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武龍伝  作者: とみぃG
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117 演習

『この計画で問題があるとすれば上手い具合に皆を誘導して集められるかだな。散り散りになっていたのでは一度に飛ばす事ができなくなるからな。できれば一度だけにした方がいい。不測の事態に備えて獣人さえいなくなれば俺が何とでも出来るからな』


『そうですね。まだ時間がありますのでその辺りについては策を練るとしましょう。ですがタイラ伯爵ならいつも通り問題なく成し遂げられることと信じております』


『おいおい、変に期待されても困るぞ。俺も完璧な案がある時なら自信を持って作戦遂行できるんだがな』


その後リュウ達三人で様々な角度で計画のシュミレーションをしてみた。安全にしかも確実に実行できるもの。リュウが思いついたのが、かつて学校の競技で使われていた棒倒しだった。二軍に分かれてお互いの棒を倒す。相手の棒を倒す攻撃チームと相手の攻撃から自分たちの棒を守る守備チームとが連携して行う競技だ。

これは二つ棒をそれ程離す必要がないため集中させるにはうってつけだった。


『伯爵様のお考えでいきましょう。これならやれそうな気がします。ですが、実際に訓練としてこれを導入させるというのはすごく難しい様な気がしますが一体どの様になさるおつもりなのでしょう?』


『なに、それ程難しいものでもないぞ?動かせる人物になればいいだけの事だよ』


ムーアは明日は別行動なので実際にリュウの作戦が見れないのが非常に残念だった。


翌日、リュウは軍の演習場へと赴いた。来たのはリュウ一人だけだ。ムーアとクリフは並行して魔族の協力者と連携して魔族たちを疎開させる準備に取り掛かりはじめている。


リュウは変化の指輪を装着してインキュバスとは別の魔族に扮して演習場へと入っていった。


『お前が指導官か?訓練の状況はどうだ?』


『こ・これはガズル様。はい、兵の訓練は順調に進んでおります。ですが、何故この様な場所に?確か魔城でオーグ様とお会いになっている筈では?』


どうやらガズルは魔城にいるらしい。これは好都合だとリュウは思った。


『儂も前回の失敗で後が無いのはお前も知ってるだろう。今度は失敗する訳にはいかぬからこうして自ら兵の仕上がりを見に来たのだ。

そういう訳で兵の実力を試させて欲しい。儂の指示するルールで頼む』


ガズルに扮したリュウは棒倒しのルールを説明し実力を示す様に指示をした。


『儂が皆に訓練の合図を送るがいいか?』


『はい、ガズル様。ガズル様からの直々のお言葉を頂ければ兵士の士気も上がります。是非ともお願い致します』


どうやら指導官はリュウの扮するガズルに対して何ら疑いを持っていない様だった。ガズルは最高司令官として君臨しているので下っ端の教育係が普段おいそれと話が出来る相手ではなかったので本物がどの様な感じかとかは余り判っていなかったのだろう。


リュウはガズルと何度か対峙しているので容姿はもとより口調や特徴なども掌握しているので余程直近の部下ではない限り違和感に気付く者はいなかっただろう。


指導官は兵士達全員を呼び集めた。ガズルは兵士たちの前に立った。

ガズルはミノータスだ。上半身が牛で下半身は人間のため通常の魔物よりも大きい存在だ。前に立つ人物が誰かは判っていなかったが、指導官の態度や目の前の人物の放つオーラから相当位の高い人物であることは想像できた。


『皆の者!よく聞け!儂は魔族軍最高司令官 魔王ガズルだ。今日は日々訓練に励む皆の実力を見せてもらいに来た。

皆に問う。戦いに必要なものは何だと思う?それは士気とパワーだ。今日の訓練ではこの二つを見せてもらう。武器は必要ない。力のぶつかり合いでその存在を示せ。諸君らの健闘を祈る』


『お前ら!ガズル様からこの様なお言葉を直接聞けることなど滅多にない名誉な事だぞ!心して取り組め!』


指導官が激と共にガズルから聞いた訓練の内容を詳細に兵士達に伝えた後に演習という名の棒倒しが開始された。


最初は演習の主旨が理解出来ていなかった兵士達だが、練習を何度かやるうちに要領を得ることが出来た。五分程の練習の後に本番へと移行した。


その姿を見ていたリュウは考えていた。ここに並んでいる獣人達は個々は魔族と比較して決して弱くはない。二千もの数が集まれば反乱なり脱走することも簡単な筈だ。なぜそれをしないのか。その辺については情報収集でも具体的には判明しなかった疑問だったのだが、リュウが実際に獣人達をその目で見て一目で理解した。


逆らわなかったのではなく逆らうことが出来なかったのだ。

獣人達の首には首輪の様なものが装着されている。首輪の中心には発信機と思われる小さな四角い装置が見える。恐らくこのエリアを出ると発信機が反応し、爆発や抑制する仕掛けが施されているのだろう。エリアから出なくても任意で爆発させたりも出来る筈だ。

この様な手の込んだ仕掛けをこの世界の魔族が作れる筈がない。これを作った人物は奴に違いない。この世界に来ても目障りな存在だ。


どうりで二千もの獣人の兵士に対して指導官を含めて魔族の数が少ないはずだ。この首輪の装置さえあれば監視の必要はない。実際に今魔族でこの場に居るのは指導官と警備の兵が二人だけだった。


果たしてどの様にこの首輪に対処するか?リュウは対応について模索した。時間は限りなく残っていない。この演習の勝負がつくまでに実行に移さなければならない。

方法としては発信機を作動させなくするか首輪を破壊するか、外すかだろう。発信機を停止させるにはは首輪は二千それぞれが固有の識別コードがあるはずなのでそれに対応せねばならず余りにも時間が掛かりすぎる。

首輪の破壊は衝撃を与えると爆発するとかの仕掛けがしてある事が予想される。首輪を強制的に外す場合も同様だ。


リュウはなかなか案が思い付かないまま兵士の訓練を見ていた。




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