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武龍伝  作者: とみぃG
116/222

115 説得

部屋の外に倒れている警備兵はそのままにしてはおけないので一旦部屋の中に引き入れた。


『それではここから脱出します。私の方へ集まって下さい』


母親と妹は何が起こるのかわからないままリュウの傍へ集まった。


空間転移で三人を連れて獣人の里の隠れ家へと転移した。


『え?ここはどこ?今までいた場所とは違うわよね?』


ラナの母親は混乱している様だ。妹も同様だったが、母親の方が自分より混乱していたので目立たなかっただけだった。


『落ち着いて下さい。ここはもう魔都バレスではありません。獣人の里に来ています。ですがまだ魔族に占領されている状態にあるので外に出ることは出来ませんがこの家の中にいる限りは安全です』


その後リュウとラナから今までの経緯を母親と妹に説明した。


『しかく驚きました。まさかラナが助けに来るとは思っていませんでしたから。タイラ伯爵・・・でしたね。何てお礼を言っていいのやら。感謝の言葉もございません』


『礼には及びませんよ。まだ全てが終わった訳ではありません。この里にいる魔族を退ける事と魔都に連行されて囚われている獣人の男性達を解放しなくてはいけません。この里の魔族を何とかしないとせっかく里に帰ったのに自宅にも戻れず自由に身動き出来ないですからね』


『伯爵さん、何か良い手はあるのでしょうか?』


『そうだな。意外とあっさりといけるかも知れないぞ。ちょっとムーアを呼んでくるから待っていてくれ』


リュウはそう告げると空間転移で消えた。


『お姉ちゃん、あの伯爵さんっていう人すごいね!魔法とか使えるんだよね?』


『そうよリサ、私も伯爵さんとその部下の人がいなかったら今頃魔族に囚われていたかも知れないもの』


『それにしても人間に助けられるとは思っても見なかったわね。とは言っても人間自体見るのも初めてですけどね』


『お母さんも初めてだったんだ?伯爵さんの部下にすごくカッコイイ人がいるの。私の事を助けてくれた人なんだけど今一緒に行動してるんだよ』


ラナはクリフと出会った時の事を思い出していた。


『お姉ちゃんなんだか顔が赤くなってるよ?どうしたの?』


『そんなわけないでしょ。ちょっと暑いだけよ』


五分程してリュウが再び戻って来た。横にはムーアも一緒だ。


『お待たせしました。彼女は魔族ですが我々の仲間です。魔族にも戦いを望まない者が居ます。その者達の中には我々に協力してくれる者が多くいます』


『はじめまして。サキュパスのムーアと申します。伯爵様に命を助けられて恩を感じている者が私を含めて多く居ます。その者達は伯爵様の命とあらば何なりと喜んで協力させてもらうことでしょう。


それで、伯爵様。一体どの様にして対処するのでしょうか?』


『今回はムーアの協力が不可欠だ。魔都バレスにいる間に例のゴーグルの性能を改良してたんだ。具体的には魔族の中で武闘派とそれ以外を見分ける機能を備えた。

武闘派ならターゲットマークは赤色、それ以外は黄色で表示される。

それでこの里に居る魔族の色を識別して武闘派以外なら説得出来る余地があるという訳だ。更に収容所に居た帰還兵だったら協力してくれる可能性も高いからな。

ムーアから話を持ち掛けて欲しいんだ。帰還兵ならお互い顔くらいは知っているかも知れないからな』


『わかりました。彼らと会って武装解除と撤退を勧めるのですね』


『ああ、出来たら魔族全員を集めて欲しい。協力してくれるなら俺から直接話もしたい』


ムーアはリュウの要請に躊躇う事もなく二つ返事で快諾した。

ゴーグルで見るとこの里の魔族は全員ターゲットマークが黄色で表示された。もともと武闘派はそれ程数が多くないので僻地での任務は下っ端の役割だったのだろう。それが幸いした訳だ。


ムーアはまず門番から声を掛けた。


『ちょっとよろしいでしょうか?』


『ん?あなたはどこかで会った様な・・・思い出した、収容所で見掛けたことがある』


『あら、あなたも収容所からの帰還だったですね。でしたら話が早いですね。タイラ伯爵の要請でここの武装を解除して欲しいのよ』


『え?伯爵様が?でもどうして?』


『あなたたち、このままだとまた以前の様に大きな戦争になるの判っているわよね?伯爵様は種族間での争いを止め和平の道を目指してらっしゃるの。今囚われている獣人も次の侵攻作戦の兵士として駆り出されてるわ。あなたなら判るでしょ?一瞬にして何万もの同胞が消し飛ばされたのを。それをまた繰り返さない様にとお考えなのです』


『俺も出来ればこんな事したくはないさ。せっかく伯爵様から救ってもらった命なんだし。でも、家族がいるんだ。逆らうを無事では済まないから仕方なく・・・』


『その心配もございませんよ。伯爵様は平和を望む全ての民に避難できる場所を用意くださっているの。あなたも知ってる収容所は前にも増して自由自治区として発展しているのよ』


『本当ですか!?それが適うならどんなにいいか』


『あなたが直接伯爵様にお尋ねするといいわ。ここに来られているから。できれば仲間の魔族達全員にも伝えてもらえると話が早いですね』


『伯爵様がここへ?よし、わかった。仲間にも説得してみてみる』


ムーアの説得は成功し魔族全員がリュウの話を聞くこととなった。


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