに喜んでいた。

父親などは娘のカーラにでかしたと褒め称えていた程だ。

この国の貴族にとってリュウと関りを持つということは未来を約束された様なものだったからだ。

恐らくカーラの実家もいずれはカーラを側室にと思っていることだろう。


リュウはカーラを家に送り届けると両親に軽く挨拶をして引き上げた。

両親は娘のカーラの見た目は変わらないのだが落ち着きというか雰囲気が大人になっていることに驚きを感じた。

精神年齢は既に両親の倍以上になっているのだから当然と言えば当然だろう。


帰り際に振り返るるとカーラがいつまでも手を振っていたのが印象的だった。

百年も三人の女性と一緒に過ごすということはそれなりの出来事が起こるものだ。カーラもリュウの事が好きになり過ぎてそれが重荷になって修行にも影響が出ていた時があり、エレノアからリュウにカーラの気持ちに応えて欲しいと懇願されてしまったのだ。

リュウはこの現象を”好き好き病”と勝手に呼んでいるがカーラの次にはクラリスにも感染している。

前回、隊長クラスを仙人界で修行させた時もソフィアやユリンがこの病気に感染したことを思い出した。その結果一気に側室を増やすこととなったのだ。


修行を円満にこなすには三人と関係をもち仲良く過ごすというのが一番だった。だがリュウは約束を強いた。関係をもつのは修行の間だけで元の世界に戻ったら今まで通りに接する事と関係を持つことをこの四人だけの秘密とし決して他に漏らさない事を。

カーラは快諾して充実した修行の期間を過ごせたのだが、果たして戻って来て元の状態に戻れるのか?

いつまでも必死にリュウに向かって手を振るカーラを見てリュウは不安にならざるを得なかった。


そしてリュウは久しぶりに我が家に帰ってきた。皆の顔を最後に見たのは百年以上も前だ。懐かしいというレベルではない。


『ただいまー』


『あ、リュウ。お帰り~』


珍しく直前に帰宅したユリンと玄関で顔を合わせた。


『ちょっと!その子誰なのよ!?』


ユリンに言われて気付くと腕にしがみついているクラリスがそこに居た。


ユリンの声に気付きクリスやソフィア達がぞくぞくと玄関にやってきた。皆にはクラリスの実体化はまだ説明していなかったのだ。


白い目で見られながら必死に説明するリュウにエレノアが援護射撃を行うのだが久しぶりの再会の感動を味わう事もなくリュウは女難の相が色濃くなっている事に気付いていなかった。


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