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武龍伝  作者: とみぃG
122/222

121 魔城崩壊の後

日が変わろうとしていた頃、リュウは魔都バレスの隠れ家に飛んだ。深夜なのですでにここに居るムーアとクリフは普段なら就寝の時間となっているのだが今日はリュウが戻って来る事を聞いていたので二人とも寝ずに待っていてくれた。


『伯爵様、お帰りなさい。無事で何よりです』


『タイラ伯爵、作戦のご成功おめでとうございます』


ムーアとクリフはリュウの姿を見ると間髪入れずに挨拶をしてきた。

こういった反応速度は日毎に早くなっていっているのは気のせいだろうか。或いは空間転移される兆候と呼べる何かがあるのかも知れない。


『ムーア、クリフ、よくやってくれた。作戦は問題なく完遂することが出来た。その中で二人の活躍が大きかった事感謝している』


『いえいえ、タイラ伯爵。一番の立役者はやはりタイラ伯爵ですよ。我々はそこにほんの少しお力を貸しただけに過ぎません』


『ふふふ、クリフさん。ここは素直に伯爵様の言葉を受けておきましょう。でも本当によかったですね』


『ああ、でも最後の仕上げが一番大きいからな。それで魔族の疎開計画の状況はどの様になっている』


『その前にお伝えしたいことがございます。こちらの協力者からの情報なのですが、大変重要な事項が報告されています。


伯爵様の行った爆破による魔族の被害は武闘派の9割が爆発に巻き込まれて死んでおります。なぜこの様な大被害になったと申しますと、この日のあの時間に城内で侵攻作戦の決起集会が行われていた様です。その為多くの武闘派が終結しており一網打尽にできたと言う訳です。


更に、その爆発による被害は人員だけでなく例の異世界人が開発した新兵器の工場も崩壊したそうです』


リュウは報告を聞いていくつかの疑問が浮かんだ。


『あの時城に皆が集まっていたんだよな?それじゃ、オーグや幹部連中はどうなったんだ?』


『はい、あの爆発の時に城内に居た事は確認しております。ですが、爆発の際に結界を施したらしくオーグとガズル、異世界人の三名は無事との事でした』


『そうか・・・やっぱりこの程度や死んでくれないよな・・・それにしても予想以上の効果があったんだな。知らなかったとは言えすごい事になっていたんだな』


『まったくですよ。それで異世界人の話には続きがあります。

新兵器の工場という話をしましたがここで造られるのはどうやら機械兵器などでなく生物兵器だったみたいです。兵士が量産出来るとかで詳しくはわかりませんが来週に十万の軍勢を用意して出兵させるつもりだったみたいです』


『十万だと!?』


リュウは少し考え込んだ。魔族の中の武闘派はそれ程数は多くないのに十万の軍勢ということは、その多くが新造の生物兵器を投入するということだ。キメラとかは元となる生物が必要なので数は多く出来ないだろう。リュウはその方法を元の世界を結び付けて考えた。


『あのう、伯爵様?』


『ああ、悪い。十万の軍勢を急造で用意出来るカラクリを考えていてな』


『何か心当たりがお有りなのでしょうか?』


『無いわけではない。だが、この世界で果たして出来るものなのかが疑問なんだ。ムーアやクリフは生物学に詳しいか?』


『わたくしはサキュバスですから生物学というよりも専門は心理学になります』


『私は任務の都合上毒の扱いや人体への効果を知る必要があるのである程度の生物学の知識は心得ております』


『そうか、ならクリフはすぐに理解してくらるからいいとしてムーアにも判る様に説明しないといけないな。


生物の構成は細胞で出来ている。この細胞の中には遺伝子というものが存在するんだ。この遺伝子にはどういう生物で性別や性格、能力までもが情報として刻まれていると言われている。

通常哺乳類の場合は母体の体内で育てられるんだが、生物として考えた場合必ずしも母体が必要とはならないんだ。

先程の遺伝子を操作して特殊な条件で培養を行うことで実験装置の中で生物が育っていくんだ。これを元の世界ではクローン技術と呼んでいて、もともとは怪我や病気の人の欠損部を複製して治療するという用途で開発されたんだが、その応用で部位だけでなく本体への実験も繰り返されたんだ。

これは生命の尊厳にも関わることなので世界中で禁止されていたんだがまさか神楽元がクローン技術にまで関わっていたとは驚きだ』


『何だか伯爵様の居られた世界は我々の想像のつかない様な高度な文明があったのですね』


『そうだな。でも高度な文明があるからといって幸せとは限らないんだよな。環境破壊とか資源の枯渇とか様々な問題もつきまとうし。


俺の居た世界では並行世界がいくつかあるんだけど、並行世界では進み方を間違えて生物が根絶してしまった世界もいくつかあるくらいなんだ』


『そうなのですね。便利なのも善し悪しということですね』


『そうだな。で、神楽元の工場が破壊されたという事はそのプロジェクト自体が頓挫したと考えていいな。

オーグの軍勢も壊滅に近いから次の出兵なんて考えている余裕はないだろうな。しばらく平穏な日々が続きそうだ。

その為にも明日からの疎開計画は速やかに行い成功させないといけないな』


『はい、あと少しですね。出来る限りの協力はさせてもらいます。今日はお疲れでしょうから寝室でお休み下さい。用意は出来ていますので』


『ああ、そうさせてもらう。二人ともおやすみ』


リュウはそう告げると寝室へと向かった。



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