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武龍伝  作者: とみぃG
111/222

110 作戦立案

魔族から人質を取り戻したとして一旦は無事となるが再び魔族が侵略してくると思われるこの問題をどう対処するか。

リュウの案について話をした。


『先ず前提として話をしておかなければいけないのは魔族が全て悪いとは言えないということだ。魔族の中にも戦いを嫌う者も多くいる。侵攻を行う者達の中にも必要に迫られて止む無く参加している者が大多数だとうことを俺は知っている。そうだろう?ムーア』


『はい、伯爵様の仰る通りです。私も以前に北の大陸侵攻作戦に加わっていました。ですが、その中の者達の多くは普段は平和に暮らしており、上からの命令に逆らう事が出来ずに止むを得ず出兵しております。

魔族の中には平和な世でなく支配欲を是とする武闘派と長年守り続けてきた和平を維持する保守派・穏健派に分かれています。

大多数が保守派・穏健派なのですが、少数派である武闘派が一番力を持っています。それは邪神オーグや魔王ガズルなどが率いる派閥であるためです。


邪神オーグは封印している力を解放させ世界を支配することを望んでおり、武闘派もこの流れに従っています』


『俺の考える打開策というか勝機はここにあると考えている。

多くの者が戦いを望まないのであれば戦いのない世界を作ればいい。それを実行するんだ』


『伯爵様、確かにそれが出来れば理想なのですが、一体どの様にして実現させるのでしょうか?』


『ムーア、お前なら知っているだろう?魔の森収容所からの帰還兵達の事を。彼らは戦いを望まない者達であり、共存することを望んでいる。今回は獣人族の救出作戦でありながら魔族の救出作戦でもあるんだ。せっかく生きて魔界に戻れてもこのままでは又再度出兵させられてしまうだろう。平和を望む人達の受け皿を作るんだ。


魔の森の収容所、ここはもう既に収容所ではない。そこに住む事を望んだ者達の意思によって運営されている自治区と呼んでもいいだろう。ここに一旦魔族の非戦闘派の人達に避難してもらおうと思う。自治区の責任者にも既に受け入れ態勢の準備に掛かってもらっている』


『流石は伯爵様です。そこまで考えて動かれていたなんて驚きました。帰還兵の多くの者達がこの作戦に協力してくれると思います』


『うん、そこでムーアには救出作戦と並行して魔族の退避作戦を帰還兵の協力者を募って指揮して欲しいんだ。俺の名前を出せば二つ返事で協力してくれるだろう』


『あのう、伯爵さん。外部の方々がこんなに動いて頂いているのに我ら獣人からの協力がなく本当に申し訳ありません。私自身もほぼ戦力にはなりませんし・・・』


ラナはリュウ達が完璧とも言える策と行動力で動いているのに対して被害の当事者である獣人からはラナ以外誰も動いていないことに恐縮した。


『それは気にしなくてもいいよ。獣人は動ける人達が囚われてしまったのだから仕方ないさ。出来る範囲でいいからクリフを助けてやってくれないか。


まあ、俺にも下心は無い訳じゃないからね。今後の種族間の交流を考えると今のうちに恩を売っておけば有利に働くという算段もあるから』


ラナが本当に申し訳なさそうな顔をしていたのでリュウはいつもよりも優し目の口調でラナを宥めた。


『種族間の交流ですか?想像がつきませんが別の大陸の人達との交流ですよね?どんな事が起こるのでしょう?』


『そうだな。まずこれを見てくれ。こういうものが産業としてあったりするんだ。その地方特有の産物が取引される様になるし、学問を学んだり働いたりする場も広がりを持たせることができるし』


リュウはラナにガラス細工や手鏡を渡した。


『わあ、これすごく綺麗ですね。こういった物が買えるのですか?いいなあ。これは鏡というやつですね。話には聞いていましたが想像していたのより鮮明に映っていて驚きました』


『それはあげるから。ここの宿代だと思ってくれていい』


『本当ですか!うれしい!』


『伯爵様、私にはございませんの?』


ムーアが自分のがないと少し拗ねている様だったので同じ物を手渡した。


『ラナ、きっとクリフがまた珍しいものをプレゼントしてくれるから楽しみにしておくといい』


『はい、楽しみにしています!』


横にいたクリフがハッとした顔をしてリュウの事を見た。目が余計な事を言わないで下さいと語っていたが、奥手なクリフの背中をリュウは押してやったのだった。


その後作戦について詳細な説明と詰めに入った。先ずは魔界の中心である魔都バレスの状況と主要施設について。その後、潜伏する為の拠点の確保が必要なのでそれをどうするかだった。


これについては帰還兵協力者の目星がついているのでその者に提供してもらうことにした。


先に城内に幽閉されていると思われるラナの家族の救出なのでこれらの作戦立案に対して意見交換を行った。


日が暮れる時間となり途中でムーアとラナが抜けて夕食の準備に入った。今夜は特製シチューらしい。獣人の里では肉が豊富なため新鮮な肉をふんだんに入れたシチューとなった。


獣人は鼻が利くので香辛料はあまり入れないみたいだったので基本少な目にしておいて各自の皿に取り分けた後で調味料を追加した。


明日は日中準備を行い日没とともに移動して夜にバレスに潜入する。


作業を早目に終えて今日は早目の就寝となった。


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