132 仙人界
翌朝、リュウはカーラとエレノアを仙人界へと転送させた。
今日は朝から夕方までの約10時間を修行の時間とさせる予定だ。この世界の10時間は仙人界の100年に相当する。
リュウから昨日説明を受けていたカーラだったが、まだ自分が何故選ばれたのか疑問だった反面、自分が役に立てる事が嬉しかった。
エレノアは前回の隊長達と共に修行に参加しており、その際に超回復術や小規模の万物創成を習得していたので修行の大変さも判っていたが、それ以上の得るものの多さも理解していた。
仙人界では仙人長の龍王と白翁仙人が待っていた。
『リュウよ、久しぶりだな。お主の活躍はこの仙界から見ておったぞ。見事各種族をまとめる事が出来たようだな。よくぞやってくれた』
『ほっほっほ、ほれ、儂の言うた通りじゃったじゃろう。こやつは必ずやりおると』
『龍王仙人長、白翁仙人様、ご無沙汰しております。お変わりなくなによりです』
『今回もまた人間の修行だな?この世界好きに使うがよい。にしても、お主の周りにはいつも美人が蔓延っておるな?』
『ほっほっほ、爺も羨ましいぞ。ちと分けてくれんかのう』
『場所を使わせていただく事有難く存じます。別に女性ばかりを囲っている訳ではありませんよ。男性でも見込みがあれば連れて来ますので。ですが、この世界では女性の方が優秀な人材の割合が多いのは事実かと思います』
『うむ、確かにそうだな。この仙人界でも儂と白翁以外は皆女性だからな。今はおらぬがもう一人の男はお前の知る宿敵だ』
『龍王様、白翁様、ご無沙汰しております。前回お世話になったエレノアでございます。この度もご迷惑をお掛けしますがよろしくお願い致します』
『おお、お主だったか。前回数多く居た者の中で唯一聖なる素質を持った者が其方だったな』
『オーグを倒すにはこちらも聖属性を持つ者を立てる必要がありますが、まだ私とエレノアの二人しかその属性を持つ者が居ません。ここにいるカーラはまだ原石ですがその素質を持つ者です。ここでの修行でその才能を開花させたいと考えております』
『オーグの奴リュウに尽く阻止させれて復活が困難になっておる。それ故に焦って何をするか判らん状態にあるとも言えん。最悪自らもろともこの世界を消滅させないとも限らんからな』
『はい、そうならない為にも二人にも力をつけさせていただきます。
あと、一つご相談があるのですが』
『うむ、其方からの相談とは珍しいな?してその相談とは何だ?』
『私が魔族の女性に殺されかけたのはご存知のことかと思いますが、その際に私を助けるために支援装置であるはずの存在が実体化した件についてです』
『おお、あれは流石の儂らもどうしたものかと焦ったぞ。クラリスとか言ったな。あの場にはあの者しか居らんかったので神の力で実体化させて急場を凌いだのだ』
『やはり神のお力でしたか。それ以外考えられません。そのお陰で一命を取り留めましたので感謝いたします。
それなら話も早いのですが、このクラリスもここで修行をさせてもらいます』
エレノアとカーラは神とリュウとのやりとりの中でリュウが魔族に殺されかけた事を知ってショックだった。表面上は波風立たさず事を進めていると思っていたが陰ではリュウが死ぬ思いをして矢面に立っていることを知ったからだ。
二人がショップを受けている時に更なる驚きが追加された。目の前に見たこともない黒髪の美女が立っていたのだ。
『皆さまどうも初めまして、クラリスと申します。マスターの頭脳であり盾となる存在です。よろしくお願いします』
『クラリスは修行とかでの成長代とかはどれくらいありそうだ?』
『はいマスター。可能性は無限大です。マスターの想像力の範囲だけ強くなれます』
相変わらずの規格外な存在だ。でもこの規格外がオーグとの戦いでは切り札になることは確実だ。
『ほっほっほ、またしても女子が増えおったわい。儂もここにいるのが楽しくなるのう』
『白翁仙人様、くれぐれも手は出さないでくださいね』
リュウはエロ仙人が下手な事をして返り討ちにされる事を心配していた。
リュウ達は挨拶を切り上げて修行の場へと移動した。
仙人界とは元々人間の入れる場所ではない。修行となる場所は仙人界の入り口付近の特定の場所となる。とはいえ、空間自体は仙人界と同じなので効果としては変わることはない。しかも養仙桃も入り口付近にもあるので問題なく修行を続けることが出来る。
修行を行うにあたって、最初のうちはカーラの基礎鍛錬に時間を費やすこととなる。これから大きな術を使っていくには魔力や胆力を扱う量を増やさなければならない。大魔法を一発撃って終わりでは勝てる戦いも勝てなくなってしまうのだ。
カーラには半年間気を練る練習をひたすら行わせた。体内に気を練りそれを対外に放出させる。それを反復して行うことで気が付かないくらいに少しずつその扱う容量が増えていくのだ。毎日養仙桃を食べての修行なので身体的にも魔法を扱いやすい体に変化させていっている。 エレノアやクラリスもこの練習に付き合っている。
彼女達も十分な量を扱う事が出来るのだが上限というものはないので更に容量を上乗せしておくのは好ましかった。
修行場に隣接して宿舎もリュウが用意している。ワンルームタイプだが一人一部屋でシャワー付きの至れり尽くせりだった。
毎日の修行は結構きついものがあったのだが、皆修行が終わった後の歓談でリュウを交えて会話が出来るのが楽しみだった。