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武龍伝  作者: とみぃG
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119 魔城爆破

時間が戻ると何事も無かったかの様に周りは変わらず行動していたが、ギムドとナタルは時間が戻ったことに焦った。止まっていた時間は数分間だったがその時間が刹那とも言える一瞬の時間だったのだろう、誰もその事に気付くことはなかった。


そしてリュウの言葉通りに皆の首から首輪が消え去った。それを確認する間もなくその場から転送された。


二千もの兵士が忽然と姿を消したので指導官は驚き状況を確認しようとしたその時、遥か遠くに見える魔城の方から大きな爆発音が響き渡った。爆発は連続して繰り返され大きな地響きとなった。


首輪は異空間に転送された時点で起爆装置が作動するのだが、実際には起爆装置が作動して起爆信号が命令を出し起爆作動という手順を経るのに数秒の時間を要する。

その数秒の時間を利用してリュウは空間転移をさせた場所から更に空間転移をさせるという二段階転移を試みたのだ。

それぞれに要する時間は0.5秒ずつなので1秒あれば十分だった。


魔城はラナの家族を救出する際に訪れているので空間転移が可能な場所となっている。しかも天守は遠くからも見れる場所にあるので狙いを定めるのには苦労しなかった。


とは言え、一つ二つの爆弾を飛ばすのなら問題はないだろうが、二千もの数を同時に処理するのは流石のリュウでも不可能だった。

それが実現出来たのはクラリスの支援があったからこそだった。

クラリスは高速演算並行処理を得意としており、マーキングしておいた二千個それぞれを紐付けて実行処理を行った。魔城に再転送させる際も同じ場所に集中させずに満遍なく広がるように拡散配置させ絨毯爆撃に等しい破壊が繰り返された。


やがて魔城を支えている柱が耐えられなくなり轟音と共に塔が根本から崩れていき土煙で包まれて見えなくなった。


魔城に居た者は恐らく全滅に近いだろう。この破壊活動は突発的な事だったが、今日獣人達を転送する事、それにより魔族側の動きに不測の事態も想定されるため各所で避難が始まっていたのだ。

魔城や主要施設に居た者達を優先させて避難対象としていた。それがあったのでリュウも心置きなく魔城を爆破させることが出来たのだ。

もし、避難がされていなかったからこれ程までに思い切っては行動できなかっただろう。


武闘派は近く開始される侵攻作戦の決起集会の様な催しを城中で行っている最中だったのでタイミングが悪すぎた。

多くの者が爆破と城の瓦礫の下敷きとなって葬り去られた。





<時間は遡る事三十分前 魔城最上階 オーグ謁見の間>


『ガズルよ。次の侵攻はいつ始められる』


『今とり急いで新兵の訓練を行っております。通常なら二週間掛かるところですが、来週には出兵出来る手はずで進めております』


『そうか。それで我が軍の軍勢はどれくらいになる?』


『魔族の徴兵で一万、獣人が二千で合計一万二千となります』


『少ないな。それでは話にならんぞ。ガズル、儂はお前に次は無いと宣告したよな?その数で一体どうやって戦うつもりだ?』


前回の侵攻では五万の勢力をもってしても敗退を余儀なくされたのだが、今回はその四分の一以下の兵数だと言うのだから負け戦にが決まったも同然と思うのは当然のことだ。


だが、オーグの懸念を他所にガズルは申し訳なさそうな顔をするどころか自信ありげな顔をしていた。


『恐れながらオーグ様。総勢一万二千人は表面上の数にしか過ぎません。実際は兵が操る使い魔を十万程用意できます』


『なんと!十万もの大軍を用意できるのか!?どうやってその数を集めるというのだ?召喚魔法士の数が急に増える訳でもあるまいに』


『ククク、それは私の研究の成果ですよ、オーグ様』


神楽元がガズルの後ろから現れて自分の研究成果をアピールした。


『お前はカグラだったか。一体どういう事だ判りやすく説明してくれ』


『この世界の魔術と私の世界の科学や生物学を融合させたのですよ。私の居た世界では遺伝子から生物を創り出すクローン技術というのがありましてね。これはもはや神にも匹敵するすばらしい事なのですが、この世界では魔法を併用することで特化した能力を持たせたクローン魔人を大量生産することが可能となりました。培養を行えばそれほど資源も必要としません。


命令に忠実で自我の意思をもたないので恐怖に怯えたり造反することがありません。能力に特化させる副作用として寿命が半年から一年と短命ですが、大量生産で入れ替えを絶えず行っておけば問題にはなりません』


『おお!それはすばらしいな!で、今その兵は実用化まで至っているのか?』


『このクローン兵士を魔鬼と呼びますが、この魔鬼の試作サンプル1号が完成しました。このサンプルをテストして改良を加えたものを三日後から量産開始します。この魔城の敷地に量産化するための工場も建設していますので一日に二万の魔鬼の生産が可能です。五日もあれば十万の大軍をご用意できます』


試作サンプルの試験は実はもう済んでいた。能力としては魔族の平均よりも五割程高くなっていた。だが、サンプル試験で懸念事項がいくつかあったので敢えて実験をこれからと伝えることにしたのだ。


それと十万もの魔鬼を平時に遊ばせておく訳にはいかない。通常の兵士だと宿舎や食事など衣食住の世話も必要になってくるのだが、魔鬼の場合、戦時中以外は拠点でコールドスリープさせる事が出来る。これは軍を維持する上で画期的な事だった。軍を維持する上で兵士もタダでは動くはずもなく給料を払ったり勤務中に掛かる諸経費は全て軍が面倒をみなくてはならずこれが大軍の組織となるとかなりの金額となり国の財政をも圧迫させて貧窮している国も少なくなかった。


神楽元の説明を聞いてガズルは今度は勝てそうな気がしてきた。この技術があれば二十万、三十万といくらでも軍勢が増やせるのだ正に鬼に金棒という奴だろう。


神楽元もオーグとガズルの反応に得意げな顔をして説明を続けた。




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