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武龍伝  作者: とみぃG
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109 人質

リュウとクリフが話をしているうちにムーアとラナは料理を作った。ラナは食材を用意するだけでなく料理もこなした。

ラナも家では母親の料理を手伝っているのだろう調理の手際もよかったのでムーアも感心していた。


ムーアは見た目二十代前半なのだが、ラナは二十歳前後という感じなのでムーアの方が少し年上に見える。獣人の歳の取り方が判らないので見た目のままなのかそうでないのかは確認してみたいと判らなかった。


『そう言えば先日はクリフが散々な目に遭ったというからどんだけ酷い環境かと思っていたのだがそうでもないんだな?』


『高温多湿なのは以前と同じですが、獣の臭いというか生臭い臭いがあまりしないのは不思議ですね。以前はあれ程気になっていたというのに』


クリフもリュウに言われるまで気が付かなかったのだが確かに以前は鼻が曲がる様な臭いが里に漂っていたはずだ。


『恐らくそれはこの里には今成人男性が殆どいないからだと思います』


ラナが料理を終えて品を運びながら原因について語った。


『どういうことなのか詳しく教えてくれないか』


『お食事が出来たので食べながらにしましょうか』


ムーアも料理を運びながらせっかく出来た料理を早く食べて欲しかったので食べながら話を聞くことを勧めた。


『最初にお会いした時に私が狩りに出かけている間に母と妹が魔族に連れて行かれたというお話をしましたが、その後にこの里の成人男性が皆連行されていったのです』


『魔族は連行した獣人の男性には訓練を経て後の襲撃作戦の駒として使う目論見がある様です』


ラナの説明にクリフが補足した。


『何人くらいが連れて行かれたんだ?』


『はい、恐らく各世帯ですので2,000人くらいだと思います。先程の話に繋がりますが、獣人の成人男性は獣臭を強く放ちます。それを先日クリフさんが嗅がれたのだと思います。今は女性や老人・子供しか里にはいないので臭いが気にならないのでしょう』


『そうだったのか。2,000人とは里にとっては大きな痛手だな。だが、兵士を訓練するにはそれなりの時間が掛かるので出兵まで時間があるからそれまでに救出をしないといけないな』


この獣人の里の人口は一万人なので二割が居なくなった訳だが、働き盛りの男がいなくなったことで生計が苦しくなる家庭も出てくるだろう。そちらのフォローもしなくてはいけなかった。


『それで伯爵様、どうやって救出するのでしょうか?』


魔界での救出作戦となるとムーアの協力が不可欠なのだが、彼女としても2,000人に及ぶ人員を救出する手段が思い浮かばず答えを求めた。


『そうだな。まず二通りの救出が必要になるだろう。ラナの母親と妹と兵士は別のところに幽閉されているだろうから二か所で行動しなくてはいけない。恐らくどちらも力技で魔族をねじ伏せて連れ去る事になるだろう。場所にさえ辿り着けたら俺の空間転移で一気にここまで飛ばす事が出来るのでそこまでが勝負だな』


『兵士の養成所の方は私が案内出来ると思います。ラナさんのご家族は恐らく城のどこかに居るのではないでしょうか。こちらは潜入がかなり難しくなっています』


『それじゃあ、城の情報については現地で入手するとしよう。それでムーア、街の見取り図を作りたいのだが、判る範囲でいいから教えてくれないか』


ムーアの記憶をもとに魔界の居住区バレスのマップを構築した。

リュウ達の向かう城についてはムーアも断片的にしか知らないため判る範囲だけマップ化させた。


『先ずはラナの家族の救出を先に行う。獣人男性達は大掛かりになるので現地での準備も含めて数日は必要だろう。

2,000人もの者達を集めれそうな場所はありそうか?』


『無難なのは訓練場でしょうね。養成所の訓練場はかなりの大きさがあるので2,000人くらいは収容できます。ですが、それだけの人数が移動して気付かれない様にするのは至難の技だと言えますよ』


『まあ、ムーアの懸念通りなんだが何も倒すだけが戦術じゃないからな。催眠ガスや食事や飲み物に睡眠薬を入れて眠らせるという手もあるぞ。多分これが一番無難なやり方だろうな。

俺の方で薬品調合して準備しておく』


一応の算段は見えて来たのだがクリフが険しい顔をしたままだった。

何か懸念があるのだろうか?


『クリフ、どうした?何か問題があるのか?』


『はい。タイラ伯爵の作戦案には異存はございません。私が気になるのは救出した後のことです。従軍の予定した者達が居なくなってすんなり引き下がるとは思えません。また魔族が里にやってくるのではないでしょうか?』


『その可能性はあるな。いや、恐らくそうなるだろう。何も策を討たなければな』


『伯爵には何か策がお有りなのでしょうか?』


『うん、ある。だがこれは賭けに近いものだ。どう転ぶかは予想できない。


と、この話は後でしよう。せっかくムーア達が料理を作ってくれたんだ。先ずは食事に専念しよう』


ムーアは作った料理が話をしながらの食事となっていたのでいささか気になっていたのだがリュウがその事に気付いてくれたのが嬉しかったようだ。


食事を済ませた後、コーヒーを飲んで一服した後、リュウは作戦の詳細について話をした。


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