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武龍伝  作者: とみぃG
115/222

114 救出作戦

日中は何人かの協力者が隠れ家にやってきた。情報提供もあるが、リュウがバレスに来ていると聞いて是非挨拶したいと訪問してきた者が大半だった。とは言え、一度に押し寄せたら怪しまれるので人選を行い順番に応対することとなった。


ムーアは情報収集と協力者のとりまとめ、リュウは来訪の協力者の応対とそれぞれが忙しかったのだが、クリフとラナは特にすることもなく待機していたのだが時間を持て余している間、二人で話をして過ごす事が多くなった。


ラナはどうやら人間の生活環境に興味を持ったらしい。確かに今のローグは目まぐるしく発展しており目にする物全てに驚くに違いない。

街のレストランや洋品店、交通や建物などローグにある様々な物に驚き興味を持ったのだろう、クリフの話を食い入る様に聞いていた。

真面目なクリフはラナの顔が迫ってきてかなり焦っていた。


その光景を見ていたリュウは可笑しくて仕方がなかった。堅物のクリフも彼女には骨抜きにされているようだ。


『ラナ、人間の世界に興味があるんだな?』


『はい、伯爵さん。大きな学校とかあるなんていいなって。獣人の世界では教育は三年程度のものを行うのですが、とても学校と呼べる程のものではありません。学校だけでなく美味しい物を食べたり綺麗に着飾ったり出来るのに憧れます』


『そうか、それならローグのアカデミーに入学をするといい。南北間のトンネルが開通すれば行き来も楽になる。早ければ今期編入でいけるし、遅くとも来年度には間に合うだろう。俺が推薦状を書いておくから問題ない』


『本当ですか!?ありがとうございます!』


ラナは喜びのあまりにリュウの腕にしがみついた。リュウの腕はラナの豊満な胸で包まれ何とも言えない柔らかい感触が伝わってきた。

だが、何だか冷たい視線が突き刺さる感じがした。

視線はクリフから放たれていた。そんなクリフを見て満更ではないみたいだなとクリフとラナのカップル誕生に向けてひと肌脱ぐかとリュウは思うのだった。


実は鋭い視線はクリフ一人だけではなかった。その場にもう一人居た女性からもクリフ以上に放たれていた事をリュウは気付いていなかった。




それから二日後、必要な情報がほぼ揃ったため城への潜入を決行することとなった。暗闇に紛れての潜入なので日没を待っての行動だ。

リュウのラナの二名のみで行くのだが、人数は少ない方が成功率が上がる。

ラナはこの手のことには素人なのだが母親達の顔が判らないのと経緯説明をする際にラナ本人から伝えた方が早いため連れていくことにしたのだ。


街と城を繋ぐのは大きな一本の橋なのだが、全長が200メートルある。その橋の両側には警備兵が配備されており、詰所が設けられている。それぞれに1名ずつの配置で警備兵の交代は1時間毎に交代するとの情報を得ている。

残念ながらここのこの時間の警備兵には協力者が配置されていなかった。


警備兵が交代した直後だとまだ前の兵が周辺に居る可能性があるので交代後10分間の間を空けて突入することにした。とは言っても兵に危害を加える訳ではない。催眠ガスで眠らせている間に通過するだけだ。但し催眠ガスとはいえ非常に強力なものなので一旦眠りにつくと二時間は起きることはない。リュウとラナは誤って吸わない様にガスマスクを装着した。


まずは手前の街側の警備兵を眠らせた後に橋を渡らず空間移動で城に移動し、物陰から城側の警備兵を眠らせた。


リュウとラナは警備兵を詰所に入れて入口から城へと入った。ここへは交代時の兵が来るだけなので交代時間ギリギリまで稼げる。


入口からすぐに塔へ登る階段となっている。この塔も交代時の巡回のみなので途中に兵と出くわすこともないはずだ。

そのまま塔を登っていき、五階くらいのところにラナの母親と妹が囚われていた。部屋は流石に警備なしとはいかず、警備兵が一人入口の前に立っていた。


この警備兵も眠らせるのだが、睡眠ガスを使うと部屋の中にいる人質達にも影響があるため睡眠ガスの散布ではなくリュウが予め用意しておいた吹矢で警備兵の首筋を狙った。

見事命中すると瞬時に警備兵はその場に崩れ落ちた。

かなり強力な効力があるらしい。リュウは自分で作っておきながら誰にも試していなかったのでその効果に驚いた。

この吹矢の睡眠効果時間もガスと同様二時間くらいは持つはずだ。


睡眠や毒系の効果は対象によって変わってくる。人間よりも獣や魔物には効きにくく効果時間も短くなる。リュウは効果時間についてその辺の種族の効果差も考慮しての計算なので大きく狂うことはないだろう。


部屋のドアには中を確認するための覗き窓があるのでそこからラナが中を確認する。


『間違いありません。母と妹が中にいます』


ラナが小声でリュウに伝えた。


リュウは覗き窓から部屋の中を覗いてラナを連れて視線の先へと空間移動した。


突然部屋に二人が入ってきたので中にいた母親と妹は驚きのあまり声をあげそうになった。


『声を出さないで!お母さん、サラ。助けに来たよ』


『お姉ちゃん!!』


『やっぱりラナだったのね。でもどうやってここまで?大丈夫なの?』


『ここにいる伯爵さんに連れて来てもらったの。時間がないので詳しい話は後でするから』


『北の大陸の貴族のタイラと申します。ラナの言う通り今は時間がありません。ここから移動しますので一緒について来て下さい』


リュウは混乱する母親と妹に簡単に説明すると脱出への準備に取り掛かった。

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